(令和5年7月議会予算委員会)再造林の推進について

 近年、森林を持続可能な地域資源として捉え、地域活性化に役立てようという動きが日本各地でなされるようになりました。例えば、山形県白鷹町では「森林(もり)とつながる暮らしビジョン」を定め、森林の保全や木材利用、森林学習と川上から川下まで総合的に森林・林業・木材産業の活性化を図っています。本市も、民有林の人工林の面積は1万ha以上あり、また八甲田や青森ヒバの森など観光資源ともなり得る天然林も有することから、森林資源を活かした地域の活性化が可能と考えます。今回は、人工林の循環利用に焦点を当てて質疑したいと思います。
 木材利用による地域産業を活性化をするにあたっては、伐採後に再び木を植える「再造林」を行なう必要があります。再造林をしなければ、木材として高度利用可能な森林が育つことはなく、持続的な産業とはなり得ないからです。しかし、本県における再造林率は30%程度と低迷しております。そこでお伺いします。本市におけるR4年度の伐採面積及び人工植栽による更新面積をお示しください。

(農林水産部長答弁)
・令和4年度における民有林の伐採面積は約91ヘクタール
・人工植栽は、約2.2ha

再質疑1:非常に再造林率が低迷している状況だと考えます。再造林の推進に対する事業として、宮崎県都城市では市内の伐採箇所所有者81名に再造林を促すチラシを配布しています。森林の伐採を行う際には、森林所有者の住所などを記して伐採届が提出されることとなっていますので、チラシを送付することは可能だと考えます。更新方法は、伐採届に記載することになっておりますが、伐採届けの提出から伐採までは最短でも30日ということになっていますから、人工植栽したほうが良いと考えられる箇所で人工植栽をしていない場合に、その変更を促す意味はあると考えます。
 再造林率の低迷をはじめとする森林の手入れが行き届かない問題の解決策として、森林経営管理制度を活用して、所有者が細かく別れている森林を市でまとめる、いわゆる集約化に取り組むことが挙げられます。また、ただ集約化するだけでなく、その後適切な管理経営策をとることが、森林の手入れ不足への対応にあたっては重要と考えます。
 昨年12月の市議会で、経営管理制度の取り組みについての質問に対し、集約後の取り扱いについて「集約されても森林経営に十分な規模が確保できないこと、また、搬出するための林道が周辺になく、あるいは狭小であるなどのため、林業経営に適した森林として、再委託することができないことから、市が自ら経営管理を行っているところ」としておりました。そこでお伺い致します。市で行う経営管理の内容をお示しください。

(農林水産部長答弁)
・森林経営管理事業による経営管理権集積計画に基づく市の管理する森林の面積について、市全体、青森地区及び浪岡地区別で説明
・市で行う森林経営管理として、枝打ち及び保育間伐等を実施。

再質疑2:結局のところ、森林所有者個々の状況がさまざまなため、経営管理制度では実際に森林を経営管理するための集約化がままならない(※青森地区で集積計画が樹立された森林は、1計画地の面積が全て1ha以下。浪岡地区でも最大2.7haと、経営の効率化ができる「集約化」とはなっていない)というのが青森市における現状と考えます。よって、経営管理制度による森林の整備には限界があるとも考えられます。令和元年度から始まった森林環境譲与税は、森林経営管理制度に使わなければならないという向きがあります。しかし実際のところは都道府県や市町村によっては、森林環境譲与税を、経営管理制度の推進以外の施策に活用し、成果が出ているところもあります。林野庁も、森林環境譲与税は必ずしも経営管理制度の推進を目的とするものではない旨を示しているところです。
 森林を伐採した後再び木を植えることができるようにし、森林資源の循環利用を確保するためには、林業の採算性向上が必要です。そのためには、地域内で地域産木材を使用する需要を創出することが有効な手段の一つです。
 まず公共施設の木造・木質化が挙げられます。木造での公共施設整備については、本定例会一般質問初日に、舘山議員からも「常設化するねぶた小屋を木造で」という要望もあったところです。さて、今後青森市で整備が予定される公共建築物の筆頭として、県と青森市の共同経営・統合新病院整備が挙げられます。病院への木材利用については、日本建築学会に発表された医療施設の木造・木質化の効果に関する研究でも、木造・木質化をする前と比べ、来院者が「あたたかみがある」「リラックスできる」と感次ていることが示されております。木造でなくても、木質化であっても、事業費の1/2以内かつ建築工事費の3.75%を上限に、林野庁の補助金の対象にもなることから、統合新病院における地域産木材の利用を積極的に検討すべきと思いますが、市の考えをお示しください。

(病院事務局長答弁)
・今後具体的な統合新病院の設計内容を示した要求水準書の策定において検討する旨の答弁あり

再質疑3:もちろん、公共施設整備にあたって地域産木材を利用する場合は、森林環境譲与税の利用も可能です。地域産木材の利用が統合新病院の整備において実際に行われるよう、今後検討が進められる統合新病院の施設の詳細な設計の中に、ぜひ具体的に、木材の使用箇所などを、例えば「エントランスホールの壁材として地域産木材を使用すること」のように盛り込んでいただくよう要望致します。
 青森市民病院は、令和2年3月より、夜勤看護師の不足により1病棟を休棟しており、医療従事者の確保が統合新病院でも大きな課題となるのは間違いありません。先ほど紹介した研究によると、医療施設の木質化は、患者だけでなく医療従事者をはじめとするスタッフが「休憩時間にリラックスして過ごせるようになった」などの効果があります。つまり、木造・木質化による魅力のある職場環境作りは、医療従事者の確保にもつながる可能性があります。
 さて、本格的に地域産木材の利用を進めていくとなると、まとまった量の木材を計画的に供給することが必要です。民有林ですと、その伐採はその時々で個々の所有者が決めることであって、なかなか計画的な伐採が難しいのが現状です。そこで他市町村では、市有林など、市が権利を有する森林を計画的に伐採・再造林して木材を供給する例もあります。こうした取り組みで地域産木材の流通ルートの開拓などを図り、民有林へも波及させていくわけです。そこでまずお伺い致します。本市における、市有林、イチユウリンですね、この状況についてお示しください。

(農林水産部長答弁)
・内真部・前田市有林、鶴ヶ坂市有林、前岳市有林、合子沢市有林、浅虫市有林があり、合計面積710ha
・計画では、R4~R13までで、主に間伐を中心に約240ヘクタールを施業
・主伐期を迎えているものは、木材価格や生育状況を踏まえ、現場確認の上、計画
的に伐採

再質疑4:もう一つ、市が森林に関して権利を有しているものとして、分収造林があります。青森市における分収造林は、青森市が財産区と契約を行い、財産区の所有する土地に青森市が木を植えて一定期間育て、そして最終的には分収木を販売して伐採し、その収益、つまり販売代金を青森市と財産区とで予め契約した一定の割合で分収する制度です。この分収造林も、今後の市の大切な財産ですから、今後の取り扱いを考えていかなくてはなりません。そこでお伺い致します。立木について市が財産区と契約している分収造林の状況についてお示しください。

(農林水産部長答弁)
・現在、5者(深沢第一財産区、八重菊第一財産区、八重菊第二財産区、新城財産区、浪岡財産
区)の財産区との間で分収造林契約を締結
・樹種は、主にスギ、カラマツ、アカマツ等で、林齢が46~75年生
・主伐時期は、契約により定めているのが1者、協議で決定するものが4者
・主伐期を迎えている樹木は、財産区の意向を確認しながら計画的に伐採

要望:
民有林においては地域の自然資源という意味で、市有林(イチユウリン)や市が財産区と契約している分収造林に関しては、市が権利を有する財産として、利活用していかなくてはいけません。市有林や分収造林では、市が公費を投じて森林を造成しているわけですから、可能な箇所に関しては積極的に伐採・再造林を実施すべきと考えます。再造林費用に関しても現在は2/3以上が補助金によって充当される状況です。
 木を植えてから5年目までにかかる費用は1ヘクタールあたり約180万円とされています。2/3が補助金で充当されるとすると、実際の持ち出しは60万円であり、例えば、1haあたり100万円で立木が売れた場合は40万円が手元に残ることになります。
 市有林や分収造林の伐採・再造林の推進は、本市の林業政策上の課題である再造林を推進しながら、同時に歳入を生む可能性もあります。
 しかし、この一種の財産運用をうまく行うためには、森林の場所や生育の状況、木材市況や林業事業体の管理などの専門知識や経験を有する人材が絶対に必要です。
 市町村における専門人材の確保の支援として、地域林政アドバイザー制度というのがございます。地域林政アドバイザーとは、森林・林業に関する一定の専門資格を有する個人または、有資格者が在籍する法人に対して、施策の企画立案などの業務を委嘱することができる制度です。市町村が地域林政アドバイザーの雇用や委託に要した経費については、1人あたり500万円を上限として7割が特別交付税措置の対象となります。また、この特別交付税措置を受けた残額を、つまり市町村負担分ですね、森林環境譲与税を財源として充当することもできるものと考えられます。
 地域資源の活用による地域活性化、そして副産物として市への歳入繰入までを見据えて、人材確保の制度を活用などにより森林林業政策を推進していくことを要望して、この項を終わります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?