(令和5年9月議会決算委員会)基金残高について


(要旨)令和4年度の青森市の決算については、地元紙で「青森市 黒字51億円」とする見出しで報道されました。見出しの51億円は実質収支額のことで、市民の中には「青森市には使えるお金がまだまだたくさんある」と受け止めた方もいらっしゃったようです。実質収支額は、家計でいえば、年度末に財布の中に残っている金額のようなものです。よって、借金や預貯金の状態までは示しておらず、実質収支額が多いから財政に余裕があるとは言えないものと考えます。この実質収支額に関しては一般質問でも質問があったところです。
 例えば少子化対策などの社会課題への対応にどこまでどのような予算を使うべきか?といったことを検討する際には、市民全体での議論が必要と考えます。そうした実のある議論のためには、青森市の財政状況に関して市民が正確に理解している必要があるのではないでしょうか。そこで、まずお伺いします。令和4年度決算の実質収支額51億円の内訳をお示しください。

(企画部長答弁要旨)
実質収支額とは、歳入総額と歳出総額の差引額から翌年度に繰り越すべき財源を差し引いたものであり、令和4年度の実質収支額は、昨年度と比較して2億8千8百万円増の51億6千万円となったものである。
 実質収支が多額となった主な要因としては、歳入では、
 〇過去最大級の除排雪経費に対する国からの支援などとして、臨時道路除雪費補助金や特別交付税が予算を約30億4千万円上回ったこと
 〇国、県及び本市の経済対策によって経済の落ち込みが抑えられ、市税及び地方消費税交付金が予算を約6億7千万円上回ったこと
などが挙げられる。
 一方、歳出では、
 〇1月までは過去最高の除排雪経費を要した令和3年度と同等の降雪量だったことを踏まえ、2月以降も同規模程度の経費を要するものと見積もった上で増額補正を行った除排雪経費について、2月から3月にかけての降雪量が想定よりも少なかったことなどによって約3億6千7百万円の執行残が生じたこと
などが挙げられる。
また、この51億6千万円の中には、扶助費などの財源である国・県支出金について、国及び県の制度により令和4年度の支出見込額に応じて概算交付されたものが支出額確定に伴い、令和5年度予算で国及び県に償還金として返還する分として、約7億8千6百万円が含まれている。
 実質収支額については、地方自治法、地方財政法及び青森市財政調整積立金条例の規定により、その2分の1を下らない額を青森市財政調整積立金に積み立てることとしており、令和4年度実質収支額51億6千万円のうち、26億円を財政調整積立金に積み立てたところである。

(再質疑1)令和4年度実質収支額51億6千万円のうち、26億円を財政調整積立金に積み立てると残りは25億円強、これは次の年度に歳入として引き継がれることとなるわけですが、そのうち7億8千6百万円は国に返さなければならないということで、これも差し引くと残りは約17億円ということになります。
 年度末に財布に残っているお金のうち約半分を貯金して、次の年度に使うお金に繰越す、と言うイメージで実質収支額は処理されているということになります。この財布は毎年度引き続いて使っているので、実質収支額には前年度の実質収支額が含まれていることになります。よって、1年度の間に51億円お金が貯まったわけではないことに留意する必要があると考えます。また、借金をしたり貯金を取り崩して財布にお金を入れれば、実質収支額は増加しますので、実質収支額が大きいから市にお金があるともいえないと考えます。
 次に、青森市の貯金にあたる基金残高の状況についてお伺いします。令和4年度末の財源調整のための基金残高の状況についてお示しください。

(企画部長答弁)
本市では、持続可能な財政運営のための指針として、令和元年10月に、令和元年度から令和5年度までの5年間を計画期間とした「青森市財政プラン(2019~2023)」を策定しており、このプランでは、中期的な財政収支の見通しとなる中期財政計画を位置付けている。
また、このプランは、国における制度改正や各年度の決算や予算編成状況等を踏まえ、毎年度、ローリング(時点修正)を行うこととしており、直近では、昨年10月にローリングを行っている。
 このプランでは、目標の一つとして財源調整のための基金残高(青森市財政調整積立金、青森市市債管理基金)に係る目標を掲げている。
 当該プランにおける令和4年度末の財源調整のための基金残高見込は54億2千5百万円としていたが、令和4年度決算後の基金残高実績値は58億4千3百万円と、見込みを4億1千8百万円上回ったものである。

(再質疑2)財政調整基金は令和2年度末は41億円、令和3年度末時点では約49億円でしたので、順調に増えていると言えると考えます。基金は、年度末に積み立て、翌年度中は基金を取り崩しながら事業を行い、また年度末に積み立てる、というサイクルを繰り返しています。
 よって、一般家庭で言うとボーナスが出たら貯金しておいて、次のボーナスが支給されるまでは貯金を取り崩して大型の出費に対応して、またボーナスが来ると貯金しておく、と言うようなイメージで使われている状況と承知しています。家庭でも不測の出費や高額のものが必要になったときに備えて貯金をすることは大事です。ただ貯金をするのは、使うべき時に有効に使えるようにするためとも言えます。今の青森市には多くの課題がありますので、使えるお金があるなら使うべきとも考えます。そこで、今後、基金を増やしていくのか横ばいでいいのか、と言う方向性を確認したいと考えます。伺います。財源調整のための基金残高積立に対する考え方と今後の目標をお示しください。

(企画部長答弁)
青森市財政プランでは、目標の一つとして財源調整のための基金残高(青森市財政調整積立金、青森市市債管理基金)に係る目標を掲げている。財源調整のための基金については、国・県及び本市の経済対策により経済の落ち込みが抑えられ、市税等の収入が堅調であったことや、除排雪費用に対する国からの財政支援等により、令和4年度末で50億円を確保したところ。
しかしながら、令和3年度の除排雪費用に約59億円を要したことなどを踏まえ、引き続き行財政改革に取り組み、令和8年度末の基金残高については60億円を確保することを目標としたもの。

(再質疑3)今後は過去最大だった令和3年度の除雪費を目安に、基金残高は60億円を目標とするとのご答弁でした。では、なぜ除排雪経費を基準に財政調整基金を積み立てるのか、その理由をお示しください。

(企画部長答弁)
財源調整のための基金は、地方公共団体の年度間の不均衡を調整するための基金であり、経済の不況等による大幅な税収減や、災害の発生等による想定外の支出など、予期しない収入減や不測の支出増等に備え、長期的視野に立った計画的な財政運営を行うために積み立てるものとされている。
中核市62市の令和3年度決算時点における財源調整のための基金残高平均は約132億円となっている。
 除排雪経費は、降雪量の多寡により費用が大幅に変動する性格のものでありながらも、本市の冬期間の市民の安全や道路交通を確保するために必ず予算措置しなければならない性質のものである。
また、その経費の一部に特別交付税や国の補助金等が交付されるものの、その交付額はあらかじめ見込むことができない。これらのことから、こうした不測の事態に備える観点で、基金残高の目標の目安を除排雪経費としたところである。

(要望)特別交付金は金額の確定が3月以降になるため、基金を除排雪経費と同等確保しておかないと、先に除排雪事業を進めることができないという青森市特有の事情があると。そのために除排雪経費を基準に財政調整基金積立ているということだと理解しました。他市では、一律に標準財政規模の10%と定めているところもありますが、地域の実情に合わせて必要な金額を積み立てることは合理的と考えます。
 令和3年度4年度と積立が進み、決して他の中核市と比較すると多くはありませんが、財政という意味では持続性が高くなったのではと考えます。ただ、青森市自体を見ると、この2年間の人口減少率は全国トップクラスです。もちろん精査は必要ですが使う時には使わないと財政の前に街自体の持続性が損なわれる可能性があると、強く危惧しております。今後も地域の実情に合わせた基金残高を確保しながら、人口減少など喫緊の課題克服のためには投資をしていく、という財政運営を要望してこの項を終わります。

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