(令和5年9月議会決算委員会)上下水道事業決算について

(要旨)上下水道事業の決算について質問します。人口減少は公共インフラの維持という点でも大きな困難をもたらします。水がなくては人は生きていけませんので、水道・下水道は、最も重要なインフラと言っても過言ではありません。しかし、水道・下水道料金の値上げ実施や検討が全国で相次いでいます。
 青森県内でも、今年8月に、弘前市は上下水道料金を令和7年度、令和10年度、令和13年度の3回に分けて、標準的な家庭で水道料金・下水道使用料合わせて千円程度の値上げを実施する、とした内容を弘前市上下水道事業経営審議会に諮問しました。3回の合計で現在の料金と比較して40%以上、年間にすると約3万5000円程度の値上げとなり、弘前市民の生活への影響は必至です。
 値上げの理由について弘前市は、人口減に伴う料金収入の減少と老朽施設の改修費用増加で財務状況が悪化していることとしています。
 9月の弘前市議会一般質問では、弘前市水道事業・下水道事業における財務状況について、地方公営企業の貯金にあたる内部留保資金に着目した答弁がなされました。弘前市の答弁によると、令和7年度末の内部留保資金は残高は、水道事業では約11億1千万円まで減少し、下水道事業においては約4億6千万円不足することが見込まれる、とのことでした。
 人口減に伴う料金収入の減少と老朽施設の改修費用増加という事情は、青森市でも同様と考えます。そこで、お伺いします。まず、水道事業会計について、内部留保資金の推移と今後の見通しをお示しください。

(水道部長答弁)
 内部留保資金とは、減価償却費などの現金支出を伴わない経費や毎年度生じる利益など企業内部に留保された資金であり、資本的収入が資本的支出に不足する額の補てんに使用できるものである。
 平成31年に策定した「青森市水道経営プラン」における内部留保資金の目標値として、「料金収入の3か月分以上」、すなわち毎年度約12億円以上と設定し、その計画値についても令和元年度末では約48億5,200万円、それ以降は毎年度建設改良費等の補てん財源として活用しながら、計画最終年度である令和10年度末では約17億4,500万円と見込んでいたもの。
 お尋ねの水道事業会計における内部留保資金のこれまでの推移について、本経営プランの計画期間内で申し上げると、
令和元年度末では、約64億5,000万円、
令和2年度末では、約54億4,700万円、
令和3年度末では、約39億7,000万円、
令和4年度末では、約41億4,700万円となっている。
 また、今後の見通しについては、配水管や施設・設備の更新等に計画的に投資するための補てん財源として活用していくこととしていることから、計画最終年度の令和10年度末における内部留保資金残高の見込み額は、令和4年度決算を踏まえると16億7,200万円となっており、先ほど申し上げた本プランの計画額17億4,500万円と大きな乖離は生じず、また、内部留保資金残高の目標値である約12億円以上を確保できる見通しとなっている。

(再質疑1)今決算で約40億円あったものが、施設更新などをする必要があるため、R10年度に約16.7億円となる、ということでした。内部留保資金の残高減少という点では弘前市と共通しており、今後も厳しい事業運営になる、と考えます。
 次に、同様に下水道事業会計における内部留保資金の推移と今後の見通しをお示しください。

(水道部長答弁)
下水道事業会計においては、令和2年度に地方公営企業法の財務適用を行っており、特別会計から企業会計へ移行した直後の令和2年度末では内部留保資金残高が約1億3,800万円だったものの、令和3年度及び令和4年度は、内部留保は確保できていない状況となっている。
 内部留保資金が確保できていない要因は、下水道事業については、平成5年度から平成14年度にかけて、年間約100億円に及ぶ大規模投資を行った際に財源として借り入れた当時の企業債の元金償還が本格化してきたことによるものである。
 しかしながら、本年3月に改定した「青森市下水道事業経営戦略」(計画期間20年)の投資財政計画においては、今後10数年間、資金状況が厳しい期間が続くものの、当該元金償還金は令和6年度にピークを迎え、その後は徐々に減少していくため、内部留保資金については、令和18年度から確保できる見通しとなっている。

(再質疑2)水道事業は施設や配管の更新時期にあり、更新にあたっては内部留保を活用していくので、内部留保が減少すると。一方下水道事業は、現在は企業債の元金償還のピークであり、内部留保が確保できていない、そのため施設や配管の更新時期の平準化を図って今後内部留保を確保していくということと受け止めました。
 経営努力を十分図っているところだと考えますが、給水人口の減少、使用量収入の漸減などの傾向は弘前市と同様です。そこでお伺いします。今後、水道料金・下水道料金の値上げ予定はあるかお示しください。

(水道部長答弁)
 本市の水道事業においても、弘前市と同様、人口減少や節水器具の普及に伴う水道料金収入の減収傾向が今後も続くことが見込まれており、このような状況の中、施設の老朽化対策、特に管路の更新に多額の経費を要することに加え、近年の燃料や資機材の高騰による影響なども考慮すると、年々純利益や内部留保資金の確保が難しくなるなど、財政状況の厳しさは増していくものと認識している。
 このことから、現在計画している水道施設の老朽化対策などを着実に実施しながらも、現行の料金水準を可能な限り維持していけるよう、給水人口の減少に対応した施設規模の適正化や、事務の一層の効率化を図るなど、持続可能で安定的な事業運営に意を用いて取り組んでいくこととしている。
 また、下水道事業においても、水道事業と同様に、人口減少等による使用料収入の減収傾向が続き、今後10数年間にわたり厳しい資金状況が見込まれていることから、本年3月に改定した「青森市下水道事業経営戦略」に基づき、持続可能な下水道サービスを目指して取組を進めることとしている。
 本経営戦略において、使用料改定については現時点で行わず、次期戦略改定までに見直しの必要性について検討することとしているが、まずもって、現行の料金水準を可能な限り維持していけるよう、収入面における水洗化の促進や未普及地域解消に向けた取組に加え、支出面における民間委託の拡充や事務の効率化、費用節減などの取組を進めてまいる。

(要望)「現行の料金水準を可能な限り維持していけるよう」とのご答弁でした。
 本市の水道料金は昭和 60 年度に改定して以降、30 年以上値上げを実施していません。青森県内の他の公営水道事業と比較しても、料金が低い水準にあり、市民生活上大きな意義があると考えます。上下水道事業では、安全な水を確実に供給することや、水環境の保全が第一の目的であり、その目的を達成するために値上げやむなしの場合もあるかもしれませんが、できる限り値上げをしないよう、今後も経営努力を重ねていただきますよう要望します。
 また、上下水道事業に関しては料金の値上げとともに、複数の自治体に跨って上下水道事業を統合する広域化や、事業運営の民営化を進める動きもあります。
 まず、広域化についてです。青森市の水道事業では、浪岡地区においては津軽広域水道企業団の水道用水を受水しておりますが、青森地区においては水源として横内川及び堤川、原別、天田内及び油川地域の地下水を使用しています。つまり、青森市内で完結した取水・給水となっていることから、今のところ青森市の立場からすると広域化の必要はないものと考えます。
 次に、民営化についてです。民間活力の活用は行政の効率化に必要であることは間違いありません。青森市の上下水道事業でもすでに多くの部分で民間委託を活用しているところと承知しておりますし、先ほども民間委託の拡充による効率化や費用節減に取り組むとのご答弁いただいたところです。
 しかし、上下水道事業のような、安全保障にも関わるようなインフラの管理運営にあたって運営そのものを「民営化」することがふさわしいかどうかはよく検討する必要があると考えます。
 宮城県では水道事業運営権を民間事業者に売却する方針を決め、2020年、入札で事業者を選定しました。選定された事業者は、新たにこの宮城県の水道事業を運営する会社を立ち上げました。しかし、この管理運営会社の株式の51%をフランスの大企業ヴェオリア傘下のヴェオリア・ジェネッツ社が保有していることがわかると、公共インフラへの外国資本企業の参加に宮城県議会でも疑問の声が上がりました。県議会建設企業委員会でも、賛否同數となり委員長裁決での決定という異例の経過をたどっての民営化決定でした。
 また、宮城県での民営化の範囲は浄水場などの運転・管理、薬品・資材の調達、浄水場や下水処理場など施設の修繕・更新です。最も費用がかかる老朽化した水道管・下水管の更新はこれまでどおり県で行うこととなっています。儲かるところだけ外資企業が入ってきて利益を吸い上げる形は、果たして地域全体のためにあるべき姿なのか疑問が浮かびます。
 八甲田連邦を水源とする横内浄水場の水道水は「日本一おいしい水」と評された実績もあり、青森市民の八甲田への愛着や、主要な観光地であるという産業上の重要性など青森市全体の政策と、上下水道事業は密接に関係しております。他分野の施策との連携のためにも、上下水道事業を公営企業として維持していく意義は大きいと考えます。ぜひ今後も、地域の財産として、安全でおいしい水の供給、陸奥湾を含めた水環境の保全に貢献する水道事業・下水道事業であり続けることを願ってこの項を終わります。


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