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陰陽BOXへの途・後

2022.3 背水の陣でシステム変更へ

3Dクーロン、初見的には文句なく面白い。テンションも爆上がりする。ユーザーも絶対に同じ見解のはず。このハロー効果で逃げ切るか──! 
しかしこれでは所期の目的は果たせない。
3Dには3Dのゲーム性を与えるのが流儀だ。すると「ゲート」の伏線回収と設定強化という企画意図とはトレード・オフの関係が生じてしまう。
アタマではわかっていても──と言い訳しながら半年経過。そもそもゲーム性が破綻したシロモノをリリースするのは、ゲームコンテンツへの冒涜行為というものだ。
シナリオ扱いに手慣れたムービーノベル方式にシステム変更を決定したのは「蓜島邦明プライベートスタジオライブ」動画収録の夜だった。

プライベートスタジオにあるテルミン──謎深き音楽世界の深奥を垣間見る

 ゲーム内ゲーム──結局アセット導入へ

陰界でプレイされている『ガリギアスオンライン』──陽界では今や懐かしのMMORPGライク。企画段階では記憶再現シーンに含めてなんとかするはずが、次第にシナリオ上での絡みが深くなり、3Dアセットでムービーキャプチャすることに。さっそく中世の村アセットを購入──UnityAssetStoreでは剣魔法世界観のアセットが充実の品揃えだ──色々手を出したいところ、シナリオの範囲に収めるアセットに絞り込む。
地形の上げ下げ、建物を配置して草木を生やし──村や廃墟の制作に一ヶ月ほどを費やすが、作業自体はサンドボックス的でそれなりに楽しく。

「イスタリア警備隊」の旗は数少ないオリジナル要素

2022.10 「超級路人祭」開催@渋谷Loft9

クーロン発売25周年記念企画としてライブ&トークイベントを開催。題して「超級路人祭」── そのテーマは「ジブンクーロン」。 参加ユーザーは誰もが「クーロン」を完全履修(つまりは全身に憑依)済みの超級路人であり、「九龍大学大学院生」として次のステージに歩を進めるという設定だ。
スモーク炊きすぎて警報の鳴り響く会場で、大音響ライブ爆裂! 
音楽に合わせて「リゾーム」の一部完成済みダンジョンのムービーを披露した。
「ゲート」部門では最終実装版の鏡屋救出シーンを上映。「助けてくれたのかぁ~……助かったぁ~」これこそがクーロン! 実は既刊の「完全シナリオ」には未採録のパートだ。
野中希さん朗読劇は小黒の過去に触れる書き下ろしの『小黒秘話』がベース──1919年、上海の沖合で……設定強化を背景に持つストーリー。しかし、なおも未回収要素が残る。
10.29路人祭に集う「院生」やその周囲から次のクーロンを担うセカンドジェネレーションが現れることを大いに期待している。

攻略本と取説が頼りのキャプチャー現場
「路人祭」は「クーロン」に一区切りつける最初の一歩となった

2023.2 パイロット版リリース

荒削りな要素を残したまま「リゾーム」パイロット版リリース。アプリ容量を抑えようと、ムービー尺は短めに設定した。
クラファン支援者を始め企画制作協力者もエンドロールに迎える。 また別途主催したフォトコンテスト入賞作品もゲーム内に掲出。不動産屋の看板広告という体だ。
このようにユーザーメイドの要素を取り込むのは、そのまま「超級路人」のコンセプトに通底している。まさに「ジブンクーロン」の実践だ。

「身近な陰界」をテーマに写真コンテスト開催
入賞作品はゲーム内に「光明地産」の看板として掲出した(パイロット版のみ)

2023.6 ひとまず第3巻までの分割リリース

走りながらのリリースなので、遡っての修正やリファインより先の実装を急ぐ方針に。本編とは謳いつつも結果的には「パイロット版第3巻」までといった格好になった。このリリースで「リゾーム」のマーケットサイズもそれとなく見えてくる。いろんな意味で早期アクセス版的な位置づけだ。
BOOTHのファイル容量1GB規制で分割圧縮が不可避──ユーザーにも手間をかけるリリースとなってしまった。

リリース告知ビジュアル──
1994年香港ロケの写真に「リゾーム」のダンジョンが融合
コピーは「狩人か。旅人か。」(PARCO)の本歌取り

2023.8 未着手エリアを一気呵成に

基本、ネームドキャラクターの拠点はすべてUnity3Dで表現する。そこで大活躍だったアセットが「ヴィクトリア朝インテリア」。香港が英国領だったこともあってか、文化的にもビジュアル整合性が高い。ネームド場面以外にも登場シーンの最も多いアセットになった。
残る大型街区は制作済みのUnityプレハブを駆使して量産。街頭に溢れる広東語サインなどの文言は全てネイティブに依頼した「本物」だ。
実は制作途中に路地裏だけで構成された超リアルな九龍城砦アセットを発見したのだが、ここでうかつに手を出すと収集つかなくなりそうで見送ることに。

ヴィクトリアンな光明聯社(マフィア本部)はカラヴァッジョ推し
老街に掲げられた書店の看板──
左:水着美人、右:老師──AI先生も強力にサポート

2023.11 ようやく第8巻まで実装終了してリファイン工程へ

ムービーミスのみならず、痛恨のダンジョン造作ミスとか、不自然な路人の見切りとか──シナリオ矛盾と未回収伏線も少なからず発見! シナリオ的には「第一稿」から版を重ねて重ねて──「第n稿」に──!
デバッグとリファイン作業を進め、既刊分を含め、全編でほぼリメイク状態。神は細部に宿るの呪文を唱えつつ、必要とあればムービー尺も惜しまずに奢る。
この期に及んでUnityカメラでF値いじれることを知る。これはシズル感出すしかないと、こちらも全編にわたって適用箇所を洗い出すことになった。

用語集はゲームタイトル画面から遷移するウェブページにまとめた

2023.12 陰陽BOX版の完成イメージ固まる

初回限定盤、再び。初回分はダウンロードではなく特報版での物販を決定。メディアはUSBメモリだ。
ゲームタイトル全巻の容量は17GBくらいか──あとサントラアプリ。これにはサウンドスケープ全6曲、BGMセレクション12曲をアプリ形式で実装。他にサウンドスケープ全曲MP3ファイル、ドキュメントなどをまとめてUSBメモリに格納、ウレタンケースに収める。32GBメモリの安定確保が優先課題だ。
ムービーはMP4形式なのでアプリ圧縮せずにそのままで。 陰陽BOXには、変形版フォトブック、オリジナルID印字の芯片(サンピン)を同梱予定。2023年内にすべてのデザインとDTP作業を終えた。

クレカサイズの芯片は陰界の必需品──思念プロトコルで通信する謎技術アイテム
芯片台紙にスポンサーロゴ──モデム同梱のプロバイダ申込みハガキみたいだ

2023.12.25 最終確認はがん病棟で

マスター版直前の最終確認作業、まさかのがん病棟で行うとは!
下咽頭がん──TNM指標ではⅣA期。根治ではなく寛解を目標に化学放射線療法──照射は年末の12月26日から開始。入院10日間+外来2週間、このセットを3回こなして都合35回のリニアック照射という治療計画。
要するに最大最凶のバグを自らに宿していたわけだ。このバグフィクスをなんとかしないと──!

【リリース情報は確定次第に開示します】

レンタルオフィススタートと対照的ながん病棟での年越し最終確認風景(2023年12月26日)
しんとした病棟からの企画30年目の初日の出──
2024年1月1日

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