留学生の就職活動
1983年に「留学生受入れ10万人計画」が始まって以来、新型コロナウイルスの影響があった時期を除き、長期的に留学生は増え続けています。
私は留学生の就職サポートも行っていますが、留学生の就職活動は日本人学生のそれと事情が異なります。
今回は、そのような留学生の就職活動をめぐる状況を、私独自の観点で解説していきます。
留学生を募集している会社
ここ10年、留学生を募集している会社は少しづつ増え続けてはいるものの、それでも求人企業全体から見ると一部に過ぎない状況です。
これは、さまざまな会社の採用担当者と面談してきた経験からいうと、ほとんどの会社は留学生を採用したことがないので遠慮しているからです。ビザ(在留資格)の手続きなどが、負担に感じるということでしょう。
就労ビザの申請形態
留学生が日本で就職する場合、留学ビザから就労ビザに切り替える手続き(在留資格変更許可申請)を行います。就労ビザにはいろいろと種類がありますが、留学生の就職先から「技術・人文知識・国際業務」になることが多いです。
私は経験上、留学生を募集してる会社を、このビザの手続き(書類作成)をどうしているかで3つのケースに分類しています。
・社内にビザ申請を取り扱う部署がある
だいたいは総務部になりますが、ビザの手続きを取り扱う部署があります。これは大企業に限られます。
・会社と提携している行政書士に依頼する
これが最も多いです。会社によっては書類作成だけでなく、外国人労働者の処遇で行政書士がいろいろと助言する場合もあります。
私は社員採用に関して、採用担当者から相談を受けることがあります。留学生の採用を始めたいという相談もあり、そのときに共通して話すことは、行政書士への相談です。
・留学生が自分で手続きする
これは少ないケースです。以前、ビザの申請での書類作成について、入社前に留学生から相談を受けたことがあります。
そのときは校内に元日本語学校の教員がいましたので、その人に代わってもらって対処しました。
なおこのケースの会社では、リーダー格の外国人労働者がいる場合があります。そのリーダー格の人がビザの手続きを助言し、仕事や日常生活でも相談にのっているので、心強い面があります。
そういうリーダー格の人がいるかどうかですが、それを含めて採用面接で、外国人労働者の有無と状況をいろいろ聞いてみるとよいでしょう。
留学生に求められる能力
これは実務能力もさることながら、日本語能力が重視されます。いくら有能でも、日本語での会話に支障があると判断されると、不採用になります。
日本語能力ですが、一般に日本語能力試験(独立行政法人国際交流基金と公益財団法人日本国際教育支援協会が運営)でのN2合格が採用ラインになります。
N2は、日常的な場面で使われる日本語の理解に加えより幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる能力、とするレベルです。
N2合格を採用基準の一つにしている会社もあれば、N2相当の能力があることが望ましいとしている会社もあります。なおこれは、システムエンジニアやプログラマなど、技術者を対象とした求人の場合です。仕事で顧客と打ち合わせることがある職種だからです。
なお製造職など他の職種では、N2までのレベルが求められない場合もあります。
留学生を募集している会社
人手不足で留学生の採用を始めた会社も聞きますが、それでも現状は、留学生を募集している会社は少ないので、効率よく探す必要があります。
その場合、以下の3種類の会社に着目するとよいでしょう。あと留学生に求人を紹介する、公的機関と人材紹介会社もあります。
・技術者派遣・アウトソーシング企業
大手なら、どこも採用しています。案件があっても技術者が慢性的に不足している業界なので、昔から留学生の採用には積極的です。
なお製造業や事務職の派遣・アウトソーシング企業も、総じて留学生の採用で実績があります。
・海外とつながりがある会社
例えばベトナムに海外子会社があり、そこで生産した製品を輸入して販売している会社です。その場合、海外子会社とのやりとりがあるため、ベトナム人は採用で有利になります。
では海外子会社のない国からの留学生はどうかということですが、採用される傾向にあります。
・外資系の会社、経営者が外国人である会社
外資系の会社は外国人が多いので当然ですし、経営者が外国人である企業も留学生採用や育成でノウハウがあります。
・外国人雇用サービスセンター
厚生労働省の機関で、求人情報を閲覧できるほか、就職相談も実施しています。東京、名古屋、大阪、福岡にあります。
・留学生を対象にした人材紹介会社(いわゆるエージェント)
これはジャンルが異なりますが、大学で留学生が増えてきた状況に合わせて、いろいろなエージェントがあります。
留学生がエージェントに登録すると、エージェントに求人申込みをした会社の中から合うところを選び、紹介します。採用が決まれば、採用した会社がエージェントに紹介料を払います。
留学生から見ると、求人申込みをした会社の中から選ぶことになります。しかしエージェントが、面接練習を行うなど採用に向けて各種のサポートをしてくれます。
最後に
留学生の就職に関しては、追い風が吹いています。
専門学校卒の外国人留学生、就職先拡大へ 在留資格の基準を見直し(朝日新聞デジタル)
また、日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)も改正され、国としても日本語教育の充実をはかっています。
そのような状況で、留学生の就職活動も有利になりつつあります。
留学生の皆さんがこの記事を参考にして、より有利に就職活動を進められることを願っています。
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