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本番になると数学の応用問題が解けなくなる謎の現象に迫る(後編)

【前提】

* 高校数学に苦手意識を持っている(医学部志望の)中高一貫校の中学3年生〜高校生・高卒生
* 勉強しているはずなのに模試や試験本番になると点数が取れなくなってしまう人
を想定しています。

応用問題が解けるようになるために(再掲)

数学(ひいては理系科目)ができるようになるためには、概ね次の2段階のステップを踏む必要があります。
1.解き方・解法を知る(基本問題が解ける)←前回
2.解き方・解法を使いこなす(応用問題が解けるようになる)←今回

前回は応用問題を解くために、そもそも基本問題が解けるかどうかという1番に焦点を当てましたが、今回の後編では2番の方に焦点を当てていきます。

2.解き方・解法を使いこなす(応用問題が解けるようになる)

1番の基本問題ができるようになるだけでも大変なのですが、そうした努力をしてもなお、数学に対して苦手意識を持っている人の多くはここで躓いているものと思われます。

勉強しているはずなのに点数が取れない場合、内容を丸暗記している「だけ」になっている可能性が高いです。

トランプなどのカードゲームや、スポーツなどをイメージしてみてください。

ルールがわからない人よりもルールを知っている人の方が強い・上手ですが、ルールを知っている人よりもルールを「使いこなすことができる」人はさらに強い・上手ですよね。

基本問題はできるのに応用問題が解けないというのは「ルールは知っているけど使いこなすことができていない」状態と言うことができます。

例えば、いわゆるチャート式を使っている人によく見られるのですが、とてもよくまとまっているからこそ、「この問題はこうやって解くもの」と機械的に処理してしまいがちです。そのため、ほとんど同じ解法で解ける問題でも、聞き方が変わると全く別の問題だから知らない・出来ないと判断してしまったりします。
ちなみに、チャート式問題集は例題の下(ページ真ん中位)に書いてある「CHART」や「指針」の部分が非常に大事です。問題を見てその方針が頭の中で引き出せるかどうかを練習してみると良いですね。そうすると、一見別の問題でも、「本質的には同じことをすれば解ける」ということに気が付くことができるようになり、入試でも解法を引き出すことができます。

解法を覚えること自体はもちろん大事なのですが、丸暗記するのではなく、それらの解法の特性(メリット・デメリット)を「理解して使いこなすこと」が大事ということですね。

公式や解法を使いこなすために何をすべきか

公式や解法を使いこなすのが大事なのはわかった、じゃあどうすればいいんだ?ということでここからは具体的な方法です。

まず第一に「言語化」です。前回の1番のお話にも出てきましたね。
ただ、今回の言語化は、1番に出てきたような「人に教える」というだけではありません。

「解説の一行目」あるいは「自分が躓いた・手が止まったところの式」が「どうやって出てきたのか?」を言語化するということが大事になります。

そのため、今回の「言語化」は、言い換えると、「解説の行間を読めるかどうか」です。

実は解説・模範解答には書かれていない、当然の前提になっているような情報は意外と多いです。
「なぜその点を文字で置いたの?」「なぜそうやって置いたの?」「なぜ判別式を使うの?」というところまでわざわざ説明は書かれていなかったりします。「まぁ普通そうするよね」と常識のような前提条件として書かれることも多いです。
例:点Pのx座標をtで置くと〜(←え、なんで置いたの・・・)
例2:なんで今回は因数分解じゃなくて平方完成なの・・・
例3:組み合わせで求められるって書いてあるけど、なんで順列じゃなくて組み合わせなの・・・
などなど。
数学ができる人は、(意識的な場合もありますが、)無意識的にでも解法を思いつくための前提条件を把握して、適切な解法を思いつき、問題を解くことができます。逆に、応用問題になると解けなくなる人は、そうした判断に必要な条件を見落としているために手が出なくなってしまいます。

こうした前提条件はわざわざ解説に載っていないことが多いのですが、世に出ている解説・解答はよくできていますので、読んだら納得出来てしまいます。
そのため、こうした発想がどこから来たのか、どうしてこの式が必要なのか、他の概念との違いは何か・・という理由の部分まで深く掘り下げないまま「まぁこうやって解けばいいのか、わかった。」と直しを終えてしまうことも多いです。

ところが、入試や模試ではこうした問題文から情報を拾って、必要な前提条件を把握し、解法を引き出す能力が必要です。
本番では解説を見ながら解くことはできません。そのため、なぜその式が出てきたのかがわからないと、結局入試問題では対応できなくなってしまいます。

模試の解説を見て、後から「あ〜これできたやつじゃん・・・」と思ってしまうタイプは要注意ですね。
よく勉強しているので、解答の流れなどは頭に入っているので納得してしまいやすいのですが、結局解答の1行目に何を書くのかという方針が見えないため、次に似た問題が出ても手が動かせないということですね。

結局どうすればいいの?

解答の行間を読むのは自分一人では中々難しい部分もありますので、出来る人に確認する(先生に教えてもらう)のが一番手っ取り早くはあります。

ただ、それでは元も子もないと思いますので、以下私が意識しているポイントであり、かつ生徒が思いつかなかった時によく思考から抜けているポイントについて紹介します。

それは「問題文の意識」です。

私は必ず問題文から情報を引き出すことを意識しています。考える時も問題文の情報から何をすべきか考えます。途中で手が止まったらすぐに問題文を確認します。答えが出た後も確認で問題を確認します。その理由は単純で、問題制作者は、問題文を読んだら解答できるように、情報を載せてくれているからです。

解説の1行目がわからなかった場合、その情報は問題文のどこから引っ張り出してきているのかを考えてみてください。必ず何かヒントが隠されています。問題文を見て解説の1行目がなぜ始まっているのかという論理的なつながりが見えるようになると、類題にも対応できるようになり、模試や試験本番での結果につながるようになります。

ちなみに、これは共通テストの数学も同様です。センター試験時代に比べると、問題文が長くなり、大量の日本語を読むのに苦戦するかもしれません。ただ、問題文が長いということはヒントも隠されているということです。京都大学や東工大が出題するような1行問題の方が情報が少なすぎて解きにくいです。たくさん問題文があると圧倒されてしまいやすいですが、その分ヒントもたくさん載せてくれているということですね。

まとめ

応用問題を解くために、普段の勉強で意識すべきことは、解答・解説の行間を読無ことです。なぜその解法が出てきているのかを考えること、特に、「問題文」からその情報を引き出すために何を考えればよいかを意識して勉強すると、初見の問題でも解答の方針が見えて手が出せるようになる問題が増えていきます。

少しでも参考になるところがあれば幸いです。具体的な過去問を用いてのアプローチも(需要があれば・・?)行っていく予定です。

他に聞きたいこと・知りたい情報があれば是非コメントいただければと思います。

X(twitter) @kimura_ijyuku

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