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量子力学 学びなおしメモ

大学院で農学をやる前は物理(素粒子あたり)をやっていたんですが、物理の学士を持っていると胸を張って言えるほどちゃんと物理を理解できていないのがずっと心残りでした。今振り返れば結局理解できたつもりになっていただけで全くできていなかったのが原因なんだと容易に想像がつくのですが、このままほっておくのは少しもったいない。私の今のラボでも量子コンピュータ云々という話がでつつあり、やるならいましかないと再学習を決意しました笑 やはり誰かに伝えることが理解を深めるうえで重要であると思うので、ここにメモとして書こうと思います。
(量子コンピュータの仕組み理解を目的としているのでスピンメインになると思います)


量子力学の体系

量子力学で中心になるのが"状態"と"物理量"です。状態とは言葉通り、考えている系の情報の総体で、二乗が確率分布になるという著しい特徴を備えています。数学的にはヒルベルト空間の要素(ベクトル)です。この状態の時間発展はハミルトニアン(古典的には全エネルギー)によって決まり、その時間発展の方程式がいわゆるシュレーディンガー方程式になります。
一方の物理量は、古典的には数字(あるいは位置と運動量の関数?)になりますが、量子力学では演算子です。演算子は状態に作用するのですが、この演算子の固有値を求めることができます。固有値はいくつか出てきますが、これが観測値の候補になります。どれが出るかは確率的にきまり、期待値としてしかはっきりということはできません。また、この演算子に関しては交換可能性という概念がとても重要です。あまり詳しく話しませんが、二つの物理量が交換可能である場合、両方の演算子の固有ベクトルとなれる特別な状態が存在します。

中心力場と角運動量

教科書では様々なハミルトニアンを仮定した上で、そのハミルトニアン(演算子)の固有値と固有ベクトルを求めていきます。特に重要なのが中心力が働く場の計算です。
中心力が働く系として重力場があります。重力がある場所ではもれなく角運動量が生じますが、同様にこの中心力場のハミルトニアンの固有値方程式を解くと、角運動量演算子が登場します。この角運動量はスピン角運動量ともつながってくるため非常に重要です。
さて、中心力場での固有値問題を解くと、離散的な固有値が現れます。ハミルトニアン演算子の固有値はエネルギーに相当するため、中心力場ではエネルギーが離散化することが分かります。そしてこのエネルギーを計算するためには、角運動量の固有値問題を解く必要があります(角運動量の大きさが方程式に入っているため)。角運動量はx,y,z方向の3つに分解することができますが、交換可能ではないため、すべてを同時に観測することはできません(不確定性)。しかしいずれかは観測できるため、よくz方向が観測方向として固定されます。
このようにエネルギーと角運動量は深く結びついており、エネルギーをひとつに絞るとそれに伴って角運動量の大きさも決まります。決まるといってもいくつかあるわけですが、いくつかに絞ることはできるわけです。同様に角運動量の大きさが決まるとz方向の大きさも決まります(これはすなわち角運動量の大きさとz方向の大きさの演算子が交換可能であることに他ならない)。同様にいくつかに絞ることができるだけですが。この相互依存関係は周期表を説明するうえで非常に重要で、エネルギー準位を主量子数、角運動量の大きさを決める方位量子数、z方向の大きさを決める磁気量子数といったように名前がついています。

スピン

いよいよスピンの話題です。
上記のように量子力学においても角運動量が導入でき、それによって周期表が説明できたわけですが、完璧に説明できたわけではありませんでした。そして、理論的に、また実験的にz方向が2つに分かれる角運動量の存在が考えられるようになりました。それがスピンです。z方向の成分は方位量子数をlとすると2l+1個あるのですが、それが2個しかないということは方位量子数は1/2ということになります。この事実よりz方向の大きさが±1/2であることが分かり、これがスピンと名付けられました。通常の角運動量と違い、古典力学と対応する存在がないため、イメージが湧きにくいですがよく時点のようなものだと説明されます。

ユニタリ演算子と保存量

最後にスピンや角運動量が別の観点から導出できることを見ていきます。そのために、まず微小変換に伴うユニタリ演算子と保存料の関係について理解が必要です。
系の座標を少しずらしたり、時間を並進変換するような微小変化を考えます。そのような変化をもたらすものが演算子であるとすると、確率の保存の観点からその演算子がユニタリ演算子でなければならないことが分かります。そして、もし系がそのような微小変換に対して不変であるならば、そのユニタリ演算子とハミルトニアンは交換可能であることが求まります。
ユニタリ演算子はリー群の観点からリー代数と呼ばれる代数系から生成されるのですが、その代数系は運動量演算子やハミルトニアンになっているわけです。このことから運動量や全エネルギーが保存することが求まります。

微小変換の観点からの導出

上記のような視点から角運動量を眺めてみると角運動量も保存量の一種ですから何らかの微小変換と結びついていることが示唆されます。それが回転です。微小回転に対する保存を仮定したときに、そのユニタリ演算子の生成子として角運動量が出てきます。ここで出てくる角運動量はスピンの自由度も含んだ全角運動量になっており、スピンの存在が自然な形で導出できることが分かります

おわり

ひとまず量子コンピュータに必要なスピンの情報はこんなところでしょうか。次回以降量子コンピュータについて書いていければと思います


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