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SECIモデル〜インサイドセールスチームの生産性を"持続的"に向上させる方法〜

はじめに

The Model型のビジネスフローを採用している企業において、インサイドセールスチームは、サッカーで言うミッドフィルダーのポジションとなり、前線(フィールドセールス)に対してゴールに繋がるパスを出します。

つまり、ゴールに繋がるパスは基本的にインサイドセールスから生まれるため、パスの量と質が持続的に向上することが、営業組織全体において極めて重要だと言えます。

よって、The Model型のビジネスフローを採用している企業において、インサイドセールスチームの持続的な生産性向上は、永遠のテーマになります。

この「持続的な」という部分がとても大事です。

というのも、どうしても日々のKPI目標を追っているため、目先の生産性を上げることだけにフォーカスしがちで、瞬間風速的に生産性が上がることで一喜一憂するということが多いのではないでしょうか。
(ハウスリストへの一斉メール配信など)

持続的に成長するのに必要なのは、「成果の出る行動や知識、スキル」を鮮度と質を保ちながら循環させることだと、私は考えています。

わかりやすく色々な要素を削ぎ落として言うと、「ハイパフォーマー」のTipsを循環させ続ける組織文化の醸成、とも言えます。

本日のnoteでは、それを実現させるのに極めて有効なSECIモデルについてご紹介していきたいと思います。


SECIモデルとは何か?


SECIモデルは「セキ」モデルと呼びます。

SECIモデルについてちゃんと説明しようとすると、それだけでnoteが書けてしまうくらい奥深いので、いったん以前に私が見込み客向けに作成した、クローズドな勉強会資料の抜粋verを使いながら説明します。

まず、提唱者です。
実は日本人の経営学者である野中郁次郎氏によって提唱され、世界的にも一定の認知のあるフレームワークです。

次に、SECIモデルを理解する前に定義をお伝えします。

続いて、SECIモデルの本丸です。

共同化(Socialization)

個人がもつ暗黙知を組織内で知識を共有するプロセス
特定の文脈を理解している人間同士(同じチーム内の人間)が理解できるナレッジ
例)OJT、ナレッジシェア会

表出化(Externalization)

暗黙知を言語化(形式知)に変換し、特定の文脈を理解していない他者でもナレッジになっている状態
例)Tipsをまとめたドキュメントや、スライドを作成する。本noteも表出化

連結化(Combination)

表出化で生み出された形式知を誰でもアクセスできるようにし、個々人が表出された複数の形式知を組み合わせて「新たな知」を創造するネタを獲得する
例)社内ポータルサイト、社内wiki、チャットボットの構築

内面化(Internalization)

自身に必要な知識を獲得し、実践や振り返りを通じ自分独自のナレッジを構築する
「知っている」状態から、「分かる」「できる」状態を目指す
マネージャーによるコーチングも必要

そして、これらの各フェーズを駆動させる「4つの場」が以下です。

最後にまとめスライド。

螺旋状に高次元なナレッジに育っていくのも特徴

スライドも共有しますので、こちらに目を通して、SECIモデルの概要に触れていただくと良いと思います。

モチベーション維持の課題にも

インサイドセールスを経験した方は、自身やメンバーのモチベーション維持に少なからず苦労した経験をお持ちではないでしょうか。

SECIモデルの実践によって、以下のような効果も期待できます

  • 知識共有によるチームメンバーの相互理解と連帯感の形成

  • 学習と成長をサポートすることでのモチベーション向上

  • チームワークとコラボレーションの促進によるモチベーション向上


SECIモデルの実践方法


ここまでSECIモデルの概要について説明してきましたが、ここからは実践する方法について触れていきます。
※以降は、SECIモデルのフレームワークを私なりに解釈し、インサイドセールスチームの運営に照らし合わせた解説になります。

共同化(Socialization)

すでに新人のオンボーディングとしてOJTを取り入れている組織も多いと思いますが、それこそがまさしく共同化です。

他にも以下のような形で共同化が行なえます。

  • チームメンバーの成功体験と失敗談を共有する定期的なミーティングを設ける

    • チーム内の成果や挑戦を称賛し、成功体験を共有する文化を醸成する

    • 失敗談については、オープンな雰囲気を作り、失敗を恐れずに共有できる環境を整備する

表出化(Externalization)

ある程度成熟したインサイドセールスチームの中には、各種Tipsをまとめたドキュメントや、効率的な業務を行うためのルールブックが作成されていると思います。
それらがまさに表出化されている状況です。

実は共同化や表出化までは、SECIモデルを知らない組織でも実践されていることが多ですが、問題はその先です。

各々が良かれと思って作成したドキュメントたちが、積もりに積もっていき、「どこに何があるのか分からない」「そもそもどのジャンルのTipsが存在しているのか分からない」ということが起きます。
※実際に経験されてる方も多いですよね?

連結化(Combination)

そのため、社内ポータルにドキュメントをまとめよう、という話になることが多いです。これが連結化のフェーズです。

しかし、社内ポータルの構築と運用は想像している以上にとても難易度が高いですし、構築後に組織内への浸透に躓きやすいです。

  • MECEになっているか

  • UIデザインは使い勝手が良いのか

  • 掲載している情報は最新か(誰が責任を持って最新な状態を保つのか)

さらに、構築仕立てのポータルサイトはとても見栄えが良くても、ポータルサイトは情報を増やすほど価値が上がる性質があるため、掲載する情報も増えていきます。

すると、「情報が多すぎて探せない。」「どこに何があるのか分からない」という本末転倒なことが起こります。

解決するためには、

  • 社内ポータルをメンテナンスする担当者を決め、責任を持たせる

  • その担当者が、社内ポータルに掲載する情報の鮮度と質を担保する

という方法が必要となるため、基本的に片手までインサイドセールスのメンバーレイヤーがやりきれる業務ではなく、自社のインサイドセールスの業務や状況を理解し、インサイドセールスへの知見も持っている担当者が担う必要があります。

以上を踏まえると、マネージャーレイヤーでさえもこの役割を担うのは難易度が高く、BizOpsのような組織や担当者を設けて、社内ポータルの構築運営を担うのが現実的な解決策となると思います。

内面化(Internalization)

連結化によって各メンバーが自身の業務に必要な知識やスキルの情報をインプット=「知っている」の状態になりました。

しかし、「知っている」だけでは全く意味がないことは皆さんもご存知ですよね?
「知っている」状態から「分かる」→「できる」になって初めてインプットした意味が出てきます。
その工程のことを内面化といいます。

内面化を支援するのはマネージャーレイヤーが適していると思います。
というのも、

  • チームメンバー個々の成長と学習を支援するために、コーチングやフィードバックを提供する

というアクションが内面化を加速させるため、深くメンバーとか変わっているマネージャーレイヤーでなければ、支援も浅くなってしまうためです。

理想的なのは、BizOpsやイネーブルメントの組織がマネージャーレイヤーを支援しつつ、マネージャーレイヤーはプレイヤーの支援をする、という体制が整えられると、内面化も加速していくと考えています。

その他には、以下のような方法も取り入れることで、内面化の支援が行なえます。

  • チーム内のメンターシッププログラムを導入し、ベテランと新人の間での知識の内面化を促進する

  • チームメンバーが自身の成長と学び取りを自発的に追求できるような環境を整える

そして、また共同化へ

個々人の内面化によって、新たなナレッジが生まれていきます。
それらのナレッジを、後続メンバーのOJTやチーム内ミーティングで共有し、共同化→表出化へと進んでいきます。

このように、一連の流れをデザインすることで、業務ナレッジの属人化を防ぎ、持続的な生産性向上を実現するチーム作りが可能となります。


SECIモデル定着に向けた追加のアプローチ


報酬の制度設計における考慮事項

ここまでの内容に共感を覚え、実際にやってみようという人ももしかしたら出てくるかも知れません。

しかし、満足のいくレベルで運用できるのは稀でしょう。

というのもの、アウトプットが得意(好き)なメンバーは、自主的に自身のナレッジをアウトプット(共同化や表出化)しますが、そうでないメンバーからは方っておいてもアウトプットは出てきません。

なぜなら、「日々目の前の数字」=緊急性の高い業務に追われて忙しいため、「緊急性はないけど重要」に分類されるSECIモデルの運用に手を付けられないためです。

ここはちゃんと報酬制度の設計に頼るべきだと言うのが持論です。

共同化の回数、表出化の回数、あるいは連結化(社内ポータルに掲載された数)等、定量データに基づいてその部分もちゃんと評価し報酬に反映させることで、絵空事ではなく文化として浸透していくと感がています。

コンテストやゲーミフィケーションの活用によるモチベーション

さらにコンテストやゲーミフィケーションの活用は、インサイドセールスチームのモチベーション向上に効果的な手段です。

例えば、四半期に1回などの定期的なコンテストを開催し、チームメンバーが自分のスキルや成果を発揮する機会を提供します。部外の人からも参加してもらい、投票やポイント獲得数に応じた表彰を行うことで、競争心を刺激し、自己成長につながる成果を上げることが期待されます。

また、ポイント制を導入して成果に応じてポイントを獲得し、一定のポイントを達成したメンバーには賞品や称賛を与えます。ポイントの蓄積やランキングを公開することで、競争意識を高めることができます。

これらのコンテストやゲーミフィケーションの取り組みによって、インサイドセールスチームのメンバーは自発的にモチベーションを高め、チーム全体の生産性向上に寄与することができます。

ただし、適切なバランスを保つことが重要であり、競争が協力を妨げないように心掛ける必要があります。きっとそれぞれのチーム毎に最適な運営方法がありますので、ぜひモチベーション向上の仕組みを工夫し、チームの結束力を高めながら、持続的な生産性向上に向けて取り組んでみてください。

ここまで長くお付き合いいただきありがとうございました。
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