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子宮で恋をしたことがあるか。5〜最悪の日編〜

第5章。

第1章。
https://note.mu/kimonoeru/n/nc39b9f296e1c?magazine_key=m8cc2be20cb2e
第2章。
https://note.mu/kimonoeru/n/n8321ba43b384
第3章。
https://note.mu/kimonoeru/n/n6ac585a86f4b
第4章。
https://note.mu/kimonoeru/n/nb17b0ab068d1?magazine_key=m8cc2be20cb2e

彼を諦めることを諦めた私は、この状況を楽しむことにした。

会いたいと言えば会えるし、行きたいところがあれば行けばいい。

彼は、私のことを隠しもしなかった。

私の方がひやひやするくらい、自然で堂々としていた。

だったら私も堂々としてよう。

恋人、という形に縛られなければ、私は幸せになれる。

事実、一番になれない悔しさを除けば、

大切にされていないと感じたことはなかったし、満たされていた。

だからこそ切ないこともあったのだけど。


もともと、彼は愛情の器が大きい人なんだと思う。

人よりも大きすぎるから、たくさんの人に分けても余るくらい。

私は初めて愛されていることを実感したし、自分の中にも愛を持てるようになった。

これは紛れもなく彼のおかげであり、心の底から感謝している。


とにかく、私はこの関係のままでもいいと、やっと納得し始めていた。

あの日までは。


その日、私はいつになく辛いことがあった。

1人ではどうしようも立ち上がれない。

壊れてしまいそうな夜。終点間際の時間。

大阪の街を泣きながらふらふらとさまよっていた。

そのままドブに落ちて沈んでしまいたいくらいに。

私は、彼に助けを求め連絡した。

その日はルームシェアをしていた友達が出かけていて、

今日は帰らない、と聞いていた。

誰もいない部屋に1人でなんて帰れない。

そうして彼からきた返事は。


今、私がルームシェアをしてる友達と会っている。

というものだった。

ん、まって、どういうこと?

頭が回らない。

友達からは、今日は泊まりだということ以外は何も聞いていない。

友達からの返信はない。

私はそのまま道端に崩れ落ちた。

理解ができなかった。

友達には彼の話を全てしていたし、私の気持ちもわかってるのに。

ダブルパンチとはこのこと。

ただでさえボロボロだった心が、ぐちゃぐちゃと丸められてぽいっと投げられた気がした。


どうしたらいいのかわからない。

相談しようにも、彼のことを話せる友達はほとんどいなかった。

私は、砕けた心をかき集めて、唯一事情を知っていて信頼している先輩に連絡した。

そして、ギリギリホームにやってきた電車に飛び乗って先輩のところへ向かった。

もう、どうでもよかった。

他の誰と一緒にいても気にならなかったのに、

タイミングと相手が悪すぎた。

一晩、泣き続けた。

もう何が悲しいのかもよくわからなかった。

今まで抑えてきた涙や想い、

それからその日起きた2つの最悪な出来事。

なにもかもが重なって、壊れた感情と涙に溺れた。


そして、はっきりわかった。

やっぱり、この恋愛はやめなければいけない。

ふわふわと熱に浮かされていた私は、やっと地上に立つことができた。

もしかしたら、必要なことだったのかもしれない。

私が自分の意思で、決断するために。


次の日。始発で帰った私は泥のように寝ていた。

全てを夢にできたらなんていいだろう。

そうやって眠って目が覚めると、友達が帰ってきた。


結局、事の真相はシンプルなものだった。

友達は相談があって彼と会っていて、そのままカラオケに行ってたらしい。

でも、結局泊まらずに解散したと。

悪気があったわけではなかった。

でも、なにもあの日じゃなくても。

私はつくづくタイミングに見放されていた。


今になって思う。

あの日のことは、やっぱり起きるべきだった。

そうじゃないと私は夢から覚めなかったし、

自分の心と向き合うこともできなかった。

私は一度も、彼に好きだと言ったことはなかった。

でも、もう終わらせる。

そう決意した。

過去最強に、硬くて、重たくて、辛い壁。

私はもう1年もその壁を破ることができなかった。

やるしかない。覚悟を決めた。

そして。その日はきた。


つづく

言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。