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子宮で恋をしたことがあるか。2〜心の獣編〜

第2章。

第1章。
https://note.mu/kimonoeru/n/nc39b9f296e1c?magazine_key=m8cc2be20cb2e



出会って1ヶ月。

彼は私の部屋に入り浸っていた。

バイトが終われば迎えに来てくれ、そのまま部屋に帰って泊まる。

そんな生活だった。

この関係に名前をつけたくはなかった。

世間一般の常識には当てはまらない、特別なものだと思いたかった。

私にはもはや、自分の意志ではどうにもできなかったから。



私は昔、自分のことが大嫌いだった。

自殺を図るくらいには世界に絶望していたし、

なんどもなんども妄想の中で自分を殺していた。

だけど、大学生になって、大学に行かなくなったおかげでたくさんの人や価値観に出会った。

私の人生は確実に進展しているはず。

なんなら、一度死んだ命、どうなったっていいんだからやっちまえ。

そんなやけくそな気持ちも正直あった。

でも、現実が充実していっても、やっぱり心は空虚なままだった。

そんな日々に彼は急に現れた。

いつもまっすぐこっちを見てくるから、嘘がつけなくなる。

何層もかさぶたになって見えなくなっていた心の奥を、

彼は簡単にはがしてくれた。



ある時。

不思議なことがあった。

私がアルバイトをしていたら、変なおばさんが来たことがあった。

おばさんは霊能力者の先生に見てもらった方がいいとかなんとか

言って、チラシを押し付けて来た。

あ、なんかやばい人だ、と思ったけど動けずにいたら店長が助けてくれた。

だけどその時から、なんだか私の体はおかしくなってしまった。

頭がぼーっとしてふわふわするし、変な熱がずっと下がらなかった。

心の動きも暴走していた。

心の声というか、感情が自分でコントロールできなくなる感じ。

まるでブレーキの壊れた車みたいに。

その日は彼もいない夜で、次の日に心配して来てくれた。

「今から行く」というLINEに、

私は「近づくな。はいってくるな」と拒絶の言葉を吐いていた。

とにかく怖かった。心も体も弱っていて、コントロールできなかった。

これ以上踏み入れられると抜け出せない。

そう直感で悟ったのか、私はバリアを貼るように祈った。

これ以上、私に踏み込まないで。逃げられなくなる。失うのが怖くなる。

さすがに様子がおかしいと心配して、家の下まで来ていた彼に、

ふと我に帰った瞬間に助けを求め、来てもらった。


今思えば、おばさんの変な気にあてられていたんだと思う。

あとから文面を見返すと、ほんとうに自分が書いたものかと怖くなった。

だけど、その言葉に現れている気持ちは、私が蓋をしてきた気持ちだった。

この人といると自分が向き合いたくないことに向き合わなきゃいけない。

今までの自分の価値観を揺るがすようで、怖かったんだと。

彼には嘘がつけない。

言葉もいらない。

心と心でそのまんま会話できるような、気がした。

だけど、私が恋愛として好きになっても、彼は答えてくれないこともわかっていた。

そんな心に秘めていた葛藤が、おばちゃんというきっかけで暴れ出した。

今はそんな風に思っている。

そうして暴れ出した獣は、まだまだ私を惑わせた。

それは、また次のお話。


#恋愛 #エッセイ


言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。