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着物専門店のこだわり-⑤「仕立て」

「仕立て」を大事に !

今回は、一番大事な「仕立て」に目を向けてみよう。着物の仕立ても、ベトナムなどの海外縫製(ほうせい)が増えているのが実情だ。国内に目を移してみると、冠婚葬祭(かんこんそうさい)用の着物が主流となった昨今、「見た目の綺麗な仕立て」が一般的となっている。

そのような中、僕たちは、美しさはもちろんのこと、着心地や耐久性を重視した、和の國オリジナルの「国内最高級手縫(てぬい)い仕立て」にこだわっている。その為の大切な寸法書きは、ゆり女将担当。一人仕事となるが、お客様との対話・サイズからベスト寸法を割り出す作業に多くの時間をかけている。

僕は一度、「何でロダン(考える人の作者)みたいにしているの?」と尋ねたことがある。ゆり女将曰く、「着付け教室をさせて頂くから、目の前でたくさんの着物姿を見せてもらっている。サイズが合わない着物を着られている方が多く、もう少し身幅が広かったらとか、もう少し身丈が短かったら着やすいのにと思うので、おひとりお一人を思い浮かべる時間を大切にして、本当に着やすいベストの寸法を割り出している。」とのことだ。

加えて、木綿・染め・紬の着物それぞれに素材が違うので、寸法や、衿(えり)の仕立て方法を変える場合がある。
また、お客様からのお預かり長襦袢(ながじゅばん)に合わせて着物をお仕立てする場合は、長襦袢の素材や寸法を考慮しつつ、今後のご着用予定を想定し、細心の注意を払って寸法を割り出している。

そうやって、万感の思いでお客様の着物姿をイメージし、「マイ寸法」が誕生するが、ここからまた、ひと山もふた山も越えなければならないことがある。それは、仕立て屋さんに、「美しさと丈夫さを兼ね備えた着心地優先の縫い方」をご理解頂き、「和の國独自の仕立て方法」で縫っていただくことだ。

注意すべき部分を列記し、お客様の体型はもちろん、素材・用途・目的に合わせた仕立てをお願いしている。「紬・木綿などは耐久性重視。糸がまっすぐなるように布目(ぬのめ)を通して。ほどけやすい場所は返し縫い。」「衿先(えりさき)から白い裏地が見えないように。」「衿はカーブをつけて。」「木綿は仕立上りのまま洗うので、縫い糸は○○にして。」など細部にわたる。

また、飛び柄の着物などは、仕立て屋さんと一緒に、美しい着姿の為に柄の場所を考えたりすることも多い。そして、お仕立て上がった着物の検品。検針後、お客様のお手元へお届けということになる。


それから、男性の着物や雨コートなどは「つい丈」と言って、着物を肩から脚までの長さに仕上げるので、身丈の長さや身幅などがとっても重要になる。そこで、一度仮縫いを羽織って頂いて、本仕立てに入るようにしている。特に、女性用コートは一般的な全国標準寸法ではなく、スマートに見える仕立てを追求しているので、「着姿が美しくて、着やすい!」とお褒めの言葉を頂戴している。

長い年月をかけて、私たちの思いを形にして頂ける仕立屋さんと二人三脚で、和の國独自の美しく、丈夫で着心地抜群の「着心地仕立て」を作り上げてきたつもりだ。しかし、研究・探求はこれからもずっと続いていく。
自分の体型に合った「マイ寸法」の着心地の良さを実感していただき、もっと着物を好きになって欲しいと願ってやまない。

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