垂加霊社招祷祝詞

後学若林進居諸生を率いて掛けまくも畏き霊神の御前に恐み恐みも申(し)給くと申す(。)爰に享保九年甲辰の春諸生と相謀り多賀宮の祀官川瀬元憲が家の庭中に於て清地を擇び新たに小祠を起立て今の日今の辰霊鏡を以て御正体と安置し奉る(。)天長の地久(し)く動き給(う)事無(く)して鎮座と称辞竟(に)奉くと申す。夫(れ)吾国中葉西羗異教を伝(う)より以来天下滔々皆其(の)毒流に溺れて上古神明の道日衰月廃殆む(?)と将に滅熄に至れり(。)時に幸に翁出(で)給はる有て舎人親王の正統を千載の後に接続して邪秘習合種々の雲霧を伊吹払(い)て吾大日孁貴の道猿田彦の教を復(び)再世に明に成給はりしかのみならず異邦孔孟程朱の賢き教(え)に至まても悉く発揮して復(た)余蘊無らしめ給はり其徳の盛功の大なる事固より称道を待たず(。)忝くも吾儕小子其余沢の及ぼす所私に人に淑する事を得たり(。)伏て願くば幸に翁の垂誨に頼て吾道の宗源を聞て与かる事を得て永く乖(き)違て至(る)事無らまく欲せり(。)特に仰らくは天下の万民彼異端の毒焔を脱れて神国の旧に復り神明の徳風に楽む事を得る者は偏に翁の遺教に関れり(。)此(れ)天下の公義にして一己の私願には非ず(。)抑(も)玆の地は伊弉諾尊の隠座ます所謂日少宮という所にて造化の本宮帝都の鎮府たり(。)霊社の玆に鎮座(する)事豈に偶然ならむ哉(。)吾道興隆の機会冥々助け有(る)に似たり(。)悦こび嘉しみ礼代の幣を奉て清みる(。)米潔よき肴御酒を奠は奉る恐み恐みも申す(。)霊神吾儕小子の称辞を照鑑し給(い)て平けく安けく聞食(せ)と申す(。)
享保九年甲辰三月朔旦


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