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『マザー・スノー』優希というヒト②

「優しい」に「希望の希」と書いて、「優希」と名付けられた彼女の名前の読み仮名は無論「ゆうき」であるのだが、

彼女が小学校低学年の時点で、周囲からは「ユキちゃん」と呼ばれるようになっていた。

それは某国民的アニメに登場する、赤服を着た東洋人にしか見えないスイス人の少女が、アルプス山脈で特段にえこひいきして可愛がっていた子山羊の名称が由来であもる。

当時朝の登校時間前に、テレビのローカル番組で何度目かの再放送をしていたのだ。

当時の小学生たちは大抵、朝にトーストパンを食べ身支度を整えながら、チラチラと「ながら観」していた。

そして登場人物の子どもたちも自分たち位の小学生の年頃であるにも関わらず、何故か学校に行かずにケダモノたちを従えて、更に高く険しい山を目指し毎朝登って行くのを、幼いながら誰もが疑問視するのだ。

加えてこの国民的アニメを見るたびに憧れるのが、とろけたチーズをペロッ乗せた、例のパンである。

見るからにヘンクツそうな爺さんが孫娘の為に、焚き火でチーズを炙って作ってあげる、アレ。

アレを見る度に食べたくなるので、親に「とろけるチーズ」を買って来てもらって、食パンに乗せ、焚き火ではなくオーブントースターで、似て異なる「アレ」を作っては真似をする子どもが一定数存在したに違いない。


毎回あの赤服少女は、それはそれは美味しそうにチーズを30センチほど伸ばしながら、あのパンを頬張っていたのを覚えている。

しかし視聴者側の子どもたちが小学校高学年位になると、気になり始めるのが少女の食生活についてである。

あの少女は金持ちの家に預けられていた時期以外、見ている限りでは野菜をほとんど口にしていない。

どう考えても身体に悪いと思うし、繊維質らしきものを口にしていないから便秘になりそうだし、何より肌荒れするに違いないと視聴者側は誰もが心配したのだ。

そんなことはどうでも良いのだが、優希が「ユキちゃん」と呼ばれるようになったのは、優希の見た目が色白で細く、そして儚い印象であるからである。

そう、彼女の見た目と中身はまるで、オセロの駒のようにハッキリと違うのだ。

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