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『マザー・スノー』なんでやねん!①

地球人の優希と、ホログラム状態のエイリアンは静かに見つめ合っていた。

深夜の静寂が2人を包み込む。

優希はこのエイリアンに聞きたいことが山程あったのだが、何からどうやって質問すればよいか迷った挙げ句、咄嗟に口をついた。


「……ところで、あなたの名前は何?私は優希っていうんだけど。」


てっきりまた地球滅亡後の話を聞かれるのかと思って、キョトンとした顔になるホログラム野郎。


" そうだね、申し遅れました!僕の名前は『Adelfelsen』。"


「アデル…フェルセンさん。。」


" そ!アデルで良いよ、ユキちゃん。

皆からはユキちゃんって呼ばれているよね?

あと、無理して標準語を話さなくて良いから。君、一人で居るときと頭の中ではずっと関西弁で話しているだろう? "


「ちょっっ!!?何でそれを…!

………いや。アンタ?何でそんなこと知ってるねん!!」


アデルと名乗るエイリアンは、ケタケタと笑いながら両脚をバタつかせた。


" 君のことをここ一週間、ずっと観察していたんだ。

今も君の意識の中に入っているから、君の目にはこうしてホログラム状態で僕が映っているけど、本当の僕はこの家の外にある宇宙船の中に居るんだよ。


それにしても、君が頭の中で嫌な客を懲らしめるの、アレ凄く気に入った!

バックヤードからボ◯サップを呼び出して、客にバックドロップとジャイアントスイングを喰らわせたかと思いきや、君がレフリーになってワザとカウントを素早く数えて、ボブ・サ◯プの右腕をニコニコしながら持ち上げたとき。僕は心底笑ったよ!

だってその客、すっごく感じ悪かったんだもん。 "

優希は自分自身の思考がそこまで他人に読まれていたことに、驚きと羞恥心と何とも言えない怒りが一斉に溢れ出しては、思わず顔面を両手で覆った。

言葉にならない程に恥ずかしい気持ちで一杯な彼女。でもそれ以上に、複雑な嬉しさも胸の内に込み上げて来る。

他の誰にも見せたことのない自分自身の内面を、見ず知らずの、しかも宇宙人から全肯定されたのだ。

これを単なる大変心地のよい夢だと思わずに居られようか。

「……でもさ、私って性格悪いなぁ、腐っとるなぁって思うんよ。こんな捻くれた方法でしか、ストレスを発散出来ないから。」

アデルはピョンっと立ち上がって、下から優希の顔を覗き込みながら、こう言った。

" 確かに君の性格は良くないけどさ。

そもそも客の立場だからって、何しても構わないと思ってる人間の方が余程じゃない?

しかもさ、そんな客って、弱そうな女性とかの店員にしかそんな態度取らないでしょう?

君んとこの超イカつい、織田信長店長には絶対に偉そうにしないんだ。

そうやって人を選んで憂晴らしする奴らなんて、僕は大っきらい!"




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