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米国のサーチファンド動向【補足:サーチフィー調達の実態】

前回の「米国のサーチファンド動向をまとめてみました」の補足です。

サーチフィーはどのくらい集めているの?

サーチファンドの最初のステップとして、サーチャーは投資家から活動資金(サーチフィー)を集めます。
直近のデータとしては、一口$30K(300万円) x 15人の投資家から出資を受け、総額$450K(=約4500万円)のサーチフィーという規模感です。
この4500万円は一般的には2年間の活動費として使用されます。前回のnoteにも書きましたが、サーチャー報酬は平均で約1000万円/年→2年間で2000万円、つまり総額4500万円うち約半分がサーチャーの報酬、残りが経費・DD費用等となります。

コメント 2020-05-14 130023

トレンドとしては、サーチフィーの額は緩やかな上昇傾向とみえます。投資家の数、投資家あたりの出資額の両面で伸びているようです。

ちなみに投資家視点でサーチフィーの多寡は、バイアウト投資実現を前提とするとIRRやROIへの影響は小さいです。(例えば、10億円のバイアウトを前提とすると、サーチフィーが1000万円増えたとして、総投資額10億円→10.1億円ですからね)
なので、多少サーチフィーが増えても、その分いい人材が集まる、バリューアップの確度が上がるのであれば、メリットの方が大きいと思われます。一方で、投資家から見てサーチフィー出資の際に最も考慮すべきリスクは、サーチ活動の結果バイアウト投資が実現せずに活動が終了するというリスクですね。

サーチフィーの出し手は?

米国ではサーチファンドに出資するファンドが多数存在します。もともとサーチャーとして成功した人が運営しているケースが多いようで、サーチファンドの理解者として、エコシステムの育成をけん引しています。
組織的なファンド以外にも、個人でサーチファンドに出資する投資家もいますが、最終的には買収資金出資の優先打診先になることを考えると、資金力のある投資家を確保しておくことは重要でしょう。
日本ではまだまだこの投資家層が薄いと言わざるをえません。米国での平均である15人を集めるのは難しいでしょう。

コメント 2020-05-14 130208

サーチファンドの派生モデル

多数の投資家から少額のサーチフィー出資を集める伝統的なモデル以外にも、様々な派生モデルのサーチファンドも生まれています。

Self Funded (自己資金型):
いわゆる手弁当で活動するパターン。買収資金の投資家候補とはゆるいつながりを保ちつつ、自己資金で自由度高く活動する。
特徴としては、比較的小さめの案件を狙う、買収時のDebtが大きめ、買収後も自己資金投資の割合(=オーナーシップの割合)が大きいといった傾向があるようです。日本で言う個人M&A、サラリーマンM&Aにも近いイメージでしょうか。

Single Investor, Accelerator, EIR (アクセラレーター型):
1社/1投資家からサーチフィーを得るパターン。いわゆるアクセラレーター的に、情報やアドバイスも受けながら活動するケースも多い。日本では、山口FGとJasfaの取り組みはこちらに近いですね。

(※これらの派生モデルは、今回の分析のデータには含まれていません)
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サーチファンドに理解のある投資家がまだ少ない黎明期の日本では、こういった自己資金型やアクセラレーター型の方が相性が良いのではないかと私は考えています。さらに派生型として、フルタイムでのサーチャーだけでなく、兼業でサーチ活動をするというパターンも良いと思います。
いずれにせよ、サーチファンドに理解のある投資家の存在が、エコシステム育成のカギだと考えています。

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サーチファンド・ジャパンを設立しました


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