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君羅文庫

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毎日一冊の本を紹介するマガジン「君羅文庫」 その日読んだ本の中から記憶に残る一文を書き出して感じたことを綴ります。
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2021年11月の記事一覧

自分の中の固まりが溶ける時

『ほろよい読書』 「おいしいもんですね。ご飯とお酒は・・・・・・」 (『定食屋「雑」』) 自分の中で固まってしまっていたものが象さんがつくった甘くて酸っぱいチキン南蛮とビールが溶かしてくれる。 原田ひ香さんの文章やはり沁み入る。

わからなさを楽しむ

『シュガータイム』 「『異常な食欲』の調子は?」 「うん。そっちも特別、変わりなし」 奇妙な病を抱える主人公の、そのわからなさと同居する様子が驚くほどあっさり描かれていて、原因を知ろうとすることの無意味さを突きつけられる。 わかることに重きを置かず、わからなさを楽しむ小川洋子さんの世界を知ることができた。

理解につながる「聴く」を努力して実践する

『 LISTEN』 とにかく僕は人の話を聞くことできないんです。「聞くこと」のできない自分を意識したのは娘が生まれてから。言葉を話し出し、会話ができるようになった娘の話を遮って話してしまうことがあるなと自覚した瞬間があったのです。 「昨日ね、〇〇ちゃんがね、保育園をね、」と娘が言ったところで、「あら休み?風邪ひいちゃったかな?」と娘がこれから話すであろう言葉を予測し、娘の言葉を奪って会話してしまったことがありました。 娘が言いたいことを娘の言葉が終わる前から予測して補足

問いに対する「答え」を出そうともがく

『水中の哲学者たち』 どこかで「間違い」や「失敗」を予感しながらも、自分に正直に、世界に切実に立ち向かって投げる決死の言葉 「正解」を求めるから、とんでもないことを言ってはいけないと思う。自分の「なんで」に正直に、問いに対する「答え」を出そうともがいてみる。

うつわとして生きる

『「利他」とは何か』 利他とは「うつわ」のようなものではないか…相手のために何かをしているときであっても、自分の計画に固執せず、常に相手が入り込めるような余白を持っていること。それは同時に、自分が変わる可能性としての余白でもある 相手のためにやってあげようと、相手を助けてあげようと考えて行う利他は相手を支配することにつながる。 自分の行為の結果はコントロールできないと考え、その不確実性を認識しながら、相手が「いる」ことを肯定し、聞くことで他者を発見し、その行為から自分に

愛を持って「いる」を見る

『観察力の鍛え方』 いい観察は、ある主体が、物事に対して仮説をもちながら、客観的に物事を観て、仮説とその物事の状態のズレに気づき、仮説の更新を促す。 最近心掛けている読書にも通じることだと思っていて、その本を読む前に自分の仮説を持っておくことで本の内容をよく観察できるし、自分で持っていた仮説の更新も促されていく。 なんとなく読みたいなぁの読書は、結局なにも観察できない。 読書だけでなく、学生のこと、研究のことに対して「いい観察」をするためには、仮説を持ち、物事をみる姿

自分で決めて実行する

『企画 』 企画とは「無限にある可能性を断ち切って、方向性を決めていく作業」 企画とは「つくるもの」ではなく、「決めるもの」。物事を決めて、無限にあった可能性を断ち切ることで進むべき道筋をはっきりさせ「実現させる」ことができる。 決めた結果に起きたことは、すべてあなたの企画です。 この本を読むと「決めて」読んだことも自分の企画。天賦の才がなくても「企画」はできる!自分で決めるってとっても良い! 実行できなかったことで後悔するよりも、自分で決めて実行した結果で信用を積

動機と覚悟

『最澄と徳一 』 ここに述べた様々な疑問は、おそらく謗法の罪となり、無間地獄に堕ちる報いを招くことになるかもしれない 堕地獄のリスクを背負ってでも言葉によって問答し、異なる教えを批判し、理解しようとした徳一の覚悟と仏教理解への好奇心を感じる一文。 これほどの迸る動機を伴って、ここまでの覚悟を持って僕は何かを理解しようとしているだろうか? 最澄と徳一の論争には直接関係のない、徳一が空海に宛てた『真言宗未決文』からの引用。ずっと心に残ってる。

問いの立て方を変えることで勉強の意味を考える

『勉強するのは何のため?』 唯一絶対の答えを求めて「なんで勉強しなきゃいけないの?」と問うんじゃなくて、「自分はどういう時に勉強に意味があると思えるんだろう?」と問うことが重要 問いの立て方を変えることで勉強の意味を考えてみる。 勉強することの理由に絶対の正解はないのだから、自分なりの答えを出して、それを実感するための条件を整備する。

「遅い思考」に歩調を合わせるということ

『ニュースの未来』 ニュースってなんで必要なんだろう?という思いを感じていたことから読み始めた本。「良いニュース」を定義する中で、必要なニュースについて触れられていたところで当初の疑問に対する答えが書いてありました。 人間にとって、自分で調べるコストというのは、案外と高いものです。そこを先回りして調べ、ニュースとして報じることに価値はあるのです。 これで完全に納得したわけではないのですが、次のニュースの書き手の本質について書かれた部分と合わせると分かるような気がしてきま

揺るがない価値観

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』 「パンデミックで自分が有名になることと、パンデミックが起こらずに自分が無名のままでいることと、どちらを選ぶかと聞かれたら、迷わず後者を選びます。」 この言葉に象徴されるように、自分が有名になることやお金を手に入れることよりも大好きな研究を真摯に愚直に続けることを優先し、mRNAの可能性をひたすら信じ、揺るがない価値観を持って生きるカリコさんの姿から研究者としての理想の心の持ちようを感じた。 カリコさんの直面した困難

本の読み方を読んでみることで起こる変化

『読書の技法』 本の内容を100パーセント理解しようという「完璧主義」を捨てること やはり読書術の本にはこれが書いてある。本の内容を全て覚えようとするのはやめよう。 重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになること 目を通しただけではダメで、使用できる知識として落とし込む。そのための読書ノート活用も記してある。 「何をしないか」「何を読まないか」も大切な知の技法のひとつ これも大切だ。時間は無限ではないのだから、

アウトプットで本を好きになる

『大人のための読書の全技術』 読んだら話すのを続けるべきです。そうしているうちに、本の吸収度が高まり、ますますその本が好きになります。 「アウトプットで本を好きになる」が印象的です。誰かにその本のことを話していると、本のことや著者のことますます好きになりますね。

「価値ある1%」に出会う読書で自分の中をたくさんの本が流れていく

『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』 ー読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写しとる」ことではなく、価値を感じられるような「1%に出会う」こと 本を読むとき、その本の内容を全部覚えようとまでは思っていないが、せっかく読むのならできるだけ多くのことを自分の中に取り込もうと考えて読んでいた。でも、読んだ本の内容を全部覚えるのは無理だし、読んだだけでは内容を自分の中に取り込むのもむずかしい。 大切なのは「その本から何を得た