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君羅文庫

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毎日一冊の本を紹介するマガジン「君羅文庫」 その日読んだ本の中から記憶に残る一文を書き出して感じたことを綴ります。
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2021年1月の記事一覧

内田百閒『御馳走帖』

好きな和菓子は?と聞かれれば「すあま」と答える。 先日、仕事を早く終わらせた帰りに駅前の和菓子屋で団子でも買って帰ろうとすると「すあま」が並んでいた。 団子とは一線を画すフォルムに一際目を引くピンク色。 食べれば上新粉のもちもちとした食感に、ふんわりとした甘さが優しく感じる。 すあまとの久しぶりの再会を喜び、家族用の団子とは別に、自分用に一つすあまを買って帰った。 すあまとの出会いは、祖母が買ってきてくれたお土産だったろうと思う。 緑茶が大好きな祖母は、お供となる

僕たちは、あの夏「主人公」になれなかった。

#君羅文庫 『風が強く吹いている』 三浦 しをん 著 僕たちは、あの夏「主人公」になれなかった。 大学4年の夏、僕が所属する体操競技部は、1部残留をかけて全日本インカレを戦っていた。 大学スポーツの場に身を置くと、スポーツ漫画を読んだ時の「主人公になる感覚」を味わうことがある。 『スラムダンク』の山王工業戦を戦う湘北高校のメンバーになったような、「僕らは主人公、最後には良い結果が待つ」という「希望」を感じながら競い合う。 しかし、その夏の試合中に感じた「希望」は叶わず