タイラー・ダーデンの銃 ー2020を振り返って
こんにちは。
岩下宏一です。
今日は2020年に自分に起こったことを振り返ってみます。
僕の仕事は主に企業向けの研修やコンサルティングです。
前職から独立しフリーランスとして7年目の今年は、コロナにより大きな影響を受けることになりました。
理由はシンプル。
研修の前提である、集合形式が取れないから。
2月にコロナの第一報を聞いてほどなく、仕事キャンセルや、日程を定めない延期が出始め、あっという間に業界が混乱していきました。
そんな中で突入した4月の新人研修シーズン。
新入社員の受け入れにあたっての研修は、他の研修とは少し事情が違います。
また今度、というわけにはいかない。
予定通りやらなければならない。
というわけで、東京における4月7日の緊急事態宣言を挟み、オンライン化の激流に飲み込まれることに。
各社各様の研修を、とにかくオンライン化です。
何をやっていたのか、いま振り返ってもあまり記憶が定かではありません。
まあ人間やろうと思ったらなんとかできるもんだなあ、という感慨のみが残っています。
そうこうしている間に怒涛の4月が終了。
静寂が訪れました。
凪。
5月から8月あたりまでは仕事の予定が全く立たない状況。
毎日、やることがありません。
このときはけっこう、辛かった。
とはいえ、このタイミングでどこかの会社への就職も難しいし、正直、あまりその気も起こりません。
だったら、いっそのこと肚を括ろう。
前から懸案だった、何度もやろうと思ったけど勇気がなくて踏み切れなかったこと。
法人化だ。
というわけで、会社をつくることにしました。
やることを自分で設定しないと頭がおかしくなりそうだった、というのもあります。
社名は、株式会社ビーユアセルフ。
個人事務所の名前をそのまま使いました。
さんざん悩んだのだけど、けっきょく自分が伝えたいことは
「あなたらしくありましょう」
というところに戻るので、これにしました。
設立登記こそ司法書士さんにお願いしたのだけど、それ以外は全部自分でやろうと決めました。
時間はあるしね。
社会保険事務所への届け出。
国税局、都税事務所、市役所への税金関係の届け出。
月締めの経費管理と役員報酬の支給。
個人事業主相手の支払い時の源泉徴収。
年末調整。企業側の手続きと個人の手続き。
そして来るべき期末決算。
自分でやるのはちょっと骨が折れますが、基本的な会社の仕組みを知るには良い機会、そう思って一つひとつやっています。
ロゴもつくりました。
青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムでいっしょだったイラストレーターの中沢萌さん(もうちゃん)にデザインをお願いし、同じくいっしょだった株式会社タンタビーバ社長の門脇俊仁さんに監修をお願いしました。
なかなかの難産になってしまったのだけど、ステキなロゴができました。
「人の中にある大切なもの」をイメージしたのだけど、炎にも見えるし(ハウルの動く城のあれみたい)、シュークリームにも見えるし、とっても気に入っています。
いま、会社をつくって4か月。
自分の意識が少し変わった気がます。
これまでは、フリーランスという立場で、定住先を決めず、ふわふわと漂っているような感覚がどこかにありました。
「いつでも逃げられる」という猶予・保留でもありました。
会社をつくったことで、自分の根っこがようやく張り始めたような感覚を持ち始めています。
僕は「ファイト・クラブ」という映画が好きです。
こんなシーンがあります。
ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデン(本能で生きろ、やりたいようにやれ、と主人公に迫る謎の男)が、主人公である「僕」(エドワード・ノートン)の前で、コンビニの店員をつかまえ、外に連れ出し、頭に銃をつきつけてこう尋ねます。
「お前は本当は何になりたかった?」
最初は渋っていた店員ですが、銃が怖くて本心を言います。
「…獣医だ」。
「じゃあ、いまからお前は獣医の勉強をしろ。6週間後に戻ってくる。その時に勉強を始めていなかったら、お前を殺す」
「わかった、わかった!」
解放された店員は泣きながらその場を走り去ります。
「酷いことをするもんだ」
主人公が責めると、タイラーは悪びれもせず
「明日はあいつにとって最高の日だ。朝メシは、今まで食ったどんなものよりも美味いだろうよ」
・・・うろ覚えですが、だいたいこんなシーン。
僕はなかなか腰が重いので、やりたいと思ったこともなかなか実行に移せません。
この映画を見た時に、ああ、自分にもブラピが銃をつきつけて「やらなきゃ殺す」と言ってくれればなあ、そしたら思い切って全部やれるのに・・・そう思ったものです。
映画公開から21年、ブラピは一度も僕のところには来てくれなかった。
でも。
コロナによる仕事の激減、環境の激変は、僕の頭に突き付けられたタイラー・ダーデンの銃だったのかもしれません。
「お前は本当は何になりたかった?」
というわけで、僕の2020年でした。
これからは、銃をつきつけられなくてもやりたいことをやれるような、フットワークの軽さを身につけたいものです!
来年もどうぞよろしくお願いします。