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カゴから抜け出して気づいた「浮世離れ歴30年」の男

私はかつて、2つのカゴの中で生活していた。ひとつはフリーター・ミュージシャンのカゴ、もうひとつはマスコミのカゴ。いずれのカゴも自ら進んで飛び込み、カゴの中にあるてっぺんを目指していた。

カゴの中は、まさにドラゴンボール「精神と時の部屋」だった。世間で流れる時間軸や環境が全く違う。カゴの中の常識は世間の非常識だ。サラリーマンが汗水垂らして仕事をしている時間に寝て、終業が終わった頃に起きて池袋北口徒歩5分、ラブホテル街手前にある居酒屋にアルバイトへ行き、世間のみんなが寝静まった頃に休憩時間。24時を過ぎてから朝4時までは休憩なしのノンストップ。

バイト終わりで乗る池袋駅始発の山手線車内は社会の縮図だ。電車でGO!の視点で運転士のうしろから景色を眺めるおっさん。池袋の24時間居酒屋・大都会で朝までオールをしていたであろう、まだまだ飲み足りなくて、500ミリ缶ビールを片手に談笑する大学生はいている数人のグループ。ヨレヨレのTシャツとダボダボのジーパン姿のおっさんは、大きなカバンを抱えたまま席に座って眠りこけている。工事現場のバイト帰りなのか、はいているスニーカーには土がベッタリついている。これがフリーター・ミュージシャンのカゴでもがいていた私の通勤風景だった。

このカゴで目指しいたてっぺんにはたどり着けない、バンドでメジャーデビューは無理だと悟った私は、マスコミのカゴに飛び込んだ。よしもとの学校NSC。放送作家になるために入ったカゴもまた、カゴの中の常識は世間の非常識だった。

芸人も作家も、1秒でも早く入ったほうが先輩、年齢は関係なし。NSCのスタッフは1年先輩だけど、年下の大学生にも敬語で「おはようございます!」と挨拶。27歳、社会人10年やってる私も、このカゴでは赤子も同然だった。挨拶していたのはオリラジとかフルポンの人だったな。

NSCを出て作家事務所に入った私。仕事で行くテレビ局も当時はまだまだパワハラ三昧。よくそんなに怒りのエネルギーが出るなぁと感心するディレクター、ADには厳しいのにプロデューサーには媚びへつらっていた先輩作家。いや厳しくしたADは今後ディレクター・プロデューサーになるんだから、ADにこそ優しくすべきなのに。でも、このカゴではそれが常識だった。

このカゴには15年近くいたので、良くも悪くもすっかりカゴの住人になってしまっていた。会議で若手を詰めて凍りつく空気を何度となく作りだしたし、現場で怒号の飛び交う喧嘩をしてしまったこともあった。仕事の妥協なしというカゴの常識が作りだした狂犬と化していたのだ。当時の私を知る後輩は「あの頃の木村さん、マジでやばかったすよ。嫌われまくってましたからね」と評していて、カゴから抜け出してずいぶんと穏やかになったんだなと、しみじみ感じる。

カゴを抜け出し、今ではいろんな業界の方と関わりを持たせていただくようになった。関わりを持てば持つほど上がっていく解像度がある。私は世間の常識で生きていなかったので、浮世離れの解像度がどんどん上がっているのだ。

好き勝手に生きてやりたいようになる人生を送ろうと、「大学進学は諦めてくれ。うちにはそんなお金はない」と社会を生き抜く上での大卒メリットを全く理解できなかった高卒の父親と中卒の母親が言い放った高校3年1学期に、「じゃあ進路は好きにさせてもらうから」とカウンターパンチで言い放った一言から、浮世離れ人生が始まった。両親は申し訳な表情で聞き入っていた。

浮世離れ歴30年になります。いくばくかは社会の常識は理解できるようになりましたが、染みついた浮世離れタトゥーはもう取れないでしょう。実はもうちょっと常識人になってみようと自分なりに行動してみたんですけど、気持ちがのりませんでした。

「こんな人になってみたい」というロールモデル的な人はいるのですが、その方々は私よりも浮世離れています。いわゆる「アタオカ」の人たちです。もっと浮世離れてみて、その先に見える景色を眺めてみたい。

そのために必要なのは自分を信じる。自信を持つこと。こんな見た目なんですけど、めちゃくちゃ自信家でもない。「わーこれで大丈夫かな?」と心配するのはしょっちゅうだし、自問自答も頻繁に繰り返しているから、考えない時間がない。脳がオーバーヒートして寝付きが良くないのも当たり前なんです。

でも、浮世離れをやめようとは思わない。辛い道のりだけど、これは運命やら宿命だと思って受け入れて、人生の終焉まで突き進んでいく所存です。







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