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『源氏物語ものがたり』島内景ニ著 新潮新書


本書に紹介されている紫式部と源氏物語研究者を並べてみた。
紫式部 1000年頃
藤原定家 1162〜1241
四辻善成 1326〜1402
一条兼良 1402〜81
宗祗   1421〜1502
三条西実隆1455〜1537
細川幽斎 1624〜1705
本居宣長 1730〜1801
アーサー・ウェイリー
1889〜1966

こうしてみると、源氏物語は創作されて以後、途切れることなく、連綿と研究が続けられている。
本書は、源氏研究の流れを非常に分かりやすく解説している。

紫式部の創作以降、源氏物語は研究され、蓄積され、古今伝授を通じて次世代へと引き継がれていった。

藤原定家が本文を確定した。

四辻善成が漢字と平仮名を併用した語釈を行った。

一条兼良が和の精神を汲み出した。

宗祗は、戦乱の世にあって平和を渇望し、理想の政治家像を源氏物語に見出した。

北村季吟は、本文+傍注+頭注を湖月抄で行い、庶民が源氏物語を読めるようにした。そして、源氏物語から「君臣の交わり」「仁義の道」「風雅の媒ナカダチ」「菩提の縁」の教訓を読み取り、源氏物語を「高度の人生指南書」「最高の人生教訓書」とした。

それを革命的に打ち破った本居宣長であった。
宣長は天才的な源氏解釈を一代にして築き上げた。その真髄は「もののあはれ」である。じんせの喜びも悲しみも全てを引き受けて生きる光源氏の姿に「もののあはれ」を読み取った。

著者は言う。すらすら読める現代語訳にだけ甘んじていては、源氏物語を理解したことにはならない。源氏物語にはいまだに難解で議論の分かれる箇所が数多くある。源氏物語は一語・一文・一場面ごとに立ち止まり、逡巡し、際限なく検討を続ける学問探究が求められると。

いま、NHKラジオ古典講読て、著者の語で、名場面でつづる「源氏物語」が放送されており、私は毎回聴講している。本書で語られた精神が、この放送でも反映されている。

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