君が行く

源氏物語、万葉集などの古典文学にあこがれています。物理学を数学的に理解することにもあこがれています。歩みは遅くてもマイペースで。介護のお仕事をしています。家族は、つれあい。娘二人はそれぞれ三歳の女の子、一歳の男の子の母親に。広島県在住。

君が行く

源氏物語、万葉集などの古典文学にあこがれています。物理学を数学的に理解することにもあこがれています。歩みは遅くてもマイペースで。介護のお仕事をしています。家族は、つれあい。娘二人はそれぞれ三歳の女の子、一歳の男の子の母親に。広島県在住。

最近の記事

『改訂版 中世瀬戸内の港町 草戸千軒町遺跡 』鈴木康之著

広島県福山市を流れる芦田川の底に埋もれていた中世の港町、草戸千軒町遺跡に関する本です。 発掘調査で明らかになった草戸千軒町の全体像をわかりやすくコンパクトにまとめてあります。 この遺跡は、年代的には、13世紀の中頃から16世紀初頭までのものです。 その間、盛衰を何度かくりかえしており、町の性質も変化しています。 芦田川の河口近くに位置するこの集落は、備後南部の河川交通・陸上交通を瀬戸内海の海上交通に結びつけるための港湾集落でした。 福山湾岸から芦田川中・下流域にかけて

    • 小松英雄著『伊勢物語の表現を掘り起こす 《あづまくだり》の起承転結』を読んで

      著者は2022年に鬼籍に入られている。この著書はその2年前に刊行された。著者の研究人生の集大成のひとつだ。 著者は、「平安時代における仮名の発達を跡づける作業の延長として『古今和歌集』の和歌に出会い、仮名の巧みな運用による和歌表現」に着目され、この著書で、伊勢物語の読み直しを行われた。 著者が長年研究を積み重ねてこられたこの手法を用いて、これまでの伊勢物語註釈書が深く立ち入ることのなかった細部にまで批判的検討を加え、一語一語、丁寧に読み解かれている。 それは大学の講義を

      • 伊勢物語を原文でさらに読み進めた(3)

        伊勢物語、二四 梓弓」まで来たよ。 ふむふむ、案外、読めるなあ。 男と女の、互いの思う心の入れ違い。どちらへも同情してしまう。 片田舎から仕事で京へ行って三年留守にしてた間に、女は別の男に求婚されて、なんとなくオッケーしてしまったんだねえ。あることよね。 そこへ男が帰ってきたんよね。男は、辛かったけど、女のことを思って、あきらめたんよね。最後に一言、さよなら、幸せにね、と言って立ち去ったんよね。 そしたら、女は、男への今までたまってた思いがあふれて出してきて、男を追いかけ

        • 伊勢物語を原文で読む(二)

          男は、失恋して、京を去り、東へあてもなくさすらってゆく。道々、京には珍しい風物を見るにつけ、女を思い出し、歌を詠い涙する。 だけど、だめだなあ、東京あたりまで来ると、女好きの癖がででくるんだなあ。 しかも、東の女性に上から目線。失恋して、ヨレヨレになって放浪し、旅先でオンナをもて遊ぶ。愚かな男。 この愚かさをご覧くださいませ。 十四 くたかけ くたかけ=にわとり 男は陸奥まであてもなく行き着いた。女が、都会的なその男を見て、一目惚れしてしまい、歌を詠んだ。 なか

          夜明け前、オリオン座が昇ってる

          4時半、起床。 東の空にはオリオン座やおおいぬ座が昇ってきていたり冬の星座だ。 天頂には木星と火星が光っている。 スマホで写真を撮ってみた。 普通にパチリの撮っただけだが、よく写ってた。 星座の形もわかる。 オリオン大星雲も小さく写ってる。 星座の図と比べてみた。 オリオン座、おおいぬ座、おうし座、うさぎ座、こいぬ座。 木星、火星。 アルデバラン、べテルギウス、リゲル、シリウス、プロキオン。 草むらから鈴虫やコオロギの声が聞こえてくる。 今年の夏は酷暑だ

          夜明け前、オリオン座が昇ってる

          『冷泉家 800年の「守る力」』冷泉喜実子著(新潮新書)を読む

          親しみやすい文章で、冷泉家が身近に感じられた。冷泉家は、和歌の家元。 「和の文化」の基本は歌にあり。私とあなたはいっしょです、という精神。 そう言われると、和歌がとても身近に思えてきた。 和歌は、型、約束事が大事。自我、おのれを出さず、型にのっとって歌うことが大事。 自分にも真似すれば和歌のひとつも詠めるかな、と思ってしまった。 冷泉家の家訓は、 そこそこで、相変わらず。 神さんのバチが当たらんように。 こうして、冷泉家は800年、続いてきた。国宝を守ってきた。無形の文

          『冷泉家 800年の「守る力」』冷泉喜実子著(新潮新書)を読む

          伊勢物語を原文でちょっと読んでみた

          秋の虫が窓の外でしきりと鳴いています。ふと、伊勢物語を読みたくなって、本棚から小学館の日本古典文学全集8巻『竹取物語・伊勢物語・大和物語・平中物語』を取り出しました。 読めるかな?難しいかな?と思いながら、最初のページを読み始めました。 一、初冠  むかし、男、初冠して、奈良の京春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。 原文だけではわからない箇所も、頭注を丁寧に追ってゆけば、なるほど、意外とよくわかる。源氏物語を原文で読んだ時は、悪戦苦闘したけど、これはそうでもない。

          伊勢物語を原文でちょっと読んでみた

          『源氏物語ものがたり』島内景ニ著 新潮新書

          本書に紹介されている紫式部と源氏物語研究者を並べてみた。 紫式部 1000年頃 藤原定家 1162〜1241 四辻善成 1326〜1402 一条兼良 1402〜81 宗祗   1421〜1502 三条西実隆1455〜1537 細川幽斎 1624〜1705 本居宣長 1730〜1801 アーサー・ウェイリー 1889〜1966 こうしてみると、源氏物語は創作されて以後、途切れることなく、連綿と研究が続けられている。 本書は、源氏研究の流れを非常に分かりやすく解説している。

          『源氏物語ものがたり』島内景ニ著 新潮新書

          挑戦『源氏物語』原文読み

          2年前になりますが、源氏物語を原文で読むことに挑戦しました。使ったのは新潮日本古典集成。原文の横に赤字で現代語訳が付されいるので、便利でした。毎日、朝5時から2時間ほど、出勤前に読み進めました。 読んだページ数を積み上げてグラフにして、源氏物語という巨大な峰を登山しているイメージで、毎日、こつこつと読み続けていきました。 樹々の中に分け入りながら、ときどき解説書も読んで、その山の全体像をつかむようにしました。 結局、新潮日本古典集成全八巻中、六巻まで読むことができました。ま

          挑戦『源氏物語』原文読み

          神島〜万葉集「挽歌」の詠まれた地

           万葉集巻第十三に、備後(きびのみちのしり)の国の神島(かみしま)の浜にして、調使首(つきのおみのおびと)、屍(しかばね)を見て作る歌があります。長歌と反歌、合わせて九首です。 最初の長歌は次のとおりです。(伊藤博釋注『萬葉集』七より引用) 三三三五 玉桙の 道行く人は あしひきの 山行き野行き 直海(ひたうみ)の 川行き渡り 鯨魚(いさな)取り 海道(うみぢ)に出でて 畏(かしこ)きや 神の渡りは 吹く風も のどには吹かず 立つ波も おほには立たず とゐ波の 塞(ささ)

          神島〜万葉集「挽歌」の詠まれた地

          「百人一首─ 編纂がひらく小宇宙 」 田渕句美子 岩波新書 新赤版 2006

          初学者にもわかりやすい。論理の筋道が明解で、名探偵の推理を聞いているようだ。 百人一首の歌の新解釈も紹介されていて非常に興味深く読んだ。とくに「末の松山」の解釈に興味を引かれた。貞観大地震の際に、ここを津波が越えたのではないか、そのことが人々の記憶に残されて、本歌の古今集の歌に譬喩として使われたのではないか、と。なんと、確かにありうることだ。 終章では、定家が百首をどのような基準で撰んだかを考察しているが、著書は、その中に俊成卿女や宮内卿が無いのは残念!と個人的感想を述べ

          「百人一首─ 編纂がひらく小宇宙 」 田渕句美子 岩波新書 新赤版 2006

          「藤原定家 『明月記』の世界 」 村井康彦 岩波新書 新赤版 1851

          著者がこの本を90歳にして世に出されたたことに感服する。各所の写真も著者の撮影とあり、そのフットワークも驚くべき軽さ。膨大な情報量の『明月記』を読み込んで、定家の実像に迫る作業は並々ならぬ熱量が必要だったという。それを見事にやり遂げられている。 私は、この本を読む前に、田渕句美子先生の『新古今集 後鳥羽院と定家の時代』と『百人一首──編纂がひらく小宇宙』を読んで、和歌集編纂者としての冴え渡る定家の姿に触れてきた。そして、この度、この本を読んで、定家の別の側面が非常にリアルに

          「藤原定家 『明月記』の世界 」 村井康彦 岩波新書 新赤版 1851

          「本を千年つたえる 冷泉家蔵書の文化史 」 藤本孝一 朝日選書

          冷泉家蔵書の調査研究に直接携わり、その全体像を解明した中心的な研究者による解説。The 冷泉家蔵書!。これ以上の解説書はない。守り伝える心に感動した。 日本の宝、冷泉家御文庫、よくぞ残してくれた!と思う。冷泉家は幾度も火災にあったそうだが、文書を納めた土蔵がこの宝を守ったという。 相続においても、定家の嫡子・為家から、もしも為氏に財産が引き継がれていたら、今ごろこの至宝は散逸していたに違いない。さらに、財産を引き継いだ定家の孫・為相が原本を鎌倉へ持参していたら、散逸の憂き目

          「本を千年つたえる 冷泉家蔵書の文化史 」 藤本孝一 朝日選書

          『和歌の黄昏、短歌の夜明け』 島内景ニ 花鳥社 

          著者は、NHK古典購読というラジオ番組で、『源氏物語』の名場面を、『湖月抄』をもとに読み解く、というテーマで現在解説されている。 なぜ、いま『湖月抄』なのか? 著者の思いのベースになっているのが、この本にあるのだと思う。 読み始めは、過激な言葉が並び驚いたが、 次第に著者の意図するところが見えてきた。過激なのは、著者の言葉ではなく、著者が批判の対象としている本居宣長以降の源氏物語解釈の流れだということが、論が進むにつれて、初学者の私にも少しずつわかってきた。 北村季吟こそが

          『和歌の黄昏、短歌の夜明け』 島内景ニ 花鳥社