出したもの勝ち


とある山に登って帰りのケーブルカーに乗る前の事。

午後2時だっため帰る人も多く、長蛇の列だった。

山の中だからか係員がいない。観光客が自主的に列を作っている。


ちょうど建物のドアの近くで並んでいる時だった。

建物の中からおばさんとおじさんが出てくる。

そして、おばさんがこれはもう大きな声で


「ねぇ!お父さん!ここよね!ここだったわよね!」


と私たちの前にいたカップルあたりで、叫びながらゆっくりと歩いてくる。

まさかカップルの前に入るのか!?と思っていたら

こっちへ移動してきた。(カップルの彼氏さんは190cmぐらいの身長)


そしておばさんはもう一度


「あ!お父さん!ここだったのね!よかったわー!」

と大きな声で叫び、私の前に入ってきた。

待ち合わせをしていたかのような口ぶりで。


私の相方は特に何も言わない。何も言わないというより唖然としている。

自然と私の口が開いてしまった。

「え、違いますよ」

我に返ったのか、相方も即座に相槌をうつように

「そうだよ。こっちは並んでいたんだよ」

と言う。


おばさんは移動しながら

「やだーこっちだったわよー」

と言い、私たちの後ろに入っていく。

振り返ると、後ろにいたおばあちゃんたちは黙っていた。

そのおばさんの大きな声しか聞こえない。

私の口が開き、指をさす。

「後ろはあっちです」

後ろの人たちに私の声が聞こえたかどうかわからないが

たぶん、後ろのおばあちゃんたちとその後ろの人には聞こえたと思う。

最後尾の方へ指をさしたから、何となくわかった人たちもいると思う。


おばさんはまたまた大きな声で

「こんなに並んでいるの!?やだぁーーー!

 もう!だから言ったでしょ!お父さん!もう!やだぁーー!」

とおじさんを連れて後ろへ行ってしまった。

(最後まで見ていないので並んだかどうかはわからない)


ずっと黙っていた彼女が彼氏に

「なんかバケモノをみたねー」



ケーブルカーに乗ったあと車の中で相方にさっきのことを聞いてみた。

相方曰く「急に大きな声で待ち合わせをしたような感じで来たから、考えが停止した」とな。

あの時私は、過去の経験で某有名テーマパークで女子高校生二人が同じような感じで割り込みしてきたことを瞬時に思い出していた。

だから、あの時は出来なかったことが今回は出来た。


後ろのおばあちゃんの前に割り込もうとした時に出た言葉は

非常にイライラしたため。


なんでこんな態度の人間が勝っていける世界なのかと。


なんで「♡」はスキという表現になったのだろう。