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なんでもやってみたい!

和歌山日赤病院に就職してからは
それはそれは目が覚めるような楽しい
また、厳しい厳しい毎日でした。
でも今思えば「水を得た魚」になった瞬間だったのだと思います。

「誰か、〇〇やるから手伝って」と婦長さんが言うと
すかさず
「やらせてください!」と誰よりも早く手をあげるのは私でした。
自信があるわけでもなんでもなく
ただただ好奇心の塊となっていました。

ある日盲腸の手術の前の処置として剃毛をすることになりました。
私は初めて患者さんに剃毛をするので、前もって何度も練習して、とても緊張しながら当日患者さんのところに行きました。

患者さんは若い男性でした。
「今から剃毛をします」と練習通りに始めました。

ここからは皆さんのご想像にお任せします。

初めてのことですので、なかなか上手くできません。
でも、皮膚を切ってはいけないし、綺麗に剃らなくてはならないし
大切な所をあっちに倒し、こちらに倒し、上に倒し、下に倒し何度も何度も丁寧に処置しておりましたら、患者さんが突然ガバッと起き上がったのです。
真っ赤な顔をしていらっしゃいました。

私はびっくりして
「危ないですよ!剃刀を使ってるのに!」と真顔で怒りました。

どうにか処置を終えてナース室に戻り
「もう、びっくりしました!急に患者さんが起き上がって、切るとこでした!」と、そこにいたドクターに言うと

ドクターは笑いながら
「そうかあ、切らなかったか?それなら良かった」と
大笑いしておりました。
そして婦長さんもクスクスと笑っておりました。

私は何がそんなに可笑しいのか?
全くわからず、とりあえず初めての処置を終えたことに大満足しておりました。

その後、処置の洗い物をしていると
ドクターが婦長さんに
「ヤマちゃん(私の事です)にはもっとちゃんと色んなこと詳しく教えたらな、あかんで」と
また大笑いしながら行ってしまいました。
婦長さんは
「わかりました」と答えていらっしゃいました。

私は本当に田舎者でウブで
男性のそんなこともわからない新米ナースでした。

そんなことより
なんでも「やってみたい!」「みてみたい!」
その気持ちが優っていたようです。

なんでも「やりたいです!」と手をあげるので
そのうちに
「やまちゃんのおるところでは新しいことはやらない方がいいなあ。なんでもくっついてくる」とドクターに笑われるようになってしまいました。

でも、やはり懲りずに
なんでも
「見せてください!」
「やらせてください!」を続けておりました。

 つづく

   キミちゃんより

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