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各国の無香料ポリシー【カナダ】ケベック環境保健協会ASEQ-EHAQ編①

ASEQ-EHAQ(ケベック環境保健協会)は、2004年に設立された非営利慈善団体です。活動目的は、ケベック州において、化学物質過敏症・環境不耐症の医療状態と障害を持つ人々が、すべての空間で公平性・包摂性・アクセシビリティを実現するための支援をすることだそうです。化学物質過敏症の支援団体ですね。
また、MCSによって引き起こされる孤立と排除を解消すること、手ごろな価格で安全な住宅を提供すること、しばしばMCSと合併することが多い慢性疲労症候群や線維筋痛症の患者支援も活動内容に入れています。

ASEQ-EHAQの名称の意味
日本語に直訳するとケベック環境保健協会
カナダの公用語がフランス語と英語なので、両方の略称をつなげてこうなっているようです。
【ASEQ】
L'Association pour la sante environnementale du Quebec(フランス語)
【EHAQ】
Environemental Hearth Association of Quebec(英語)


こちらの団体が主導して、ケベック州やカナダ全域に対し、医療機関に無香料ポリシーの採択を求める活動をしています。

まずは主文と言いますか、ポリシーの紹介文です。さすがMCSの団体なだけあって、言いたい事をすべて言語化してくれている感じです。
日本において医療の無香化を求める際にも非常に参考になりそうな内容でしたので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。
今回も長いので、何回かに分けて紹介いたします。

元記事はこちら↓↓↓

では、以下訳文です。



ケベック州の医療機関無効化へのケース提案


無香料ポリシー:なぜ?どうやって?ASEQ-EHAQ



ケベックの医療を無香料化するための取り組み

香料とその健康への影響とは?

フレグランス(訳注;食品香料に対して香粧品香料のことであるが、ここでは以下一括して香料と記す)は、特定の香りを作り出すための、無数の化学物質の化合物です。香料は、香水、石鹸、洗浄用剤、芳香剤、洗濯用剤、パーソナルケア用品などに含まれていますが、これらに限らず何千種類もの消費者用品に使用されています(2009年Caress & Steinemannらによる)。香料の製造には、最大4000種類もの原料が使用されます。(2011年 IFRA)。1 つの合成香料には最大500種類の成分が含まれ、その 95% は石油ベースの揮発性有機化合物 (VOC) であり、簡単に揮発し、私たちが呼吸する空気中に拡散します (MNT、2008)。自社製品のフレグランスを作るために使用される特定の化学物質は企業秘密とされ、製造元に開示を義務付ける規制はありません。

ほぼすべての消費者製品に使用されている化学香料を、私たちはみんな、日々吸い込んでいるのです。いくつかの研究で証明されていますが、これらの製品のうち多くには毒性があり、健康に有害な影響を及ぼします (2001年Rastogiら;2002年 Temesváriらによる)。例えば、フタル酸エステルは内分泌かく乱物質として知られているにもかかわらず、多くの香水で、香りに持続性を持たせるために、高い頻度で使用されています(2017年Al-Salehらによる)。化学分析により、一部の成分が発がん性物質、発達阻害要因、または神経毒性をもつものであることが明らかになっています。香料を製造するのに使われているいくつかの成分は、喘息、湿疹、多種化学物質過敏症、副鼻腔炎、片頭痛などの多くの疾患の症状を悪化させたり、引き起こしたりする懸念があります。

カナダ人の約 3 分の 1 は、香水、香料、その他の香り付き製品に曝露した時に何らかの症状を経験しています (2007年Searsら;2018年 Steinemannらによる)。化学製品の多様性と各個人の具体的な反応を考えると、香り付き製品への曝露により、多岐にわたる異なる症状の出現が予想されます。乳児は、下痢、嘔吐、耳痛、時には咳や風邪、発熱、喘鳴、息切れ、発疹などの重篤な症状が出る可能性があります(2003年Farrow らによる)。成人の場合の症状は多岐にわたり、個人差もあります。香料への曝露によって引き起こされる症状には、頭痛、めまい、集中力の低下、倦怠感、頭がボーっとする、またはボーッとする感じ、疲労、流涙、鼻水、鼻づまり、副鼻腔症状、喘鳴、息切れ、または発疹などが含まれます (2009年Caress & Steinemannら;2005年Elberlingら; 2014年Silva-Néto ら; 2013年Uter らによる)。

医療施設における無香料ポリシー

香料が健康に及ぼす悪影響の知見が広まるにつれ、世界中の多くの医療施設では無香料化が進んでいます。カナダのいくつかの政府施設や病院施設では、訪問者、患者、医療専門職員、その他のスタッフに対し、香料を含む製品の使用を控えるよう促す政策がとられてきています。

フレグランスを含む製品には、デオドラント用品、ヘアスプレー、シャンプー、コンディショナー、石鹸、アフターシェーブ用品、香水、オーデコロン、洗浄剤などが含まれます。香料のない環境を確立することは、真新しい文化というわけではありません。オンタリオ州、ノバスコシア州、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、マニトバ州、サスカチュワン州、ニューブランズウィック州、プリンスエドワード島、ニューファンドランドアンドラブラドール州、ユーコン準州、ノースウェスト準州などで、評価されつつあるのです。

私たちはほとんどの時間を屋内で過ごしますが、屋内では空気環境が、屋外の空気環境より 2 ~ 5 倍汚染されている可能性があります (1987年環境保護庁 - EPA)。香料は最も一般的な室内空気汚染物質の 1 つであり、室内空気質を正常に保つにはこれらの有害物質が排除された状態を維持する必要があります。

ケベック州の医療施設が、病人や脆弱な人々に対応するために無香料政策を導入することは、これらのような理由から重要なことです。病気が悪化することを期待して病院や医療専門家を訪れる患者はいません。医療従事者は、患者、同僚、また場合によっては自分自身に、意図的に危害を加えるようなことは何もしません。しかし、医療従事者が香料を含む製品を自分の肌、髪、衣服に使うことを選べば、彼らは実際に、それに値する行動をしているかもしれないのです。香料をつけるかどうかは、誰もが自ら選択できます。しかし香料で悪影響を受ける人は、曝露にあう時に、選択の余地も警告すらもないのです。これらの製品は社会一般で、嗜好のために使われます。しかしそれに悪影響を受ける人々は、そのために社会的に孤立を余儀なくされ、苦痛を受けます。これらの人々にとって、基本的なサービスを受ける事は困難または不可能になってしまいます。心肺疾患を持つ患者に至っては、予測不可能な香料への曝露によって重篤な状態に陥るおそれすらあります。

カナダ医療協会誌(訳注;Canadian Medical Association Journal =CMAJ) の 2015年 11 月 3 日の社説にあるように、「病院の外では許されても、病院内では許されない行為が数多くあります。その 1 つは、体に人工的な香料を纏うことです。(略)私たちの病院で人工的な香料を容認し続けることを正当化できる理由はほぼ皆無です。(略)病院内の環境から人工的な香料を排除する方針を統一し、患者、スタッフ、訪問者の安全を同様に促進する必要があります。」

喘息誘発物質、つまり喘息を誘発したり喘息の発作を引き起こす、香料に含まれる物質は、病院スタッフにとっては特に懸念すべきものです。職業性喘息の報告率は、病院において最も高いとの調査結果があります(2005年Pechterらによる)。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がその無香料ポリシーで述べるように、「香料は専門的な作業環境には不適切であり、香料を含む一部の製品の使用は化学物質過敏症、そしてアレルギー、ぜんそく、慢性頭痛を持つ労働者の健康に悪影響を与える可能性があります。」 

医療施設は病気にかかった人にとって安全な避難所であるべきです。治療を受けること以外は何も気に病むことなくに行ける場所であるべきです。病院環境は、特定の病気に関係なく、すべての患者に対応可能である必要があります。患者の健康と福祉を最優先するべきなのです。

したがって、洗浄用品を含む香料入りのすべての製品は、医療現場から排除する必要があります。私たちは、医療現場に香料が入りこむ余地はなく、良質で香りのない空気でいることは、基本的人権に含まれるものであると強く主張します。したがって、私たちはケベック州のすべての医療従事者と病院に対し、空気を清浄にする基本的な権利に従って無香料であるよう強く求めます。

このウェブページは、意識を高め、医療施設における無香料ポリシーの採択を奨励し、支援することを目的としています。これは一見困難に感じるかもしれませんが、医療施設が成功するための効果的な方法は存在します。それは特に、政策を実施して成功した他の病院に学ぶことです。




何も言うことはありません。というより、もろ手を挙げて平伏したいくらい。自分が医療の場の香害に対して言いたいこと、ほぼすべて言及してくれてます。
強いて言えば、喘息や心配疾患と化学物質過敏症以外の、妊婦さんや慢性頭痛、化学療法中の患者さん、神経疾患、精神疾患や、感覚過敏を含む障害特性をもつ方々にも言及してほしかったくらい。

あとは個人的に、文章の問題なんですが。

No patient goes to a hospital or health-care practitioner expecting to be made sicker.
(病気が悪化することを期待して病院や医療専門家を訪れる患者はいません。)の一文を、
「病院に来る人を病気にさせてちゃ世話ねぇよ」
と訳したかったくらい。
だってほんとにそういう意味合いの慣用表現なんだもん。けど前後の文脈おかしくなるし、なるべく意訳せず忠実にと決めてるからあきらめた。あきらめたけど汲み取ってください。そういう意味です。マジで。

カナダの香害事情と無香料ポリシーの進捗などの関連記事を読んでいると、なんかカナダの香害事情というか企業側の事情は、ひょっとするとアメリカよりは日本に近いような気がしますよね。表示の義務とか、使える香料の種類とか、なんか日本と似ている気がします。
その代わり、香害反対というか無香料ポリシー推進運動の進捗状況は日本の比じゃないですけどね。

以前の記事で紹介しましたが、このHPにpdfファイルがリンクされていて、化学物質過敏症患者が病院の香害に関してあげた声と、無香料ポリシーを採択している病院一覧表が掲載されていたんです。その無香料ポリシー採択炭の病院数が、300以上でした。
元記事から飛んで確かめてみてください。自分が数えたらたぶん317。確実に300以上はあります。

この記事はまだ続きますので、また訳を紹介します。
文中にある医療雑誌の記事なんかもものすごくよかったです。


2024年 4月


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