各国の無香料ポリシー【カナダ】ケベック環境保健協会ASEQ-EHAQ編②我々の病院に人工香料が入り込む余地はない
前回に引き続き、カナダのケベック環境保健協会=ASEQ-EHAQによる医療機関への無香料ポリシー採択を求めるHPの翻訳を掲載します。
元記事↓↓↓↓↓
二番目の項目は”Canadian Centre for Occupational Health and Safety"になりますが、これはカナダ労働安全協会のHPの無香料ポリシー推奨のページで、すでに紹介済なのでその次。
"Artifical scents have no place in our hospitals"に行きます。
これだけ訳してみると…
「我々の病院に人工香料が入り込む余地はない」
表題だけでシビれますよね。
前回の紹介文にも一部掲載されている、カナダ医療協会誌(訳注;Canadian Medical Association Journal =CMAJ) の 2015年 11 月 3 日の社説全文紹介ですね。
すごく良い内容ですので、これもぜひ多くの方にお読みいただきたいです。
では、以下訳文です。
元記事(pdfファイル)↓↓↓
https://aseq-ehaq.ca/wp-content/uploads/2020/07/artificial-scents-hospitals.pdf
我々の病院に人工香料が入り込む余地はない
病院の外では認められても、病院内では認められない行為がたくさんあります。その 1 つが、ひとの体に人工的な香料を使用することです。人工的な香料は私たちをより魅力的にするように設計されていますが、それらに脆弱な状況にいる人々を、意図せず害する可能性があります。
広く一般を対象とした大規模な調査によると、約30% の人が、他人が身に着けた香料にある程度敏感であると報告しています。喘息患者の 27% は、香料にさらされることで症状が悪化するとのことです(※1)。喘息は主に人工香料によって悪化する場合があるということが、新たに分かっています(※2)。これは、喘息やその他の上気道や皮膚の過敏性をもつ、脆弱な状況にある患者が集中する病院では特に懸念されるべきことです。これらの患者は、スタッフ、他の患者、訪問者からの人工的な香料に意図せずさらされる可能性があり、その結果、症状が悪化するおそれがあります。患者、家族、救急救命医が述べるように、発作はまったく突然に起こり重篤な状態になる場合があります。私たちの病院で人工的な香料を容認し続けることを正当化できる理由はほぼ皆無です。
連邦および地方の人権法では、職場で香料に敏感な従業員に対する配慮が求められていますが、病院や診療所の患者にはそのような配慮は求められていません。一部の労働者は、香料に関する職場の方針の変更を求めて会社に対する裁判を起こし、勝訴もしています(※3)。職場では、影響を受けやすい人は同僚やマネージャーに直接話したり、香料のない作業環境を整えたりすることができます。これは法律で認められています。しかし、患者たちにとってはそのような機会は存在しません。
読者の多くは人工的な香りに対する過敏症が存在することに懐疑的かもしれませんが、これらの製品に対する反応が基本的に存在するという知見は得られてきています。喘息の負荷の半分近く(47%)は、アレルギー性の好酸球性メカニズムに起因しており、残りの多くは、刺激物によって引き起こされる気道の好中球性炎症によるものと考えられています。喘息患者に関しては、アレルゲンにカテゴライズされていないさまざまな刺激によって引き起こされる症状が報告されています(※4)。これらの物質には、タバコの副流煙、漂白剤などの洗浄液、香水、その他の強い臭気が含まれます。これらの刺激物は、発症の原因としてではなく、ただ病気を悪化させることがある程度のものと考えられていたため、喘息の重要な誘因としては長い間注目されていませんでした。
有害な刺激に反応して咳や気管支けいれんを引き起こす、気道の感覚神経上にある受容体群が確認されています。これらの受容体(一過性受容体電位チャネル※訳注;おそらくTRPV1の事ですね)は、熱、冷たさ、浸透圧勾配、酸化剤、カプサイシン、その他の物質を認識して活性化される可能性があります。結果放出される神経ペプチドは、気管支収縮や粘液分泌などの即時的な影響を引き起こす可能性があります。二次的な神経性炎症は、曝露の影響により長引かされる可能性があります(※5,6)。報告によれば、香料への曝露によって症状を経験するリスクは、喘息の特徴である気道過敏症の存在と喘息自体の重症度に関連していると報告されています。全症例に当てはまるわけではありませんが、いくつかの研究ではアトピーとの関連も報告されています(※7)。それにもかかわらず、喘息患者の中には客観的に気道が狭くなっていないにもかかわらず重篤な症状を経験する人もいます(※8)これはおそらく気道の求心性神経活動に由来する感覚を反映したものだと考えられます。
香料に対する過敏症の根底にあるメカニズムについては学ばなければならないことが多く残されていますが、病院内で予防措置を講じるだけの理由に相当する事柄は十分にわかっています。多くの公共の場所では、無香の環境が推奨されています。病院によってはそうしているところもあります。しかし、これはカナダのすべての病院がとっている方針ではなく、病院の認定基準でも必須とはされていません。喘息の有病率の高さとその健康と生産性への悪影響を鑑みれば、医療機関内において呼吸する空気についてさらに考慮する必要があることは強く主張されるべきです。人工香料のない病院環境が統一方針となり、患者、スタッフ、訪問者の安全を同様に促進する必要があります。教育および昇進プログラムはこの実践にある程度の影響を与えるため、これらのプログラムも認定基準の一部に含めるべきです。これが実施されるまで、特に脆弱な状態にある患者らが利用する待合室などでは、個々の病院が率先して主導する必要があります。
以上です。
シビれませんか。シビれますよね。
我々の病院に人工香料が入り込む余地はない
これ、香料が悪影響をもたらす疾患として、化学物質過敏症ではなくて呼吸器疾患、アトピーなどを主眼に置いてますよ。そうあるべきだと思います。香害は、あらゆる疾患にとって害になるんです。
そしてぜんそくやCS患者だけじゃないですよね、病院に来る人たちは。
妊婦さんや消化器疾患、化学療法中の人には、ニオイだけでも吐き気を誘発するかもしれない。(五感刺激)
感覚過敏を持つ神経系疾患や精神系疾患の人には、成分が感覚器負荷になる(五感刺激)。神経系疾患でもてんかんの場合は、カンファーを含む香料が発作誘発のトリガーであると解っている(成分の作用)。
慢性頭痛の人に対しても、ニオイだけで発作のトリガーになる(五感刺激)。
そして化学物質過敏症も。
これ、態々研究しなくても日本の医療現場では広く知られていたことでした(化学物質過敏症以外)。それがなぜ、ほんの数年から十年の間に、化学物質過敏症だけの特殊な問題にされているんでしょうか?
非常に不可解です。まるで狐にでもつままれてるような感覚です。
だって習ったもん。
学校でも、あちこちの実習先でも、新人の頃に先輩にもです。
その人たち、マジでどこ行っちゃったんですか?
そして実際、香料で体調を悪くしている患者さんを再三見ました。香害前の話ですよ。そして化学物質過敏症の患者さんの話じゃないですよ。
今の香害のようなどぎつい香りじゃなく、当時のほのかな香りにすら、体調不良を誘発される患者さんはいるんです。
なんで今、日本の医療現場はこんな、まるで化粧品売り場かコインランドリーみたいなニオイになってるんですか?
絶対に放置していい問題ではありません。
2024年 4月