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凛々しい五月人形顔・村松開人は球界の「顔」になれる男だ!

「男は顔じゃないよ、ハートだよ」と書いたのは、作家の安部譲二である。また1980年代を代表するアイドル・田原俊彦もヒット曲「誘惑スレスレ」で「男は顔じゃないよ ハートさ」と同じことを歌っている。
 なるほど、確かに “イケメン” というだけで持て囃されるのはせいぜい20代までで、それ以降は年齢を重ねるにつれて顔よりも中身ーーつまりハートが問われるようになるのは、なんとなしに分かる気がする。
 こないだ伝説の深夜番組「水曜どうでしょう」の初期の回を観ていたのだが、駆け出し時代の大泉洋はお世辞にもモテるタイプとは言い難く、共演者に「ぶおとこだな、お前」と笑われる始末。
 その「ぶおとこ」が20年後には恋愛映画で小松菜奈の相手役を演じるのだから、やはり男は顔の造形よりもハートなのだなと、妙に納得した次第である。

厳しい競争を生き抜くうえでの物差しとなる「プロ野球顔」

 とはいえ、人の印象を決定づける上で、見た目が重要な要素であることに疑問を挟む余地はない。たとえば、今秋のドラフト会議で指名した顔ぶれを見て、「この選手は活躍しそうな顔だな」と、プロ選手としての資質をルックスから読み取ろうとしたのは私だけではないはずだ。
 この場合の「活躍しそうな顔」というのは、イケメンかどうかではなく、厳しいプロ野球の世界で生き残れるだけの度胸が備わった顔つき、と言い換えることができる。
 何十年も前の話だが、星野監督は「ええ顔しとる」と薩摩隼人を絵に描いたような井上一樹のルックスを激賞し、また森野将彦がブレークした頃、解説の山田久志は「いい顔になった。勝負師の顔だね」と褒めていたのを覚えている。そう言う星野、山田両氏もいかにも屈強で男らしい顔つきの御仁だ。
 ルッキズムだとお叱りを受けるのは承知のうえで申すならば、どうも球界には厳しい競争を生き抜くうえでの物差しとなる「プロ野球顔」というのが、ある気がしてならない。

川上憲伸を彷彿させる五月人形顔

 その点、ドラゴンズのドラフト2位・村松開人は、パッと見た瞬間にプロでの活躍を確信できる「顔」の持ち主だ。
 プロ野球界の最大派閥たる明治大学で主将を務め、本年度リーグ戦の春・秋連覇を達成。三振率約5%という驚異的なミート力と高い出塁能力のみならず、長打率と打率の差から純粋な長打力を測るISOという指標でも、通算.148と一定以上の数値を記録するなど、いわゆる足で率を稼ぐタイプではなく、パワーも併せ持った選手であることが分かる。
 奇しくも、マスター阿部寿樹のトレード移籍により二塁が事実上空席となったため、来季は村松を筆頭に石垣雅海、高松渡、田中幹也、新外国人のオルランド・カリステによる横一線のポジション争いが予想される。村松自身も「自分がやるしかないです」(11月21日付「中日スポーツ」)と決意を表明。2017年の京田陽太以来となる新人開幕スタメンを射止める可能性も高そうだ。
「売れる前から知ってた」とマウントを取りがたがるバンド好きの中学生みたいでアレだが、何を隠そう私は以前から村松には一目置いており、ドラフト2位で名前が呼ばれた瞬間は、まるで我が事のように小躍りしたものだ。
 上述した打者としての能力はもちろんのこと、村松はとにかく顔がいい。日焼けした褐色の肌に、意志の強さを感じさせる上がり眉と切れ長の目。まるで五月人形の如き凛々しい顔の作りは、明治大学の大先輩・川上憲伸を彷彿させる。
 また、角度によっては大島洋平や巨人・丸佳浩に見えることもあり、なにかもうプロで10年メシを食っているかのような貫禄すら漂わせている。まだ22歳ながら、名門チームを主将として牽引してきた自信と誇りが表情に張り付いているようだ。
 今年2月に右膝を手術した影響でほぼ全休(3打席のみ出場)となった春のリーグ戦。選手として輝くことはできなかったが、チームメイトに寄り添う献身的な姿勢に多くの選手が「村松に天皇杯を持たせたい」と口を揃えたという(「明大スポーツ」第523号)。
 誰もに愛され、慕われる人徳の持ち主。加えて明治の主将と言えば、古くは星野仙一、高橋三千丈、川上、そして柳裕也と脈々と引き継がれてきた「安心・安全」の系譜でもある。スタープレーヤーになるだけではなく、数年後には選手会長やキャプテンを務めている姿が容易に想像できる。
 さらに25〜30年後、ドラゴンズを率いる「村松監督」の姿まで瞼に浮かぶのは、さすがに贔屓の引き倒しだろうか。

球界の「顔」になれる

 立浪監督が自ら神宮球場へ赴き、直接視察した上で「いい選手やと思いますよ。ドラフト上位でかかる選手かなと。スイングがいい。見たら分かる」(10月17日付「デイリースポーツ」)と絶賛したほどの逸材。唯一の不安材料は故障がちなことだが、高校3年時の骨折、今年2月の右膝手術の経験から、故障を乗り越える強さを持ち合わせていることは実証済みだ。
 完成形は本人も目標に掲げる大島洋平か、あるいは大学の先輩にあたる楽天・島内宏明かーー。ドラフト2位という順位は決して過大評価ではない。村松開人はドラゴンズの、いや球界の「顔」になれる男である。

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