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カスタマーサクセスにどのような人材を採用すべきか?

【株式会社セイルボートは2024年4月1日、「株式会社キマルーム」へ社名変更しました。本記事は社名変更前の記事となります。】

はじめに

皆さん、こんにちは。
株式会社セイルボートでカスタマーサクセスを行っているHです。

突然ですが先日、新卒で採用活動をしている若い方から友人を通して、「カスタマーサクセス職を希望しているのだが、就職活動に関して相談に乗ってほしい」という依頼を受けました。

カスタマーサクセスという言葉が日本のSaaS界隈で使われ始めてからもう5,6年経ちますが、ついに自分の身近でカスタマーサクセスを希望する新卒の人が現れるなんて、と非常に嬉しく感じました。

一方で、大企業から中小企業まで含めて、まだまだカスタマーサクセスの立ち上げ段階の企業さんが多いのではないでしょうか。その際の多くの企業さんに共通する悩みとして、どういった人材を採用すれば良いか、または社内の中から引っ張ってきたら良いかが分からない、といった採用の悩みがあると思います。

本記事では、前職で5年間SaaS企業(先月東証マザーズに上場)で、カスタマーサクセスチームの立ち上げに携わり、昨年からはマネージャーとしてセイルボートのカスタマーサクセスチームの立ち上げに携わっている経験をもとに、どういった人材をカスタマーサクセスとして採用していくべきか、また採用の際に気を付けるべきポイントについての私の考えをまとめました。

結論から言うと、

「会社(またはチーム)が置かれているステージによって、カスタマーサクセス人材を採用する目的は異なることから、その時々の目的に応じて必要なスキルとマインドセットを持った人材を採用すべし。」

が現時点の私の結論です。

では、本編に入る前に、昨年発売されてカスタマーサクセスの教科書となりつつある、『カスタマーサクセス・プロフェッショナル-顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもらたす仕事のすべて』の第2部第3章「カスタマーサクセスマネジャーに求められる3つのコアコンピテンシー」より、カスタマーサクセスに必須の3つの能力を見ていきましょう。

スキル①知識レベルの高さ(業界、プロダクトに関する高いレベルの知識)
スキル②課題解決能力
スキル③カスタマーとの関係構築

①の知識レベルの高さについては、入社前に業界に関する知識があれば言うことなしですが、例えそのような知識がなかったとしても、学習姿勢がしっかりしている人であれば、入社してからでもキャッチアップできると考えられます。

②と③についてはやや抽象的ではありますが、しかし、カスタマーサクセスに必要なスキルとして異論を唱える人はあまりいないと思います。

上記の3つのスキルは、カスタマーサクセス担当者にとって必須のスキルではありますが、一方で上記の内容だけではやや漠然としており、採用候補者を絞っていく上ではもう少し具体的にカスタマーサクセスに求める要素を絞っていく必要があるように思います。

そこで私は、会社またはチームが置かれているステージごとで、必要になってくるカスタマーサクセス人材像をまとめてみることにしました。

①サポート業務中心時期

プロダクトが売れ出して、顧客からコンスタントに問い合わせが入るようになり、最初は営業担当者が片手間に対応していたのが、だんだんと回らなくなってくる。そこで初めて、カスタマーサクセスチームを立ち上げる企業さんも多いと思います。

この段階では、プロダクトが未熟なケースも多く、新リリースなどがある度に問い合わせが殺到してしまうケースなどもあると思います。

そんなステージのカスタマーサクセスチームでは、いかに顧客を怒らせないように、丁寧に、しかし多くの問い合わせ対応をさばいていくかが重要になります。また、何度も来る問い合わせなどについては、マニュアル化して効率化する、という考え方ができる人が好ましいでしょう。

そのため、この段階で求められる人材というのは、以下の3つの要素を持つことが望ましいと考えられます。

①共感力がある。(お客様に寄り添ってサポートができる。)
②丁寧なコミュニケーションができる。
③対応履歴の記録やマニュアル作成などのルーティンワークが苦にならない。

特に、①はその人の生まれ持った資質が大きく影響するため、共感力をあまり持っていない人に共感力を求めることがないように、面接時にしっかりと人柄を見極めることが大切です。

一方で私は、一緒に働いているサポートメンバーの方がたくさん辞めていくのを目にしました。こういった人材に長く勤めてもらうには工夫が必要です。何故なら、彼ら(彼女ら)は、共感力が高いという長所がある故に、顧客からのクレーム等が続いてしまうと、顧客からの怒りをダイレクトに受け止めてしまい、仕事が辛くなってきてしまうからです。

そのため、まずは採用時に、その人のストレス耐性を観ることは重要です。前職を短期間で辞めていないかや、今までで一番辛かった経験をどう乗り越えたか、といった質問をすることで、その人のストレス耐性を見極めた方がよいでしょう。

また、その方が入社してからは、マネージャーの力量が重要になってきます。何故なら、共感力の高い方は、チームの雰囲気にも大きく影響されるからです。チームの雰囲気が常に悪いと、人一倍に負担がかかり、仕事に集中できなくなるのが共感力の高い人の特徴です。

そのため、マネージャーは、チームの雰囲気作りのために、誰でも気軽に意見を言ったり、失敗することが許される環境を整えることに徹するべきです。定期的な1on1を設けることも有効です。

②オンボーディング型化時期

サポート業務が回るようになり、ある程度顧客からの問い合わせ対応がこなせるようになってきたら、今度は高いチャーンレートを何とかしたいと考えるようになります。

そして、チャーンレートを下げる手段を色々と考えるうちに、オンボーディングに力を入れることが最もインパクトの大きい施策であるという考えに行き着きます。

次々にくるオンボーディングを成功させるためにはどうすればよいか?と考えたときに、誰がオンボーディングを担当しても均一な品質を担保することが重要であることに気が付きます。

そこで、オンボーディングや、オンボーディング後に発生する伴走プランの型化に注力するステージになります。この段階で必要な人材というのは、成功事例を分析し、それをヨコテンできるように資料や行動管理シートを整備していけるスキルが求められます。

私個人の意見としては、このようなポジションに向いている人というのは、前職で大企業や、ある程度スケールしたベンチャーで働いていた人が望ましいと考えています。

何故なら、そういった企業で働いていた人たちは、業務が型化されて、誰が担当しても上手く回すことができる状態というのを経験してきているため、型化のイメージがつきやすいからです。

一方で、そういった人材を採用する上で気をつけるべきポイントは、前職である程度、型化されて役割分担がはっきりしている職場で働いてきた習慣から、自分の役割以外の仕事を避けたがる人が若干います。

しかし、まだチームとして未熟なこの段階では、自分の役割以外の仕事はしません、という態度だと業務が回っていきません。そのため面接の際に、自分の役割以外でも必要であれば積極的に仕事を拾っていける人かを確認しておいた方がよいでしょう。

③ハイタッチ注力時期

型化が進み、オンボーディングの品質が担保されるようになってくると、チャーンレートが劇的に改善されてきます。そうなってくると今度は、単価の高いハイタッチ顧客の1社1社のチャーンが目立ってくるようになります。そこで、ハイタッチ顧客のオンボーディング、アクティブ化にさらに力を入れていくフェーズに入っていきます。

ハイタッチ顧客の対応は個別性が高く、型化が難しい部分が多いと思います。そのため、担当者個人の力量がその顧客の契約継続に大きく影響を与えます。まさに、冒頭で紹介した「カスタマーサクセス・プロフェッショナル」に書いているコアコンピテンシー、知識レベルの高さ、課題解決能力、カスタマーとの関係構築の3つのスキルが求められる仕事です。

このような人材を採用するのであればやはり、自社がプロダクトを提供している業界に詳しい、コンサルタントまたは法人営業の経験者などが望ましいと思います。

こういった人材は、中々採用が難しく、また仮に採用できたとしても、その高いスキルと豊富な経験、人脈で、すぐに他の会社に転職してしまう可能性が高いでしょう。

それでも、少しでも長く自社で働いてもらえるよう、本人が働きやすい環境を用意し、本人の意思を尊重していくことが必要です。

ただ、最終的には、「こんな優秀な人が自社に1年でも2年でもいてくれたのだから、有難い話だ」と開き直ることも大事だと思います。

④効率化重視時期

ハイタッチの解約率も落ち着いてきたら、今度はより少ない人数で生産性高く多くの案件を回していけるように効率化を重要視し始めるチームも多いと思います。

具体的には、SQLを用いて利用データの抽出を行ってユーザースコアを付けたり、BIツールで日々の数値管理をやり易くしたり、顧客に毎回提出しているレポートの自動化を図ったりなどを通して効率化を図っていきます。

その際に求められる人材は、データアナリストほどの専門性はなくてよいのですが、プログラミングを少しかじって業務で使っていたことがあるような、開発思考よりのカスタマーサクセスがいると大変重宝します。

前職でも、私から「こういったことをして業務の効率化を図りたい」と相談した時に、CS業務を良く理解した上で、開発メンバーに協力を仰ぎながら求めていたアウトプットをしてくれるメンバーがいて、大変助かった経験があります。

もしくは、カスタマーサクセスよりの開発メンバーとして、CSE(カスタマーサクセスエンジニアリング)を採用するのもアリだと思います。

ただ、いずれにしても、こういった人材を採用する上で注意すべきなのは、彼ら(彼女ら)の役割を明確にすることです。こういったポジションは、KGI、KPIを設定することが難しく、自分は何が求められているのかが分かりにくく、本人が不安に思いがちです。

そのため、役割を明確に定義するか、もしくは効率化施策と他の業務(ハイタッチ担当者のサポートなど)を兼務してもらうところから始めた方が良いでしょう。

⑤アップセル注力時期

一定の解約率をキープでき、業務も効率化できて新しいことをする時間ができた。このタイミングでチームは、NRR(Net Revenue Retention)を改善すべく、アップセルに注力し始めます。

アップセルしたいので、この段階で必要な人材は、言うまでもなくセールスもできる人材です。セールスといっても、押しの強そうなゴリゴリの営業マンというよりは、顧客に伴走もできるような、バランスの取れた人材が求められます。

THE MODELを理解して、システマティックに戦略を考えられる策略家としての素質も求められると思います。

ここのステージについては、私の中でも模索中で、餅は餅屋的な発想で、カスタマーサクセスは商談機会を作ってセールスにパスするまでを受け持つ形の方が良いのかもしれないとも思っています。

さいごに

以上、私の今までの経験をもとに、各ステージ毎に求められるカスタマーサクセス人材のスキルをまとめてみました。もちろん、今回ご紹介した順番で必ずしもチームが発展していくわけではないと思います。

実際に、現在私が所属しているセイルボートのカスタマーサクセスチームは、②をやりながら、⑤の人材も募集していたりします。ただ、共通して言えることは、自分たちのチームが今どのような状況に置かれていて、どのような人材を必要としているのかを明確にしておくことが、カスタマーサクセスチームを大きくしていく上で大切であるということです。

最後に、セイルボートはカスタマーサクセスや開発メンバーを積極的に募集中です。志を共にし、チームで成長できる仲間と一緒に働きたいと思っています。興味のある方はお気軽にご連絡ください。

https://www.sailboat.co.jp/recruit/

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