夜明けの街で/東野圭吾さん


ナミヤ雑貨店の奇蹟
さまよう刃
に続いてまたまた東野圭吾さんの作品『夜明けの街で』を読みました。


さまよう刃はたくさんの人の視点から書かれていて、コロコロと視点が変わるためスピーディに感じられました。

その後に読んだからでしょうか。
『夜明けの街で』は主人公の視点のみで物語が進み、長編ですが中身は半年ほどの内容のためスピードがとてもゆっくり感じました。(私は途中で焦ったく感じることもありました。)

ざっくりご紹介しますと、妻子もちの中年が派遣社員の女の子に惹かれてしまい不倫をするお話です。
ここまではありきたりですが、不倫相手の女性には父親の愛人が自宅で殺されるというヘビーな過去を持っていたのです。更には未解決となっていてまもなく時効を迎えます。犯人はいったい誰なのか。彼女は言うのです。"時効を迎えれば全てを話すことが出来る"と。

⚠︎以下、ネタバレ有ります。

不倫とは。ときめきとは。


初めてこの本のあらすじを読んだ時、私はミステリ小説だと思って選びました。

けれど読み進めると…ミステリ小説?なのか?と疑問に思うほど恋愛要素が強い!

浮気されたらどうする?と聞かれた不倫相手の女性の返答が「殺します」だったり、「3月31日(時効前の最終日)が過ぎれば話すことが出来る」など、始めから伏線はいくつかありました。

でもそれは物語の中のほんの一部分(にも足りない)で、後半に差し掛かってからようやく殺人事件のことがメインになってきます。

それまではミステリと言うより恋愛ヒューマンドラマ。

中でも印象に残ったのは"妻は女では無い"という言葉が何度も出てきました。
そして"結婚する事で失ったもの"。
ここでいう失ったものとは男女の駆け引きやときめきのことです。

読みながらやるせなさと、疑問に思いました。
人生の中でそんなにときめきは重大なことなのか。平凡であっても安定した幸せのある家庭を捨ててまで?

しかしこの物語を読む限り答えはYESなのでしょう。
冒頭にはこう書かれています。
"不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。ただしその言葉の後にこう続ける。でも、どうしようもない時もある"

自分だったら不倫なんてリスクの高いことはしない。家事に育児に仕事でそんなことしてるヒマも余裕もない。
そう思っていました。し、『夜明けの街で』を読んだ今もその気持ちに変わりはありません。

でももし、その思いに反して誰かにときめいてしまったら?その相手も自分を好きだと言ってくれたら?その時にも同じ言葉を言えるのか。
読み進めていくうちにそんな"もしも"を考えてしまいました。


女は強かである


これは勝手な考察ですが、男は単純でいざという時に弱い生き物であり、女は現実主義で計算高く強かという部分が強調されているな〜と思いました。

主人公はその場その場で自分の気持ちに正直すぎて周りが見えていません。簡単にクリスマスの約束をしてしまったり燃え上がる気持ちのまま妻と別れると言ってしまいます。
それなのに不倫相手の女性がこれからは私のものと言い、一緒にいることに積極的になると途端に弱気になって迷いだすのです。

逆に女性の強いこと。

不倫相手の女性は最後まで主人公の幸せを願い、自分から幕を引きます。

他にも主人公の妻は不倫に気づいてないわけないよね?と思うような夫の行動にも少し不満を漏らすだけで突き止めようとはしません。
え?気づいてないの?
そんなわけはない!しっかり気づいていました。分かっていて、幼い娘を守るため気づかないふりをして、日常が帰ってくることを願っているのです。


私だったらどうするんだろう。
旦那が浮気していたら慰謝料たっぷりもらって即離婚!
そう思っています。
だけどそれが現実的でないのも事実。
詳しく調べたことがないので慰謝料がいくらなのか、そのお金で何年持たせられるのかもわかりませんが、お金で苦労をすることは簡単に想像できます。

いざという時に離婚に踏み切れるのか…。
この作品の奥様のように日常が帰ってくるのを願ってひたすら我慢するのか…。


あとがき


あえてであるとは思っているものの、"妻"という存在を軽視する表現がかなり出てきて主人公のことはとても好きにはなれませんでした。笑

不倫をする人間はこうやって沼にハマっていくのかな〜と。

ラストまでこの人が犯人か〜!え!この人?こっちか!と誘導するような物言いにハラハラ出来て面白かったです。

ですが結末は個人的にはちょっと物足りなかったな〜というのが本音でした。
時効までの15年間を表すにしては最後は急にスピードアップしたような感じがあり、そここそもう少し丁寧に深く読みたかったです。

ミステリが読みたいけど、グロいのが苦手という方にはおススメです。
最初から最後まで死人は不倫相手の女性の父親の愛人(分かりにくい)のみなので途中で死人は出ないですし、正直ミステリ要素はありますが、ヒューマンドラマのほうが要素かなり強いので。

結婚とは何なのかを深く考えさせられる物語でした。

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