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ナミヤ雑貨店の奇蹟/東野圭吾さん


東野圭吾さんの作品『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

素晴らしいお話でした。

語彙力が著しく低いのでこの素晴らしさを表す言葉をみつけられないのが残念すぎる…。

ざっくり言うと過去からのお悩み相談の手紙に少年3人が返信を書き相談に乗るというお話です。(ざっくりすぎる)

⚠︎以下ネタバレあります。

『夜更けにハーモニカを』鳥肌が立つってこういうこと。

こちらの作品は全5章編成でしたが、まず初めに鳥肌がたったのは2章の『夜更けにハーモニカを』でした。

ある魚屋で働く両親の元に生まれ育った青年が、後を継ぐという既定路線からはみ出し音楽家を目指すも日の目を見ることが叶わず、継ぐかこのまま音楽の道を志すのか決断出来ずにいました。

そのことを手紙に書き相談するのですが、返信の中身はまさに罵詈雑言。
「贅沢な悩み」「好きにすれば」「アホみたいな夢」

この返信、あの少年3人が書いてるんだよなぁと想像すると笑えました。

初めはカチンときた青年でしたが、その後の相談にも一貫して魚屋を継げという解答に受け取り方は変わってきます。

そして自分の持ち歌『再生』を聴かせた後の、最後の相談の返信の手紙には「あなたが生み出した音楽は必ず残ります」という今までとは違った内容が。

私はその時、じゃあ音楽の道を取ったのだなと思いました。そしてブレイクしたのかな、と。

ところがラストはそんなそんなシンプルではありませんでした。

結末を言ってしまうと、青年は音楽家として日の目を見ることは叶いませんでした。
再度音楽家を目指して奔走しましたが、ある仕事現場で火事が起き、小さな男の子を助けた時に負った大怪我で命を落とします。

え、と思いましたが、ラストで一気に伏線回収。

「あなたが生み出した音楽は必ず残ります」

助けられた男の子のお姉ちゃんが数年後、稀代の天才女性アーティストに。
そして彼女はライブでいつもラストに歌うのです。
唯一の肉親である弟を救ってくれた青年の曲『再生』を。

いや〜鳥肌立ちました!ガチで!

説明が下手なのでこの作品の良さを100分の1も伝えられていないのですが、本当に感動しました。

途中再び音楽の道に進むまでにも青年の父親といろいろあり、負け戦でもいいから自分の足跡を残すという男と男の約束があるんですよ。

叶えたわけですよね、彼は。
しかもかなり大きな足跡を。

たくさんの人のいろんな視点から物事を考えれば考えるほど深い作品だと感じました。

『空の上から祈りを』胸が熱くなるってこういうこと。


最終章『空の上から祈りを』では、元々のナミヤ雑貨店の店主である浪矢雄治さんから少年3人に手紙が届きます。

というのも、始めに3人は過去からの手紙を誰かがからかうために用意したのでは?と考え、白紙の紙を送ったのですが、なんとそれに対しての返信でした。

浪矢さんは33年前に亡くなっているのですが(少年達が現在として)、別の章で亡くなる直前に白紙の悩み相談が届いた描写があり、その時には返事の内容は明かされませんでした。

それが最後の最後に明かされたのです。
中には「これは地図がないという意味だなと解釈しました」「道がどこにあるかさえも分からないという状況なのでしょう」という言葉から「だけど見方を変えてみて下さい。白紙なのだから何もかもが自由で、可能性は無限に広がっています」と続いています。
最後には「最後に素晴らしい難問を頂けたこと、感謝します」と締め括られていました。

本当に過去からの手紙なのかを明かすために送った適当な白紙の紙でしたが、真摯な返答に浪矢さんの素晴らしい人間性を感じさせました。
また、白紙の紙自体は適当でしたが、彼らの置かれている状況にはこの返信の内容はピタリと当てはまるのです。これを読んだ3人の心情を思うと、本当に胸が熱くなりました。


キャラクターの魅力。


この物語のおススメポイントの一つにはキャラクターの魅力がかかせません。

多くのキャラクターの中でも印象に残った返信を書いている少年3人。
冷静、気が小さい、ぶっきらぼう(リーダー)と言った印象だったのですが、読み進めれば読み進めるほど変わっていきました。
この3人は泥棒のようで、逃げた先がナミヤ雑貨店だったのです。

冷静沈着な少年、翔太くんは初めは一歩引いたように様子を見ていましたが、返信の書き方にアドバイスをしたり相談相手の気持ちを的確に考えれたりと冷静ではあるけれど根は世話焼きなんだな〜と感じました。

また3人の中で一番下っ端で気が弱い幸平くん。ですが相談に返信を書くことを強く希望したのも、最後まで諦め無かったのも幸平くんなのです。

そして、私が本作で一番好きになったのがぶっきらぼうでリーダー格の少年、敦也くんです。
言葉使いも乱暴で、相談の返信を書くと言った幸平くんに始めは「馬鹿か」と一蹴していました。

そして勝手にしろと出て行ってしまいます。
ですが、根は優しいのです。
ハイリスクであることを承知しながらも置いてきた二人を見捨てることは出来ず、コンビニで食料を買って戻ってきます。
そして結果的に最後までお悩み相談に付き合うのでした。

敦也くんには悲しい過去があります。
水商売で働くシングルマザーの元で育ち、母親の恋人から暴力を受けていました。のちにその男は捕まるのですが、その後は母親のネグレクト。壮絶ですよね。

それなのに人に優しく出来る敦也くん。
すっかり魅了されてしまいました。

他にも個性的な人が登場しており、皆それぞれ多かれ少なかれ悩みを持っています。
ジャンルこそ過去と未来をつなぐ手紙というファンタジーですが、逆に言うとその設定以外はかなりリアルです。(モスクワのオリンピックボイコットやビートルズの歴史など)

私は21世紀生まれなのですが、リアルな背景や誰にでも起こりうる悩みなどがところどころに散りばめられていて、ファンタジーでも共感できる部分は多くあり、とても面白かったです。

こちらは映画もされていますが、観たことが無かったのでぜひ観てみたいと思いました。

まだ読んだことない方、本を読む習慣をつけたいけど何から手をつけたらいいか分からないという方にオススメです。


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