【五島紀行2】旅の準備

最寄のバス停から有川港までは約8時間半。普段の睡眠時間よりも長い。改めて遠いところなんだな、と経路図を眺める。行きも帰りも「少しゆっくり歩く」設定でルート検索していたので、どうにかなりそうだ、とざっと眺める(この時にざっとしか眺めていなかったので後で大変な思いをする)。行きは長崎空港経由でJAL、帰りは福岡空港経由でスカイマークと異なるルートだったが全く構わなかった。とりあえず飛行機はこれで良さそうだ。飛行機だけは先に取ってしまおう、と12月22日中に早速チケットを手配した。これで駒が一気に進んだ。もう後は勢いのままに。行くぞー!と更なるやる気が湧く。あと必要なのは宿と移動手段。今回は行程も長いのでできるだけリーズナブルな宿とレンタカーを探した。島なので、どこに泊まってもきっと美味しい魚が出てこないはずがない、と算段する。宿は新上五島町物産観光協会のHP( http://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/stay/ )から選んだ。充実したHPで、「教会めぐり( http://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/junrei/ )」というコンテンツが特に良かった。

前回訪れたのは5年前の事で、このページのトップに使われているのが正にあの時から心惹かれていた青砂ヶ浦教会だった。青砂ヶ浦教会を含めて、上五島にこれだけたくさんの教会がある事に驚いた。教会以外のところも含めると全部で32箇所もある。教会だけで29箇所。そして地図を見るとそれぞれが密集している。教会群というだけの事はある。なるほど面白そうだ、とここで第2のコンセプトが決まった。このHPに掲載されている場所をできるだけ多く回ろう。4泊5日あれば何とかなるんじゃないか。無理に全部回らなくてもいいのでできるだけ多く。運転も好きなので遠い離島での長距離ドライブも楽しみだった。あとは何をコンセプトにしよう?5年前にも味わった五島うどんもぜひ食べたいと思った。五島うどん、日本三大うどんのひとつで、あご(トビウオ)のだしで食べる大変美味しいうどんだった。これは外せない。第3のコンセプト決定。

大まかな旅の青写真ができたので、32箇所をどのように回るか検討を始めた。何日目にどこをどの順番でどんな風に回るか。教会めぐりのHPとGoogleマップとのにらめっこは年が明けてもしばらく続いた。何となく全体の絵が見えてきた頃、どうやら丸一日余裕ができそうなスケジュールが組み上がってきた。これならもっと色々詰め込めるかもしれない。他には何をしようか。上五島についてとにかく検索をかけまくる。教会群について調べていると、何かの拍子に「野崎島」というところを見つけた。野崎島( http://ojikajima.jp/nozaki )。2007年に最後の島民が島を離れて、今はガイドさん1名の住民登録があるのみの実質の無人島。かつての集落の廃墟と、廃校になって今は宿泊施設になっている小学校、青砂ヶ浦教会と同じ建築家の手によって建てられた旧野首教会があって、野生の鹿が約400頭生息している、事前予約がなければ行く事さえままならないところ。こんなところがあったのか。全然知らなかった。上五島からは船を乗り継いで小値賀島というところを経由して行くらしい。ここに行くか、船でしか行けないキリシタン洞窟(前日までの要予約)に行くか、しばらく考えた。野崎島について色んな人のブログを読んだりまとめサイトを見たりして検討した。結果、無人島への興味の方が勝った。一人旅で無人島なんてどこまで無謀なんだ、と思わないでもなかったが、私の他にも同じような事をした人がぽつぽついるらしいので、まぁどうにかなるさ、とこれを第4のコンセプトにした。今回の旅は今までとは一味も二味も違うものになりそうだ、と旅がどんどん楽しみになっていった。

2016年1月半ば。上五島、中通島の回り方はおおかた決まりつつあった。「教会めぐり」32箇所のうち、28箇所回るための行程表を一日ごとに作った。全日晴れると頭から信じて、ひとつの場所に滞在する時間を20分で設定した。根拠にしたのはやはり中通島を回った人の旅行ブログで、その人は一箇所辺り10分を目安に移動していた。外観を眺めて写真を撮り、中を見学してスタンプを押して10分。私の場合は一眼レフを持っていくつもりだったので写真撮影でもう少し時間がかかるのと、できればもう少し余裕を持って中も見たいと思って20分にした。移動時間はGoogleマップで算出し、それぞれ5分ずつプラスして計画を立てた。朝は毎日宿を8:00に出発して大体18:00〜19:00には帰ってくる計画。いい感じだ。一人で家の中でにこにこする数日を過ごした。そして同時進行で四日目に設定した野崎島への行き方とその日の過ごし方を検討する。

野崎島を旅した人のブログを漁る。野崎島へ渡るには事前に経由地である小値賀島のおぢかアイランドツーリズム協会( http://ojikajima.jp/ )に連絡しなければならないという事を知る。そこから船の時間を調べてみた。ちょうどよく有川港から船が出ていた。朝6:25に有川港を出港し、7:00に小値賀島に着く。そして7:25に町営船で小値賀島を出港し、8:00に野崎島に着くようだ。朝が大変早い。ブログの作者も時間が早すぎて朝食を宿が持たせてくれたと書いていた。その代わりに帰りも早かった。15:10に野崎島を出港、15:30に小値賀島に着く。小値賀島での乗り継ぎが悪く、島を出るのは18:00で有川港着が18:35だった。どうにか日帰りで帰ってこられるスケジュールになりそうだ。船が出る時は野崎島へはおぢかアイランドツーリズムの人も同行するようだし(ガイドは別料金)、完全に一人で渡るわけではないという事も分かった。島の奥地に入りさえしなければ滑落したりする危険性もない模様。くれぐれも無理はしないでおこう。小値賀島での待ち時間は、小値賀島の中をぶらぶらして見て回ろう。コーヒーぐらいは飲めるだろう。どこもなかったら町の様子を楽しもう。島の猫はもしかしたら人懐っこい子もいるかもしれない。

有川港から宿までは車で10分強。港に電話してみると駐車場も完備されているとのこと。一日停めっぱなしにして野崎島へ渡れる。これで事前計画はばっちりだ、と嬉しくなった。あとは旅を待つだけ。晴れるといいな。船が出るといいな。野崎島での服装( http://nozakijima.jp/outfit.html )についても検索して準備を始める。トレッキングシューズは持っていないので普通のスニーカーに一応防水スプレーをして行く事にした。真冬のハイキングだ。ドキドキしてきた。旅を決めた時より一層ドキドキしてきた。毎日寝るのが楽しくなった。あと何日で五島に行ける、と、昔のお正月を待つ子供のような気持ちになった。

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