【五島紀行5】初日 20160127 教会巡りから宿へ

米山教会→仲知教会→赤波江教会→江袋教会→小瀬良教会→大水教会

レンタカー屋さんを出発し、まずは上五島、中通島の最北端にある米山教会を目指す。レンタカー屋さんからはおよそ40分。早速ドライブが始まった。教会巡りの冒頭から、いきなり山深い道を走る事になる。初めての土地を運転するのはどこででもわくわくするものだ。

レンタカーは、今回はケチってナビなしの車にしていた。FMトランスミッターを持参してきていて、iPhoneからGoogleマップを使えば大丈夫だろうと踏んでいた。1日辺りにすると大した差額ではないが、5日分となるとレンタル代もかなり変わってくる。FMトランスミッターもiPhoneからのGoogleマップも日常的に使っているので何も問題意識はなかった。

米山教会には無事に辿り着く事ができた。残念ながら曇り空で、周辺の道路(崖っぷち)から見える海も鈍色。タイミングが悪かったなぁ、と思いつつも次々とシャッターを切っていく。教会だけでなく周辺の景色も含め色々と見て回りたくて足早に退散し、次の場所へと移動する。途中、米山教会の最寄のバス停を見つけた。バス停には、教会のある新魚目地区のイメージキャラクターと、椿の絵が描かれていた。そういえば五島が椿の島だと事前のリサーチで知ったんだった。こんなところにまで。手書き風の暖かい絵で、これも思わず写真に収める。

仲知教会までの間にも、何度も道路から海が見えるポイントを通った。偶然なのか意図的なものなのか、そういうポイントではそこだけ道幅が大きく取られていたり、路肩が作られたりしていてちょうど車が停めやすくなっていた。道路もほとんど車通りはない。レンタカー屋さんを出発してからこの約1時間、すれ違った車は数えるほどだった。海が見えるところを通りがかる度に車を停めて写真を撮った。5年前に見た海とは全く違う色をしていたけれど、その分晴れた時の美しさを想像してそれも楽しかった。滞在中にお天気に恵まれるといいなぁ、とぼんやり願う。

仲知教会、赤波江教会、江袋教会、と回る間、半分くらいはiPhoneが圏外になった。電波は通じなくてもGPSは生きていたので、一旦ルートが確立されてさえしまえばその目的地に向かう事は出来た。目的地に到着して、やった、と喜ぶのも束の間、その次の目的地へのルートを検索しようにも圏外のせいで出来ないというトラブルが発生。これは旅の準備段階でも全く予想していない事だった。そういえば5年前に訪れた時も圏外のところが多かったっけ、と今更ながら思い出す。気が付くのが遅かった。離島を甘く見ていた。恥ずかしや。幸い繋がるエリアが飛び石で存在していたので、圏外になるたびにそのポイントに戻ってルートを再検索した。走っているうちに段々慣れてきて、自分が今どこを走っているのかは分からなくても直前に電波が通じた地点を覚えながら走る事ができるようになっていった。そしてここには渋滞がない。事前にGoogleマップで計算していた時間よりもかなり速く各所を回る事ができた。予定では今日は小瀬良教会までのつもりだったが、予定を変更して大水教会まで回ってしまう事にした。初日から幸運な予定変更だった。

N-ONEは初日から早速ポテンシャルを発揮してくれた。たびたび道を間違えたり、通り過ぎたポイントにやっぱり立ち寄ろうと思い直したりと、思いつきでの方向転換をかなりやった。その度にこの車の小回りの良さに感激した。一車線道路で180度のターンができるなんて。平日午後の中通島北部(ほとんど山)を私は自由に走り回った。本土でこんなに自由に走った事はないかもしれない。半日、運転はとても快適だった。

今日回ったところはどこも建造物としては比較的新しいところだった。どの教会も、とてもひっそりとした集落の中に建っている。まるで息を潜めるかのように、静かに。赤波江教会と小瀬良教会は、屋根が鮮やかな朱色で遠くからでもはっきりと教会だと認識できる程度には目立っていたが、近付いてみると音といえば波の印象しか残らない程度には静かなところ。常駐の管理人のような人もおらず、五島の教会群はどこもほぼいつでもオープンだとHPにあった通りだった。いつでも訪れる人を迎え入れてくれる。何者も拒まない空気を何箇所か回るうちに肌身で感じて、徐々に不思議な気持ちになっていくのを自覚していった。

今日見て回った中では江袋教会が一番印象的だった。かなりきつい坂の下に教会が建っていて、そこに杖をつきながらゆっくりゆっくり歩いていく高齢女性がいた。お祈りが終わって帰ってくるのはずいぶんしんどいだろうと思われた。そうまでしても彼女を教会に向かわせる何かがあるんだなと思った。 教会からは信者の方々のお祈りの声が漏れていた。ちょっと聞いただけでは仏教のお経のようだった。外観の写真を撮っている間に3人の信者の方が入っていかれた。ミサの時、冠婚葬祭の時は見学を遠慮するようにとHPで案内されたのでそれに従った。

泊まるところには3週間くらい前に予約の電話を入れていた。名前しか聞かれず、「飛行機や船の出る出ないもあるでしょうから直前にまたお電話下さいー」とだけ言われて電話を切っていた。出発の前々日に「大丈夫そうなので伺います」と電話した時も結局連絡先を一切聞かれず、これは大らかなのか杜撰なのかどっちなんだろうと思っていた。来てみてわかったけどここは主に工事関係の人達が仕事で長崎市や佐世保市からこの島に来た時に連泊するタイプの宿だった。天候に左右されてお客が来る来ないなんてのはザラなのだ。なるほど。だから予約の時に一人旅で連泊だと伝えた時にあんなに何度も「仕事じゃない?本当に?本当に?」と訝られたんだ。

食事は、ヒラマサとイカのお刺身、野菜のかき揚げ天ぷら、五島牛のすき焼き風うどん。美味しい魚が出ないはずがないという予想は見事に的中した。そして滞在中一回しか食べるチャンスがないものと思っていた五島うどんが早くもお目見え。しかも五島牛のすき焼き風ときた。これには目尻が下がらざるを得なかった。とても美味しい食事で、遠慮しようと思っていた焼酎をつい注文した。グラスで頼めるというので助かった。「麦でもいい?」と女将さんに訊かれ、二つ返事でボトルを受け取る。出てきたのは、少なくとも私の周りではあまり出会う機会のない壱岐のスーパーゴールド。さすが近場だと感心した。食事を楽しみながら、明日の行程も無事に回れますように、と誰に向けるわけでもなく、心の中で呟いた。

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