【五島紀行6】二日目 20160128 教会巡り前半、そして昼食

曽根教会→青砂ヶ浦教会→丸尾教会→青方教会→大曽教会→跡次教会

旅の二日目は早起きから始まる。6時に起きる予定が、お布団が気持ちよすぎてなかなか起きられず6時半起床。ここのお宿のお布団は、シーツが普通のとは違ってもこもこで、しかも毛布もふわふわの素材が使われたものでもこもことふわふわに挟まれてこれ以上ないくらい気持ちが良かった。お陰で夜中も暖かく眠る事ができた。いい寝具が準備されているって旅行者にはとてもありがたい事だ。

昨日のチェックインの時、女将さんに「7時半までには朝ご飯食べてもらえると嬉しいんだけど」と言われていた。何とか人前に出られる格好になって7時半には余裕を持って朝食に降りていくと、食堂には早くも誰もおらず、女将さんも住居スペースに引っ込んで何やら仕事をしていた。私の気配に気が付いたようで、「あぁ、ご飯?いーよー好きに食べてー」と声が飛んできた。食堂に入ると、テーブルには中鉢に入ったおかずが10品ほど並べられていた。ほうれん草のおひたし、卵焼き、切り干し大根、ひじきの煮付け、明太子、ソーセージ、納豆、などなど。ご飯は好きによそってお味噌汁もセルフでよそるようになっていた。どれも家庭的なおかずでこれは嬉しかった。野菜を中心におかずを選び、7時半少し過ぎに朝食を食べ終える。

予定通り8時には出発した。昨日の行程に少し余裕ができて今日回るはずのところを一つ繰り上げていたので、元々の今日の行程の二つ目から予定通りに回る事にする。中でも青砂ヶ浦教会と大曽教会は凄く凄く楽しみにしていたところ。青砂ヶ浦は5年前に来た時にすっかり虜になってしまって、大曽教会は同じく鉄川与助が手掛けた教会とあって今回ぜひとも見たいと思っていた場所だった。天気は生憎の曇り空で小雨がぱらついている。そして朝の比較的早い時間帯だからなのか、本土の同じ時間よりも薄暗く感じた。すれ違う車も半分くらいは点灯して走っていた。こんなところでも本土とのギャップを感じる。

青砂ヶ浦教会も大曽教会も、どちらも外観は古びた素敵な赤煉瓦、内観はリブ・ヴォールトのこうもり天井でステンドグラスや祭壇と相まって溜息が出るほど美しかった。新上五島町観光物産協会のHP「教会見学時のマナー( http://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/junrei/basic/manner.cfm )」によると、「聖堂内部の写真撮影は原則的に禁止です。カメラでは写せないものを心のフィルムに残してください。」とあった。そして実際に教会を訪れてみると、HPとほぼ同じ文言で何点かの注意を促すポスターが聖堂内に貼ってあった。旅を計画している段階から、「心のフィルムに」というフレーズが胸に響いて、内観の写真はやめておこうと決めていた。検索すると山ほど内観の画像は出てくるけれど、やはり神聖な場所なのだし、HPやポスターにもある通り心のフィルムに残す事にした。どこの教会もほぼいつでもオープンでまず無人なので、撮ろうと思えばいくらでも写真は撮れてしまう。人目がないのをいい事に、内観写真を撮る人が後を絶たないのだろうな、と思った。

順番は前後するけれど、曽根教会から青砂ヶ浦教会に移動する間、手持ちの現金が案外少ない事に今更ながら気付いた。今回の宿は最近では珍しくなった後払い制なので油断していたけれど、最終日に宿代を払うと手持ちの現金がだいぶ寂しい事になる。これはいかんと思って急遽近場の郵便局へ。最強の全国チェーンは離島でも安心。たまたま立ち寄った立串郵便局は、建物の10m先が海という非常にレアな立地だった。こんな海際ギリギリに建っている郵便局は恐らくここだけだと思う。当たり前だが職員の方々は8時半にはしっかり仕事を開始されていた。この海との距離感にはかなりびっくりした。

教会を3つ回る間に、天気はどんどん悪くなっていった。朝方は小降りだった雨も徐々に普通降りになっていく。小雨のうちは傘はささずにiPhoneと一眼の両方で写真を撮れていたものの、雨が強くなるとさすがに傘をささずに車から降りるのが厳しくなった。傘をさしながら一眼を使いこなすのは初めてだったので予想以上に苦労した。それに伴って教会一箇所辺り20分の滞在予定も、そんなに長い時間その場に留まるのが厳しくなっていく。徐々に予定時刻よりも速いペースで各所を回っていった。これなら昨日のように、明日の分の幾つかを今日の夕方に回せるかもしれない、と早くも思い始める。とても順調に回っていったので、昼食後に回る予定だったところを午前中のうちに三箇所回ってしまう事にした。

跡次教会は、建物のすぐ下に墓地を抱える教会だった。長崎では、仏教でもキリスト教でも、墓石の文字を金文字にしてお花は造花を飾って一年中綺麗な状態を保つらしいという事は5年前のお宿の女将さんから聞いていた。跡次教会の墓地でもやはりそうで、墓地の外れには無縁仏(キリスト教の場合は仏じゃないが)の人達用と思しき簡素なお墓があった。ブロック塀で輪郭を象り、比較的大きな石をその中に詰めて、色付きの石で十字を象っているもの。色んな人の色んな思いがこの小さな墓地には今でも息づいているんだなと思った。

今日は5日間の滞在中、唯一昼食に五島うどんを食べる日にしていた。午後に回る予定だったところを先取りして回ったのに、前もって調べておいたお店に着いたのは予定とほぼ変わらない時間だった。そして店構えを見て驚いた。全く店名を覚えていなかったので気が付かなかったが、ここは5年前に五島を訪れた際に現地の方に連れてきてもらったところだった。嬉しい。あの時食べたうどんがとても美味しかったので今回も行程にうどんを入れたのだ。カウンターに案内され、今回は何にしようかとメニューを眺める。「特製うどん」というメニューに好奇心をくすぐられた。店員さんに声をかけ、特製うどんの中身を尋ねる。要するに全部乗せのうどんだった。美味しそう。これにしよう。注文してしばらくしてうどんが運ばれてきた。器の中身を見て思わず笑ってしまった。5年前に食べたのと全く同じメニューを今回も選んでいたのだった。海老とかぼちゃの天ぷら、温泉卵、わかめ、きつね、ねぎ、しいたけ煮、人参、牛肉、そしてアゴだしのおつゆ。あの時と同じ味だ。偶然にも、最初に決めた旅のコンセプト「前回の行程をなぞってプラスアルファになるような旅に」という点を見事に突いていた。ご縁って不思議だなぁ、と思いながら柔らかいのに伸びにくい不思議なうどんをすする。午後からの旅もまた楽しみになってきた。

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