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旧朝香宮邸を読み解くA TO Z

2024年2月17日から5月12日まで、東京都庭園美術館で開催されていた『旧朝香宮邸を読み解くA TO Z』に行きました。この展覧会はいつもの展覧会とは一味ちがい、旧朝香宮邸自体が鑑賞の対象になっています。調度品や装飾のみならず壁紙や床板にもセンスと財が尽くされていて、さすが宮邸、と感嘆せざるをえず。この邸宅の住人だったら…と想像にひたりながら満喫しました。

チケットを購入して邸宅へと進んでいくのですが、すでにここから規模がでかくて別世界にはいっていくような気分でした。私はお昼過ぎの、ちょうど一番太陽が輝いている時間に行ったので、木漏れ日がちょうどきらきらしていて綺麗でした。あと、道が緩くカーブしているので、邸宅がみえたときのワクワク感がより強かった気がします。

さっそく入り口のポーチに、一番初めのカードがありました。
この展覧会では、スポットごとにその場所の説明と特徴的な調度品(もしくはその場所に関係する写真など)が印刷されたカードがおいてあり、スタンプラリーのように集めていきながら進んでいきます。
個人的にこのシステムはすごく嬉しい!鑑賞中にすべてをメモできるわけじゃないから、時間が経つと「あれ、何見たっけ?」に結構なりがちなので、このカードがあれば場所を思い出すきっかけになります。(現にこれのおかげでいまこの記事を書けています)

さて、チケットを提示していざ入館!
コインロッカーに荷物を預けるとき、大きめのロッカーがちょうど残り1つでした。無事に身軽になれたけど、鑑賞後に担いだ荷物があまりにも重すぎて、これを担いだまま鑑賞する羽目にならずに本当に助かったと切実に思いました笑

ここからはお部屋ごとにメモしていきます。


大広間

ガラスでつくられた天使が左手に迎えてくれる。外の白い光が透けるのでますます天使が舞い降りてきた感じがする。教会でステンドグラスを見上げているときのような、神聖な気持ちになるし、ほんとうに綺麗。

レースのようなデザインも素敵


次室

「香水塔」が見どころ。床に敷き詰められたモザイクタイルの割れ目と、床と香水塔のすきまから、若い双葉がそれぞれ出ていた。こういうのを見つけるとすごく嬉しい。

こんにちは
タイルの割れ目から

第一応接室

なんかいい香りがした。部屋の香りなのか誰かの残り香なのか…
カードによると次室の香水塔は、「上部の照明部分に香水を注ぎ、熱で香りをただよわせた」エピソードがあるらしいが、もしかしたら当時もこの部屋はいい香りがしたのかも。そのエピソードを再現したのだとしたら芸が細かい!

小客室

好き!!壁紙がキャンバスみたいだな、モスグリーン色の絵の具のアクセントとしてところどころに銀の絵の具をペイントしたみたい、と思っていたら、本当に油彩画のキャンバスを壁に張ったらしい。感動~!!

大客室

最初に出てきた言葉は「広!!」だった。あと明るい。南向きで明るくて、一番いい場所を客室にしたんだな、と実感した。照明とか壁の装飾とか、何から何まで凝っていた。

大食堂

草花や果物、魚など、とにかく装飾が可愛く見どころ満載。部屋の奥(窓)が半円に張り出していて、特別感があった。6つの窓の下には、ゆらゆらゆれる海藻のなかを魚や貝が泳いでいるような飾りがある。壁には草花が大胆に彫られていて華やかだ。照明にも、ある果物を見つけることができるので、ぜひ注目してみてください!

第一階段

なんといっても椿のモチーフが素敵だ。ちょっと高貴な生まれになったふりをして優雅に階段をのぼってみた。

階段の装飾を、横の洗面所からみた写真

二階広間

階段をのぼりきった際の右手がすりガラスになっているので、明るい。ソファがあったので座ってみた。さすがにこのソファは美術館になった際につけられたものだろうか?ここではレコードが聴けたと思う(すでに記憶があやふや)

若宮寝室

トキメキの半円突き出し壁!(?)
外を眺めていると、ガラスが歪んでいることに気づいた。これは確か、明治~大正にかけてつくられた歪みのあるガラスを「大正ガラス」と言うのだけど、それか!!と内心でめちゃめちゃ興奮した。調べてみると、旧朝香宮邸は1906年(明治39)に創立したらしい。
大正ガラスは現在では生産されていないため、割れてしまったところは歪みのないガラスがはめられている。行った際は、どこが大正ガラスでどこが割れてしまったところか、どうして割れてしまったのかも想像してみるのも面白そう。

ちなみに、大正ガラスのことは熱海の起雲閣で知りました。ガイドさんが起雲閣の歴史やお部屋について説明してくださいます!おすすめです。


合いの間、若宮居間

当時の床もまたお洒落!でも床板だと冬は寒そう…和室ってあったのかな?

書庫

開かずの戸棚があるようで、この部屋のアルファベットは「X」、イメージカラーは「黒」。薄暗い部屋なのもあって、入り口から部屋を見ると「X」と白く光る文字がミステリアスな雰囲気を醸し出していた。部屋のなかでは、戸棚のガラスに「X」の文字が反射して写っており、それもそれで雰囲気たっぷり。探偵ものを読んでいるときみたいな、ワクワクと神妙さが混ざった気持ちを残しつつ部屋をあとにしました。

書斎

一度に人がひとりふたりぐらいしか入れなかったので、すこし待った。
向きを変えられる机らしいけど、見ただけではよく分からなかった…
近未来じゃないけど、創造的というか、いままでに見てきた部屋とは雰囲気が異なる部屋で、なんだか面白かった。

殿下居間

き、記憶が…

ベランダ

外からみたときはベランダがあるとは気が付かなかったな、と思っていたら、ベランダはベランダでも室内のベランダだった。椅子が備え付けられており、ここに座りながら一日中空を眺めてみたいなあと思った。
説明で「殿下と妃殿下の部屋からのみ行き来が可能」と知ったのだけど、この文の言っていることがかなり好きで… 夫婦に限らず、気心のしれた人たちが、その人たちだけの空間でゆっくりくつろいでいる雰囲気・様子が好きなので、キュンとしました。

妃殿下寝室

(ベランダから入ったのでますますそう感じるのかもしれないが)心地よく暗く落ち着いている印象。妃殿下が描いた下絵がもとになっているというラジエーターレジスター(初めて聞いた、なんじゃそれ)が素敵。

第一浴室

静かだけど、決して暗く湿っぽくはない。

殿下寝室

入った瞬間、爽やかななんかいい香りがした。
説明を読む…「木材にクスノキが用いられ」…それだ!!
やっぱり!と嬉しくなったけれど、クスノキの香りってそんなに長く残るものなのかな?

北の間

作品が敷き詰められていたのだが、初めはそれが作品だとは気づかず建物の一部だと思っていたので、最初に部屋に入ったとき「お、なんだ??」と足が止まった。ほうとううどんが短くちぎれて、それぞれに命がやどって、めっちゃ密集してパーティーしているみたいだなあと思った。
夏の暑い日に涼めるお部屋らしい。ひんやりとしたタイルが敷き詰められていて確かに気持ちよさそう。もし私がここの住人だったら、夏はここで寝っ転がって本でも読んで過ごしたい。

妃殿下居間

かわいい~♡
抹茶ムースのような柔らかい緑色で、柔らかく繊細に波だった壁が特にかわいい。

姫宮寝室、姫宮居間

き、記憶が…(2回目)

ウィンターガーデン

3階のウィンターガーデンを見学するのに人数制限がされていたので、注意事項を読みながら体感で3〜5分ほど待った。
階段をのぼり、いざ3階へ!
ウィンターガーデンは、日あたりが良いので暖かく、温室の役割を果たしたらしい。
部屋の隅の排水溝カバーやドアノブにも、すてきな模様があったので、外の景色よりもそういうところを良くみてしまった。

ガラスとドアノブの組み合わせセンスに
惚れ惚れしちゃう

小食堂

1階までくだって小食堂へ。
私が行くと人がだれもおらず、静かな空間だった。ちょうど日が暮れてきていたので、夕方のすこしセンチメンタルな光が部屋に差していた。
ちょっとたたずむだけで心が落ち着きました。

庭園

子どもたちが遊んでいたり、散歩している人がいたり、平和だったな。

陰影

ギャラリー

最後は新館へ。
ここではアール・デコとは何か、だれが装飾を担当したのか、など、補助知識が紹介されていました。イスがズラズラっと並べられているところもあり、「人間椅子の椅子はこういうのなんだろうな」とか思いながら鑑賞しました。
感覚的ではない「知識」にもアクセスできるので、知りたいことの幅がより広がっていいなと思いました。
そして、集めたカードは穴を開けたのちリボンやリングでまとめました。

最後に

この展覧会で私が一番印象に残ったのは、部屋に入ったときに感じた「感覚」と「事実」が合致したときのことです。具体的にいうと「香り」です。
すでに述べましたが、殿下寝室に入ったときに「あ、なんかいい香りがする」と感じました。最初は誰かの残り香だろうか、と思いましたが、「木材にクスノキが用いられ」ており当初は清々しい香りが漂っていただろう、というような文章を読んだときに、やっぱり!!と嬉しくなりました。
私は鑑賞する順番として、まず部屋を堪能したのちにカードや展示台の解説を読んでいったのですが、知識を得ないままに感じたことがカードで触れられていたときの驚きや納得、感動はひとしおで、強く印象に残っています。

一方で、建物自体が重要文化財なので言っても仕方のないことですが、「触覚」を使えなかったのは惜しいなと思ってしまいました。目で見ただけでは分からない質感、壁紙の違いや壁の厚み、手すりの太さなども感じてみたかった… 言ってもどうしようもないけどね…!

とにかく、東京都庭園美術館には初めて行ったけれど、建物自体が素敵でとてもときめきました!次回行くときは、展示会場としての旧朝香宮邸に足を踏み入れるだろうけど、また違う印象をうけるだろうな…

あの建物と大正浪漫は相性良すぎです。
早くもその時が楽しみ!

美術館や博物館、図書館にもっと行ってみようと意気込む今日この頃です。

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