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私のそばにいてくれた :『タイポグラフィ・ブギー•バック ぼくらの書体クロニクル』正木香子
その本を読んでいるとき私は、まるでだれかの記憶の中を一緒に旅して、その道にぽつぽつとある小さな家を、ひとつずつ、こんこん、お邪魔します、と訪ねていくような、そんな気分の中にいた。
筆者の記憶と文字を絡めていくその書き方や、言葉遣い、ゆっくりした文章の時間の流れが、私をそういう感覚にさせたのだろう。
たとえば、行間の広さや余白の使い方。
「読んで読んで!!」という圧はなくて、自分のペースで読んでいいんだよ、と手を広げて待ってくれているようだった。
その声に誘われて、ゆっくりと、ゆっくりと読んでいった。
そのおかげだろうか。
私はこの本に書かれていた言葉に、ひどく支えられた。そういう言葉をキャッチして、ひび割れた心にじっくりと染み込ませ、慰めてもらえたのだ。
ちょうどその本を読んでいた頃、言葉の使い方が好きだった方(その方もnoteを書いていた)がSNSから姿を消し、私は自分のアイデンティティのひとつを失ったような、ひどい消失感に沈んでいた。
そんな、脆いメンタルのなか出会った言葉たち。
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めっちゃ笑った
笑わせてくれる言葉、
そして、
欲しかった言葉が、言いたかった言葉が、そこにはあった。
この本を読んで、本の味わい方、とりわけ文字の見方が変わった。
筆者の言葉をなぞって、じっくり読む。
文字の「フォント」から感情を読み取ってみる。どうしてこのフォントにしたのか、他のフォントとの伝わり方の違いは何かを考えてみる。指さきに意識をむけて紙をめくってみる。
必然的に読む速さは遅くなるけれど、一冊を読み終わった後の充実感とその本への愛着が、一気に増したのを実感した。
本を閉じて帰路へと向かう。
いつも見ていた駅のポスターが、生き生きとして見えて、世界が広がったように感じた。
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