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JW19.5 兄上は主人公

【神武東征編】エピソード19.5 兄上は主人公


七つ目と八つ目の候補地、無人島の高島(たかしま)と高島山(たかしまやま)の一帯に滞在中の狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行に基づく伝承が他にもあるので、ここで紹介したい。

7と8の周辺地図

ここで、長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと)(以下、イツセ)が噛みついてきた。

イツセ「ちょっと待てい! なんや?! 19.5ってなんや!? 20やろう?」

そのとき、三代目水先案内人の宇津彦命(うつひこ・のみこと)が解説を始めた。

宇津彦「すみません。すぴんおふ・・・とかいうやつらしいので、19.5になったんだとか・・・。」

イツセ「これまでも『すぴんおふ』的な話は、ぎょうさん(たくさん)あったやないかっ!」

サノ「まあまあ、兄上。とりあえず、話を進めましょうぞ。」

宇津彦「で・・・では、説明を始めます。前回紹介させてもらった亀石(かめいわ)から、東へ2キロの地点に、イツセ様を祀る、安仁神社(あにじんじゃ)があります。まあ、だから、今回はイツセ様が主人公ってことなんですかね・・・。」

安仁神社1
安仁神社2
安仁神社3
安仁神社4
安仁神社鳥居
安仁神社拝殿

イツセ「どうだっ! サノっ! わしだけが祀られた神社やっ!」

そこへ当然の如く、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)と三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)が文句を垂れてきた。

稲飯(いなひ)「兄上だけ、ずるいですぞっ!」

ミケ「そうっちゃ! ずるいっちゃ!」

宇津彦「安心してくださいっ。お二人も、ちゃんと祀られてますからっ。」

稲飯(いなひ)・ミケ「えっ!?」×2

宇津彦「主祭神はイツセ様ですが、お二人も祀られてるんですよ。」

稲飯(いなひ)・ミケ「初めて祀られたっちゃっ!」×2

イツセ「ちなみに、古来は兄神社と表記されてたらしいな。」

宇津彦「そうなんですよ。ちなみに、現在の地名でいうと、岡山市東区の西大寺一宮(さいだいじいちのみや)に鎮座しております。宮城山(みやしろやま)という山の中腹に作られた神社です。」

宮城山

イツセ「それから、安仁神社の近くの東片岡には、かつて稲戸(いなど)という地名があったそうやな。わしが兵糧を備蓄したことが由来らしい。」

東片岡

サノ「な・・・なにゆえ、今はないのですか?」

イツセ「字名(あざめい)といって、かなり狭い区域を指す地名やかい(だから)、住所では使われんようになったみたいや。岡山市教育委員会文化財課の方にも協力してもらったが、分からんかった。残念だが仕方がない。」

ミケ「次に紹介するのは、安仁神社から北に5キロほどいった地点の山間部にある、麻御山神社(おみやまじんじゃ)っちゃ。」

サノ「兄上、この神社は?」

イツセ「これはな、麻を植えて、それを元に東征のための服を作ったという場所なんや。現在の地名でいうと、岡山市東区の邑久郷(おくのごう)になるっちゃ。」

宇津彦「ちなみに、山そのものも麻御山(おみやま)っていいます。」

麻御山神社1
麻御山神社2
麻御山神社3
麻御山神社鳥居
麻御山神社の門
麻御山神社拝殿

サノ「兄上っ! これも兄上に関することにござりまするか?」

イツセ「そうやっ! わしがいろいろ段取りしちょったことが分かったやろ?」

サノ「よく分かりもうした。兄上のおかげで、東征を続けられたことが・・・。」

イツセ「そういうことや。他にも、船を造った大工に『御船(みふね)』という姓を与えたという伝承も残ってるんや。」

そこに、一代目水先案内人の椎根津彦(しいねつひこ)(以下、シイネツ)が、突如乱入してきた。

シイネツ「イツセ様・・・。今回の主人公は、イツセ様だけではないっちゃ。」

イツセ「なっ!? それはどういう意味っちゃ?」

シイネツ「うちを祀ってる神社もあるっちゃ!」

サノ「一代目だけを祀っておるのか?」

シイネツ「そうっちゃ! では、三代目。説明を頼むっ。」

宇津彦「かしこまりました。亀石(かめいわ)から北に3キロほどの地点にある神社です。その名も神前神社(かむさきじんじゃ)です。」

シイネツ「現在の地名でいうと、岡山市東区の神崎町(かんざきちょう)っちゃ。」

神前神社1
神前神社2
神前神社3
神前神社4
神前神社5
神前神社鳥居
神前神社拝殿

満足気なシイネツの傍らで、サノが一同を見回した。

サノ「さてと、これで、紹介は全て済んだのか?」

宇津彦「はい。これで岡山県の伝承はおしまいです。」

サノ「兎にも角にも、高島宮(たかしま・のみや)の候補地や、兄上の神社を紹介している間に、吉備(きび)の地に水稲耕作が浸透したようじゃな。」

稲飯(いなひ)「では、そろそろ吉備の地を発つと?」

サノ「名残惜しいですが、そうなりまする。」

イツセ「これからは厳しい旅となるやろう。皆、気を引き締めていかにゃならんぞっ!」

一同「おうっ!!」×12

サノ「ん? ×12とは、どういうことじゃ。一人足りぬぞ?」

宇津彦「すみません。僕はここまでです。」

サノ「なにゆえ、そうなるのじゃ?」

宇津彦「僕は水先案内人として、芸予海峡(げいよかいきょう。広島県と愛媛県に挟まれた海峡)の先導が仕事でしたので・・・。」

芸予海峡

稲飯(いなひ)「吉備まで付いてきてもらっただけでも、出血大サービスっちゅうやつなんやな。」

一同「さあびす?」×13

宇津彦「最後まで、様式美のボケをやってくださり、感無量です。旅の安全と、宿願成就を祈念致しております。」

サノ「これまで本当に世話になったな。」

宇津彦「こちらこそ・・・。それと、これが家島(いえしま)までの地図です。ここで四代目が待っています。」

家島まで

こうして、三代目こと宇津彦は、地元の大崎下島(おおさきしもじま)に帰っていった。


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