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JW19 高島宮 七と八

【神武東征編】エピソード19 高島宮 七と八


興世姫(おきよひめ)と別れた狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、嵐に遭遇した。

そんな危機的状況の中、一行を先導する者が現れた。

二代目(一号)「ンア~。」

サノ「おおっ! 二代目っ! 助かったぞ!」

二代目(一号)は、一行を荒波の届かぬ湾に導いて避難させた。

この湾が、水門湾(すいもんわん)である。

水門湾へ

二代目はそのまま、役割を終えたからなのか、石になってしまった。

ここで、一代目水先案内人の椎根津彦(しいねつひこ)(以下、シイネツ)が説明を開始した。

シイネツ「現在は亀石神社(かめいわじんじゃ)が建ってるっちゃ。ちなみに、亀石(かめいわ)は、亀そのものではなく、化身ともされてるに。岡山市東区の水門町(すいもんちょう)にある神社で、旧暦6月15日には満潮祭(まんちょうまつり)がおこなわれてるんやに。」

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亀石神社拝殿
亀石神社社殿
亀岩
亀石神社説明版

サノ「満潮祭? 亀石まつりのことではないか?」

シイネツ「さすがは我が君! そうとも呼ばれてるっちゃ。ちなみに、この祭りは、帆柱から山形にちょうちんを飾り付けた、シャギリ船という船が、笛や太鼓などを演奏しつつ、水門湾内を巡って、五穀豊穣を祈る祭りなんやに。」

シャギリ船

ここで、宇津彦命(うつひこ・のみこと)が三代目として、司会の役目を奪い取った。

宇津彦「この水門湾に直結しているのが、児島湾(こじまわん)です。この児島湾に浮かぶ無人島に、我々は辿り着いたんです。」

児島湾

サノ「もしや、その無人島が、高島宮(たかしま・のみや)の七つ目の候補地では?」

宇津彦「その通り! この島の名前は、ズバリ、高島(たかしま)です。岡山市南区にある島です。神社の名前も高嶋神社(たかしまじんじゃ)です。」

高島
高島神社
高島神社2
高島神社拝殿
高島神社の碑
神武天皇顕彰碑

ここで、博学の家来、天種子命(あまのたね・のみこと)がツッコミを入れてきた。

天種子(あまのたね)「まんまやないか!」

宇津彦「そんなこと言われても、仕方ないじゃないですか。」

サノ「名前など気にはせぬ。それより、どうしてここが候補地なのじゃ?」

そのとき、一代目水先案内人のシイネツが司会役を取り返した。

シイネツ「よくぞ聞いてくださいました。江戸時代の大規模干拓がおこなわれる前の児島湾(こじまわん)は、水島灘(みずしまなだ)とつながり、主要航路になってたんやに。交通の要衝ってことっちゃ。」

児島湾の今
児島湾の昔

サノ「なるほど・・・。じゃっどん、稲作をするのに、無人島を選ぶとは思えぬが・・・。」

シイネツ「さすがは我が君! ここで八つ目の候補地が関連してくるわけっちゃ。」

天種子(あまのたね)「八つ目がここで出てくるんやな。」

ここで宇津彦が、司会の座を奪い取った。

宇津彦「その八つ目というのが、児島湾より北に位置する、高島山(たかしまやま)です。JR岡山駅から北東に約5キロほどの場所にある龍ノ口山(たつのくちやま)一帯を指します。」

龍ノ口山

一同「・・・・・・。」×13

宇津彦「今回は、じぇいあある? って言わないんですね!」

ここで、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)が乱入してきた。

稲飯(いなひ)「山の南西に位置する尾根には、高島神社(たかしまじんじゃ)があるじ。高島宮址と書かれた石碑もあるっちゃ。覚えておいてくれよなっ。ちなみに、後の世には、備前(びぜん)の国府が置かれてるっちゃ。」

高島山の神社1
高島山の神社2
高島山の神社3
高島山の神社4
高島山の神社拝殿
高島山の石碑

宇津彦「この地域は、古来より穀物豊穣の土地だったみたいです。間違いなく、我が君の御指導の賜物ですね。」

サノ「なにゆえ、そのようなことが分かるのじゃ?」

宇津彦「実は1968年(昭和43年)に、山から数キロ離れた地で、遺跡が発見されたんです。その名も津島遺跡(つしまいせき)。岡山市北区にある遺跡です。」

津島遺跡1
津島遺跡2
津島遺跡3
津島遺跡風景
津島遺跡風景2

天種子(あまのたね)「その遺跡がどうしたんや?」

宇津彦「遺跡から、弥生時代前期の水田と集落の跡が、一緒の状態で発見されたんです。日本初です。更に、旭川(あさひがわ)を隔てて東側にも遺跡が見つかりまして・・・。」

サノ「それも同じような遺跡なのか?」

宇津彦「百間川遺跡群(ひゃっけんがわいせきぐん)と言いまして、同時期の水田跡が見つかってます。ですから、この高島山は、吉備(きび)でも、かなり早くから水稲耕作がおこなわれていた地域なんですよね。」

百間川遺跡群1
百間川遺跡群2
百間川遺跡群3
百間川遺跡群風景

シイネツ「この地域は、三角州(さんかくす)で、二つの遺跡は氾濫原(はんらんげん)になるっちゃ。だけん(だから)、この地の人々は、微高地に集落を築き、低地に水田を作ってたんやに。」

宇津彦「氾濫原というのは、洪水時に、川筋から氾濫する低地帯のことです。」

稲飯(いなひ)「そして、ここで採れた米が、児島湾を通じ無人島・・・もとい高島に移送されたということか。」

サノ「なるほど・・・。そこで七つ目の高島とつながってくるわけか・・・。」

宇津彦「なので、七つ目と八つ目を合わせて、一個と見てもいいんじゃないかって思ってます。」

稲飯(いなひ)「汝(いまし)が勝手に決めるなっ!」

宇津彦「いやっ! どっちかっていうと、作者の考えで、僕の考えじゃないんですけど・・・。」

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サノ「とにかく、これで、高島宮(たかしま・のみや)候補地八つ、全部出揃ったわけじゃな?」

宇津彦「はい。しかし、岡山県の伝承はこれだけではないんですよ。」

一同「おかやまけん?」×13

宇津彦「そこは言うんですねっ!」

そのとき、長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと。以下、イツセ)が高笑いを始めた。

イツセ「はっはっはっはっ!」

サノ「ど・・・どうなされましたか? 兄上?!」

イツセ「次回は、わしが本編の主人公になるのかと思うと・・・。これが笑わずにおられようかっ!」

次回、彦五瀬命が主人公になるらしい。



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