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JW18 興世姫の神社

【神武東征編】エピソード18 興世姫の神社


高島宮(たかしま・のみや)の候補地の説明もあと二つという状況であるが、ここで、少し話を中断したい。

というのも、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)が、側室の興世姫(おきよひめ)と別れることを決断したからである。

サノは、本拠地の対岸の地に姫を移したのであった。

そのとき、息子の手研耳命(たぎしみみ・のみこと。以下、タギシ)が、突然、説明を始めた。

タギシ「興世殿が住んだ対岸の建物は、のちに神社となった。その名も、神島神社(こうのしまじんじゃ)。されど、島とはどういうことや? どう見ても島には見えぬが・・・。」

神島神社1
神島神社2
神島神社3
神島神社4
神島神社5
神島神社鳥居
神島神社社殿

ここで、水先案内人三代目の宇津彦(うつひこ)が乱入してきた。

宇津彦「タギシ様。まんまと騙されましたな。」

タギシ「なっ?! どういうことっちゃ!」

宇津彦「タギシ様が持っている地図は、令和年間のもの! 実は、1966年、すなわち昭和41年までは、島だったのですよ!」

タギシ「まっ・・・まこっちゃ(本当)?」

宇津彦「ま・・・まこち(本当だよ)! 干拓事業で陸続きになったんです!」

タギシ「ちなみに、神島神社のある地名は、笠岡市の神島外浦(こうのしまそとうら)だ。しかし、島だったとはな・・・。残念だが仕方がない。ま、そういうことだ。」

宇津彦(うつひこ)「どのあたりが残念だったのか、よく分かりませんが、次に進みましょう。我が君は、狩りをするため、高島から海を渡って神島(こうのしま)に通っていたそうです。そこで、興世姫と、あんなことや、あんなことや・・・。」

恍惚な表情の宇津彦の両頬に、サノと興世姫の拳が突き刺さる。

サノ「そういうことを言う神(キャラ)ではないはずっちゃ!」

興世(おきよ)「作者の妖術に惑わされないでっ!」

作者の陰謀を阻止した、サノと興世姫の顔は、自信に満ち溢れたものだったとか、なかったとか・・・。

そこへ、剣根(つるぎね)が、呼ばれてもいないのに乱入してきた。

剣根(つるぎね)「前回、全く登場させてもらえませんでしたからなっ。では、神島神社の社伝紹介をおこないますぞっ。」

<皇后興世姫命は、引き続き神島にご滞在なされ、島民の尊敬を集めて当地で薨(こう)じられた。島民はさっそく社(やしろ)を建立し、興世明神としてお祀りした>

この社伝を読んで、興世姫は顔を赤らめた。

興世(おきよ)「こ・・・皇后だなんて・・・。そ・・・そんな・・・恥ずかしい。」

サノ「まあ、島の者たちから見れば、汝(いまし)は皇后じゃ。」

剣根(つるぎね)「社伝の通り、この神社には、興世殿が祀られております。地元の人は『おきよさん』と呼んでいるとか・・・。そして、我が君も御一緒に祀られておりますぞ。銅像も立っておりますぞ。」

神武天皇の像

サノ「おお、そうか。それはありがたいが・・・。」

タギシ「父上、如何なされました?」

サノ「興世は、この地で亡くなるのだな。ということは、ここは、興世との永遠の別れとなった島ということでもある。」

タギシ「あっ! 確かに・・・そうなりますな。」

剣根(つるぎね)「申し訳ござりませぬ。呑気に御一緒に・・・などと・・・。」

サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。出会いがあれば、別れがある。だからこそ、再び出会えた時の喜びは大きいのじゃ。それに、この神社では、永遠に一緒なのであろう?」

興世(おきよ)「我が君、再び会える日を心待ちにしながら、お志が成就されることを祈っておりまする。」

サノ「興世よ。最後に言っておきたいことはあるか? 作者曰く、“くらんくあっぷ”というやつらしいぞ。」

興世(おきよ)「さきほどの言葉で、充分でございます。」

そこに正気を取り戻した宇津彦(うつひこ)が再乱入してきた。

宇津彦(うつひこ)「神島神社が創建されたのは、726年、すなわち神亀3年のことです。二人が別れてから1392年後のことです。」

興世(おきよ)「えっ?!」

サノ「なっ!?」

興世(おきよ)「お・・・思ったより長い・・・。」

サノ「ちょっと短くは出来んのか? 50年後とか・・・。」

宇津彦(うつひこ)「申し訳ありませんが、水先案内人の僕には、どうすることも・・・。」

思った以上に長かったことに驚愕する二人。

居た堪れない気持ちの三人。

今回登場しなかった面々は、そんなことなど露知らず、吉備の人々と共に汗を流し、米作りに精を出していたのであった。

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