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怪人は自分のことを怪人と呼ぶか|仮面ライダーBLACK SUNの感想

仮面ライダーシリーズはどちらかというと平成以降が好きで、一番好きなのはオーズだ。
主人公火野映司が、物語の序盤ではただ人助けのためにその身を削る正体不明の男として描かれているのに、後半では誰よりも力に執着していたと明かされるまさしく「欲望」がテーマだったことに気づかされるというすばらしい脚本のうねりに衝撃を受けたものだった。
一貫したテーマを入り乱れる群像劇で見せるというのが平成以降の仮面ライダーシリーズの流れになっている。

Amazon Primeで配信中の「仮面ライダーアマゾンズ」も脚本がオーズと同じ小林靖子ということもあって、やはりすばらしい群像劇となっていた。
人間とアマゾンズという怪人たちの割り切れない関係性を、割り切れないままときには甘酸っぱく、またときに無残に描いて心を揺り動かされた。
そして一つのエピソードには必ず、仮面ライダーがかっこよく戦うシーンも挿入されていてヒーロー物としてもしっかり楽しめる内容になっていた。

さて、同じくAmazon Primeで配信中の「仮面ライダーBLACK SUN」だが、まず最初の感想として「かっこいいシーンがない」だった。造形が昆虫様なのは狙いだったとして、いつまで経ってもかっこいいアクションシーンが出てこないのだった。動きがなんとなくもっさりしていて、かといって打撃の重さも感じないような。フィニッシュブローも決まったのか決まってないのかいまいち分かりにくい演出。要するにカタルシスが得られないのだ。これは仮面ライダーとしてどうなのか。

かっこいいアクションシーンを排除して何を描いているのかと言えば、怪人が人間に差別される世界。怪人差別をめぐって闘争が起きているという設定なのだ。
そんなことあるか?と思った。
怪人が隣りにいて気持ち良く過ごせるか。いや、そもそも「怪人」って何だよ。なんで怪人がいるんだよってならないか?

という俺の疑問は放っておかれ、怪人差別主義者と怪人差別反対者が揉めるというなんとも表層的な世界観のまま物語は進んでいくのだった。
アマゾンズでは自分がアマゾンズであることを隠して命を長らえようとするキャラクターがいた。影でひっそりと暮らすという選択だ。
映画「第9地区」では宇宙人の隔離政策が施行された世界だった。蔑称もあったりして、非常にリアルに描かれていた。

もしリアルに寄せるなら、やはり問題が深刻ならば国として当然取るべき手段を採るはずではないかと思うのだ。怪人を特別に取り締まる法律の制定とか。そうでなければ、国民の不満が噴出し、与党は支持率を下げるはずだ。これは政府にとってよくない。
しかし、物語では総理大臣が怪人を販売して儲けてるという話。無理がありすぎる。

元祖「仮面ライダーBLACK」のファンはもういい大人なので、ゆるい設定ではさすがに物語に没入できない。
役者さんたちの演技はすばらしいし、仮面ライダーの造形もかっこよかったのだけれど、いまいち乗り切れないまま終わってしまったのだった。

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