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休みが息を引き取る夜のアイス

 母の血はアイスクリームで出来ている。
 そう思うくらいアイスを食べるのが好きで、気がつくと冷凍庫にアイスが補充されている。流石に秋も深まるとアイス休養期間になるが、ちょっと暖かくなるとまたちまちまと溜まっていく。
 なんなら二月三月というちょっと予想もつかない季節に冷やし中華を始めるような母なので、当然のルーチンなのかもしれない。

 基本はバニラアイス。あとはチョコ、抹茶。真夏の時期以外氷系は少なくて、大抵クリーム系。フルーツ系の味は柑橘系以外あまり手を出さない。
 あんまり当然のようにあるものだから、いつしか外でアイスを食べなくなった。セットで付いてくるタイプのバニラアイスを食べるとバニラビーンズ入りのアイスでびっくりする。この間、そうしてセットのアイスを食べていたら、あとからやってきたどこぞのおじ様がコーヒーとバニラアイスを頼んでいたのでにっこりした。美味しい組み合わせですね。

 そんなわけで、夜はアイスである。
 しかしながらわたしは既にいい歳で、母も老齢だ。小豆のアイスは硬すぎるし、そもそもひとつのアイスを食べ切ることがつらくなってきた。それでも買うのだからもはや執念である。
「アイス食べる〜?」
 そう言って母はモナカのアイスを半分に割る。食べないとそのまま封をして仕舞い込むそうだが、折角なのでいただくことが多い。

 ただの最中もあんまり食べないねえ。食べたいかもしれないから和菓子屋に行こうか。そう休み明けを思って気づく。
 もう暑い時期だもの、最中より水羊羹ね。

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