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Boy meets world in NY.

土曜日のBUSHBASHは、ここ最近の全ての答え合わせだった。

大袈裟に聞こえるかもしれないが、驚くほどに「全て」だった。

inch magazine issue2を購入したのは年明けだった。

それまでの私は、ドアの穴からNYの社会を覗いていたようだった。
対岸であると同時に、市民活動における憧れの地であるNY。常に思考のすぐそばにはあるが、見える世界は断片的だった。

ドアの穴から見えていた世界が、inch magazineを読んでから変わった。

NYの特異性を「自分ごと」と捉えたライターたちによって、ガラパゴス的な世界に生きる私の日常にもしっかり溶け込んできた。

社会システムの困難や人種差別も、人との付き合い方や日常の楽しみも。

私だってfull of sadnessのこの都市を、この社会を、少しでも良くしていきたい。
自分や身近な人のためではない。全ての生活者のために。

だからドアを開けて街に出た。
Boy meets world.

———
「こちら秋山さん、すごくコンシャスなライターの方なんです」
inch magazineの菅原さんは、人が集まる場所で私をこのように紹介してくれる。

初めてそう紹介されたとき、嬉しさと感動でその場で踊りたくなった。

石田昌隆さんの写真展のクロージングパーティで、名だたるカルチャー人たちにそう言って紹介してくれた4月末、ヘトヘトになりながら一つの原稿を入稿した頃だった。

私は普段、地方公務員として働いているのだが、あるミニコミ誌に福祉とストリートカルチャーについて書いた文章を寄せた。

ここ数年感じてたことをあまりにも力をいれて書いたので、満身創痍でもうしばらく書くのをやめようかなと思っていた。

「コンシャス」という言葉はあまり一般的には使われない。それは正にヒップホップの文脈で語られることが多い。
だからこそ、踊りたくなるほど嬉しかったのだ。

私はライター。
グラフィティライターも憧れだ。
でも私は、誰かのためにのコンシャスなライター。

———
Inch magazine issue 1には、仙人掌の自伝的小説「ゴーサムウェー」がある。
最近issue1も増刷したので、ぜひ手にとってもらいたい。

この小説こそ仙人掌の様々なリリックの答え合わせではある。

その上で、ERAのPassport feat.仙人掌「風呂のない団地で鳴らすデタラメ」の中でもしヒップホップと出会ってなかったら、どうなっていただろうと思った。

おこがましいのは承知だ。

もし私が、あの団地の部屋に定期訪問をして、彼と彼の家族を救えただろうかと。
社会や行政のシステムだけで、あの世界から助け出すことが出来ただろうかと。

福祉のストリートカルチャーについて書いた文章でも、その帰結の答えがあまりにも不確かになってしまった。

仲間や音楽がなくても、福祉や給付やシェルターが救えるかもしれない。そんな風に、社会としての受け皿を多くしたいと文章を続けた。

ただ、違うと思った。これは答えではない。

土曜日のBUSHBASH のゲストトークで、菅原さんは入管法の改悪について話していた。

inch magazine issue2の構想の発端は、名古屋入管の問題だったことは初めて知った。
ここ最近になって当時の映像が開示されたが、本当に辛い。

I can’t breathe.

今、私たちが暮らすこの都市で起こっていることだ。

ゲストトークの後は仙人掌のライブだった。

仙人掌は、MCで菅原さんの話した入管問題も引き取った上で
「この社会では、それができる人が声を上げるべきだと思う。この社会には、何のシステムも分かっていない人もたくさんいる。だから、できる人が声をあげる、情報をシェアする。そうするべきだと思うんです」

大きく頷きながら私は泣いた。

システムも大事。税金が適切に再分配されて、社会システムが構築されるのも重要。
ただ、インディペンデントな生活者たちが連帯して誰かを救うことこそ、私たちができる第一歩なのではないか。

受け皿に落ちる前に、「大丈夫だよ」と手を差し伸べる。ハンドシェイクをして、フィストバンプをして。

これが今のところの私の答えだ。

※福祉とストリートカルチャーについて書いた文章は、HOMIE BOOKSのおまけ(買わなくてもおまけ)としてイベントで頒布します。ぜひお手に取ってみてください。

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