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都構想に住民投票は不要だった!様々なルートを探る

都構想の住民投票は過去2度否決されましたが、維新は「都構想を諦めたわけではない」「別ルートを模索する」としています。しかし具体的にどのようなルートを辿るかは表に出てきていません。
なので、都構想実現までどのようなルートがあるかを整理しておくためにこのブログを書こうと思います。

まずは2回目の都構想案の概要をおさらいしましょう。
・大阪市という1つの政令指定都市を5つの特別区に分割する
 ⇒住所が変更される
 ⇒大阪市長と大阪市会の役割はそれぞれ5特別区長と5区議会へ
・広域行政に係る事務と財源は府に移管される
・特別区発足時には、それまでの住民サービスは維持される


反対派は何を理由に反対したのか。JX通信社によるアンケート回答で多かったのがこの3つ。
・住民サービス低下の不安がある(16.9%)
・区名や住所が変わるから(7.8%)
・コストがかかるから(5.2%)

言い換えると、反対した人は「住民サービスの維持が担保されれば賛成」「住所が変わらなければ賛成」「コストがかからなければ賛成」に投票行動が変化する可能性があります。住民投票後の広域行政一元化条例や、大阪市立高校の府への移管について大阪市民が反対していないのを見ても分かるとおり、権限や財源の府への移譲には大阪市民は意外にも拒否反応はないんですよね。
住民サービス低下への懸念は区長と区議会次第でどうにでもなる話で、どれだけ役所や推進派やマスコミが説明しようとも限界があります。反対派に不安を煽られたら打ち消すことは難しいでしょう。ここについては今回、維新は十分に対策を講じたと私は見ています。
また、コスト面は限りなく削減することに成功しているため、今回の5区案ではこれ以上削減する余地は残されていないでしょう。

となると、糸口は「区名や住所が変わるから(7.8%)」にあるのではないでしょうか。


以上を踏まえ、これから大阪市はどのようなルートで大阪府市の二重行政の解消を図るべきか。
【現状の法律では不可能】
・大阪府全体での住民投票
・市分割による特別区設置から住民投票プロセスを無くす

【現状の法律で可能】
・過去2回と同じ中身で3度目の住民投票
・特別区設置を見据えた総合区の導入
・大阪市域を拡大する
◆大阪市を今の市域のまま1つの特別区とする


最後の「大阪市を今の市域のまま1つの特別区とする」という案の実現可能性を探ってみるのが今日の本題です。

そもそも今の特別区設置法では、市を分割せずそのままの市域で特別区に移行する際は、住民投票は不要となっているのです。
1特別区に移行するメリットは5特別区と大差ありません。政令市の広域に係る事務と財源を府に移管するというという根幹は同じ。決定的なメリットが、住所変更をしなくてよい(または最小限の変更で済む)というもの。

条文を読み込むと、今と全く変わらない住所で特別区に移行できるとも取れることに気が付きました。「特別区名は“〇〇区”とする」とは実は書いておらず、協定書で仮決定したものを総務省に諮ることになっているのです。
なので、やろうと思えば全く変更しないか、大阪市の部分だけ大阪区(仮称)とすれば問題ない可能性があります。具体的にはこのような住所に。

大阪府 大阪市(特別区の名前が大阪市) 中央区島之内(ここが町名)~

大阪市民へのアンケートでは、大阪市というよりも区・区名に愛着があるという意見が無視できない数あったようなのです。町名に区という文字がつくのは違和感が否めないものの、住所変更への抵抗を極限まで抑えることを目標とするならこれしかありません。
前例として、兵庫県姫路市は政令市ではないのに町名として飾磨区、網干区といった住所があります。
これにより都構想反対理由の7.8%を占めていた「区名や住所が変わるから」が解消されるでしょう。さらに、よく目にした「大阪市がなくなる」という不安煽りも言いづらくなるのでは。

ここで推進派から「適正規模の基礎自治体にはならないじゃないか」との反論が出ると思うので説明します。
大阪市がそのまま1特別区になった場合、将来的に分割できるのか?ですが、地方自治法第七条には以下のように書いてあります。

“市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。”

よく読むと、対象に特別区が含まれておらず、特別区の分割は現在不可能と解釈できます。これは例えば、人口91万人の世田谷区も分割できないことを示しています。(東京都は例外などの情報がありましたらご教授ください)これを解決するため“市町村の廃置分合”の部分を“市町村、特別区の廃置分合”と改正すれば、特別区の分割が可能となります。ここさえクリアできれば、1特別区からの分割を住民投票ナシで施行することができるでしょう。

日本で唯一、都構想が実現した東京市の廃止・分割は戦時中の1943年。ここから大阪維新の会が誕生するまでの期間、全国どの地域でも都構想の動きは起きませんでした。
特別区設置法の立法という高いハードルを乗り越えられたんですから、地方自治法第七条に「特別区」を加えることのハードルが乗り越えられないはずはありません。特別区の分割のみ住民投票が必要だとの意見が出る可能性もありますが、それをやってしまうと、このルートは意味がなくなってしまうので抗戦していただきたい。

とにもかくにも、住民投票のないルートの模索は必ず選択肢に入れておかなねばなりません。分割しても住民投票プロセスを無くすよう現行の特別区設置法を改正するか、1特別区を後に分割する場合は地方自治法第七条を改正。この2ルートが現在思いつくところです。

来年の統一地方選は維新が初めて、都構想を掲げない戦いとなります。都構想については大阪維新の会・維新大阪市議団の中でも方向が定まっていない様子が伝わってきますし、ひとまず都構想は閉まっておいて、何かしらの動きがあるのは早ければ統一選のあとになるでしょう。さらにそこから4年後、8年後になるかもしれません。

いずれ必ず国会議員団の協力が必要になると思うので、大阪組と国会議員団の両輪でいつの日か都構想を実現してほしいと願っています。

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