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「香食」

「香り」というのは、洋の東西を問わず、古くから人々の生活の中で大きな役割を果たしていたようだ。
特に宗教の場面では欠かせないもので、香りで邪気を払ったり神の世界と繋がったり、さらには疫病を遠ざけるためにも使われた。

香りは目には見えないけれど、明らかに人の心を動かす不思議な力を持っている。だからこそ、なんとなく目に見えない世界との橋渡しをしてくれるような感じがしたのかもしれない。

仏教でも、まずは墓前霊前にお線香を供える。
やっぱり香りはあの世まで届くのかなあと思っていたら、届くどころか、どうやらあの世では香りを「食べる」のだという。
というより、むしろ香りぐらいしか食べられない。

これを「香食(こうじき)」というらしい。

造花じゃなくて、必ず生花を供えるのもそのためだ。
食べ物も、蓋を開けたり封を開けたりして、香りが立つようにお供えしてあげたほうがいいのだという。

だからお線香も、必ずしも伝統的なお線香でなくても、生前その人が好きだった香りを供えてあげればいいんですよ、とお坊さんに言われた。

そして、あともう一つ食べられる(感じる?)のが「湯気」だそうだ。
だから、温かいお茶とか炊きたてのご飯とか、そういうものをお供えすると喜ぶんだと。

それを知って以来、朝は必ず、夫婦ふたりともが大好きだったマリアージュ・フレールの「マルコポーロ」を淹れてお供えしている。

これは本当にいい香りなので、あちらでも最高に贅沢な朝食タイムになっているに違いない。

そし、て夜はもちろんワインだ。

ワインは香りが8割と言われるぐらいだから、香りが食べられるのなら、もうワインなんて半分飲めたようなものだ。
ビールの喉越しは味わえないだろうが、ワインなら一緒に楽しめる。

ワインの香りは、自然と人が生み出す究極のアロマブレンドだ。
その日の気分(もちろん私のw)に合わせて香りを選べば、私の心も癒されてこれまた一石二鳥。

この辺りの話はワインアロマセラピー協会のHPにも書いているので、ご参照いただきたい。

あちらとこちらを繋ぐ、「香り」というものの奥深さ。
この貴重な感覚を、ぜひ一人でも多くの方に感じてもらいたいと思う。

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