見出し画像

プロの設計士に聞く!介護リフォームほんとのところ?!森川圭悟さん(一級建築士):後編

介護リフォームについて、一級建築士である森川圭悟さんに、山本編集デスクがさまざまな疑問をぶつける今回の試み。前編に続いて後編をお届けします。

3年前に実際にリフォームをしたという山本デスク。その時の経験から、よい業者の選び方に話が及びました。
業界を熟知している森川さんだからこそ、「これ3年前に知っておきたかった…!」という、「へぇ〜!」なお話をたくさんお聞きできました。
介護リフォームをお考えの方は必見!!ですよ!

画像1

森川圭悟氏 プロフィール
1982年大阪府生まれ。大阪芸術大学芸術学部建築学科卒業。一級建築士。株式会社YAN一級建築事務所、豊和開発株式会社一級建築士事務所を経て、2019年に自身の森川建築設計事務所を設立。独立前より、(福)基弘会の運営するココナラ巽やリズムタウン仙台の竣工に携わる。

リフォーム業者選びってどうしたらいい?!

山本
3年前にリフォームしたとき、業者選びにすごく悩んだんです。大手、中堅、中小と3社に同じ希望を伝えて、相見積もり取ったんですね。
そこで、図面も3社3様、金額も倍以上の違いがあって。
そのときに、一番安い金額だったところは「大丈夫?」と思っちゃって。結局、一番きれいな図面を見せてくれた大手、一番高いところに決めたんですけど…業者を選ぶときの決め手ってあるんでしょうか?
ちなみに、一級建築士と二級建築士の違いもわからないし…。

森川
リフォームは、資格なくてもできるんですよ。主要構造部っていって、柱や屋根をさわらなければ、資格はなくてもできちゃう。
一級と二級の違いは、扱う建物の規模なんです。二級は住宅レベルで、一級は限度はなくて、大きなものも作れます。
大手さんでも、住宅を専門にしているところは二級建築士さんが多いです。それだけの違いです。

山本
そうなんですね!私、一級建築士と二級建築士の違いって、ホームヘルパーの一級、二級みたいな感じで、実務経験とかの違いかと思ってました…!

森川
住宅の業者選びって、車とかと違って、まだできてないものを契約するわけじゃないですか。だから、会社の信用度って大事やと思います。
もちろん、どこに価値をおくかなんですけど、やっぱり会社によって同じオーダーでもできあがるものは多少違うと思います。なので、自分がどこに価値をおくか、そして金額との天秤かなと思いますね。
ただ、みなさん迷われるし、メリットデメリット両方あると思うので、僕は建築士として間に立ってアドバイスしたりします。

山本
じゃあやはり判断するときはその会社がきちんと実績や会社情報を公開しているっていうことは大事なんですかね?

森川
そうですね。自分が望んでいるものと同じような建物を手掛けているかは見ますね。規模は小さくても似たような実績があれば、金額が安くても信用できますよね。
大手は、手掛けた数が多いから、その分情報量も多くて、過去の実績と情報をちゃんと管理できてるんですよね。社内でフィードバックもきちんと蓄積し、それだけミスも減っていくので品質が安定するんですよ。

山本
なるほど…!今、しっくりきました。

森川
大手はやはり会社規模も大きいしCMもしているから、見積もりは高くなりますよね。
だから、業者選びはちゃんと見積もりしているかどうかもポイントなんですよ。
僕がやるとしたら、僕は建築士なんで、図面を書いてから業者に見積もりを取ります。そこで、抜け漏れがないかとかはきちんと見ます。

山本
ということは、図面を先に引いてから、その図面で相見積もりとったほうがよかったということですか?
でも、3社がそれぞれの図面で見積もりを持ってきたので、私はできなかったんです。これってどうすればいいんでしょう??

森川
それはきっと、その3社とも設計施工だと思うんですよ。設計施工というのは、1社で設計も施工も一緒にやることなんですけど。

山本
なるほど!じゃあ先に設計の話を詰めてから、施工の会社に1つの図面で相見積もりを取ればよかったんですね。

森川
そうですね。住宅っていろいろやり方があって、大手の住宅メーカーはだいたい設計施工です。設計も施工もいっしょでコミコミの見積もりになってると思います。工務店さんも同じかな。
一方、僕のような設計事務所がありますが、こちらで図面を描いて、その図面で工務店さんやゼネコンさんに見積もりを依頼するという方法もあります。まあ、設計事務所に住宅を依頼する人はまだまだ少数派やと思いますけどね。
まあ、やり方はいろいろありますが、多くの場合リフォームであれば設計施工の業者がやるのがまだまだ一般的ですかね。

山本
逆に言えば、新築であれば森川さんのような設計士さんに図面を引いてもらってから相見積もり取るのもありですか?

森川
そうですね。一般的には、みなさん家を建てるとなったら大手ハウスメーカーさんに問い合わせるでしょうから、設計士に相談するっていう発想がまだないかもしれないですね。
でも、やり方としてはありですよ。

山本
そうなんですよね!3社も相見積もり取りましたけど、3社とも仕様も図面も違うから見積もりも違うし。だから結局は一番しっかり提案してくれていた高いところを選ばざるを得なかったという…。
じゃあまず設計士さんを探せばいいのか。

森川
そうですね。同じ希望を伝えても工務店さんによって提案内容が違うということであれば、先に設計士さんとやる内容を決めて、その図面を描いて相見積もり取れば、たぶんそんなに差は開かないと思うんですよ。
そうなれば、ハウスメーカーさんは候補に上がってこないと思います。メーカーは設計から施工までをすべてやるので。だから竣工だけ手掛けてくれる工務店さんに依頼する感じかな。

設計士さんに出会うには?

森川
設計士にコンタクト取ろうと思ったら、多いのはやっぱり紹介ですけど、その他には建築系の雑誌、「HOME」とか「モダンリビング」とかに名前が出ていたりするので、そこからアポイント取ったり。
あとは、建築家に直接話しができるイベントがあるんです。百貨店なんかでやってるんですが、そういう相談会で出会うこともできますよ。

山本
なるほど!安い買い物じゃないからみんなこだわりたいですよね。でもそのやり方を知らない人が多そう。誰に相談したらいいのかもわからないでしょうし。

森川
まあでも、一番多いのは自分の家買った不動産屋さんに相談して紹介してもらうのかなって思います。

山本
あとは、これは知っとけ!みたいな補助金制度とか減税制度とかってありますか?

森川
最近だと、ブロック塀の改修したら自治体から補助金が出ますよ。大阪で地震があったときに崩れたでしょう?古いものはやっぱり危ないのでね。
あとは、住宅は対象外ですが防犯カメラ設置にも補助金が出たりしますね。

ガスかIHか問題は人生設計そのものである

森川
リフォームはケースバイケースなので、「絶対ここはこうしとけ!」みたいなのはないですよね。その人が不自由になる部分は違うじゃないですか。体が不自由になる場合もあれば、認知症になることもあって、動けるけど制限しないといけないとか。

山本
そうですよね。
その話で思い出したのは、私がケアマネジャーをしていたときに悩んだのが、IHにするかガスにするか問題。
私たちが関わる人ってすでにそのとき認知症になっていたりするので、その時点で娘さんから火事が怖いからIHにしたいと相談があってすごい悩みました。
IHだと火事の心配は少ないけど、その人は使い方がわからない。でも、ガスなら使い慣れているから料理もできる。
IHにすることで、それまでできていた「調理」というその人の能力を奪うことになるんですよね。だから、リフォームのタイミングで、ゆくゆく認知症になったときのことを考えて、IHにするなら元気なうちにしといてほしいなって思います。
ずっとガス使ってきてて、認知症になったからIHっていうのは違うなって。そのときにはもう遅いというか。
そのへん、森川さんどうですか?

森川
僕個人としては、ガス派ですね。IHだと卵焼きうまく作れないからです(笑)。慣れだと思うんですけど、IHって火力強いからすぐ焦がすんですよね。見えないから火加減が難しい。
だから僕が使えないくらいやから高齢者の人はもっと難しいかもしれないなと思います。
まあでも、汚れないからIHがいいっていう人もいますしね。

山本
なるほど。そうですね。
私としては、やっぱり認知症が始まる前からIHに慣れておくことが、家族を困らせないことにつながるのかなぁって思ってるんですよね。これは女性目線かもしれないですけど。
でも私の親戚はリフォームのタイミングでもう一回ガスにした人がいます。IHだとチャーハン美味しく作れないからと。ガスだからこそ美味しくできるものがあるんですよね。

森川
僕の卵焼きと一緒ですね(笑)。

山本
そうですね(笑)。だから認知症になったら潔く料理をやめると決めるか、認知症になっても安心してなるべく長く料理できるようにIHに慣れておくかは、自分の人生設計なんやろうなと思います。

(対談ここまで)

いかがだったでしょうか?
最後は、介護のエキスパートである山本デスクのプロ目線もうかがい知ることができた今回の対談。私も離れて暮らす両親は、幸いまだしっかり健在なので、だからこそきちんと考える必要があるのかもしれないな、と、認識を新たにさせていただきました。

いずれにしても、両親にとっても、もしかしたら私にとっても、「終の棲家」となるかもしれない家を、長く快適に暮らせる場所として大切に「育てて」いきたい気持ちになった今日このごろなのです。

編集:ikekayo

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?