皮膚病の治療方針 〜皮膚科外来のご案内〜
今日のテーマは ミモザ動物病院 を受診されることが多い、犬のアトピー性皮膚炎、膿皮症の治療方針について書きたいと思います
まずは、アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎の治療は僕が獣医学生だった20数年前とは大違いです
この20年で大きな進歩がありました
当院では、そのような新しい医療も取り入れつつ、体への負担を考慮し、長い目で見てより良いと思える治療を追求しています
そこで、一つ目は「アトピー性皮膚炎」の治療に対する考え方について書こうと思います
最初に要点を書きます
“飼い主様の要望とペットのコンディションや性格に合った、無理なく長く続けられる 最良の方法 を一緒に探す”
これが ミモザ動物病院の診療方針です
アトピー性皮膚炎は、生涯向き合わないといけない皮膚病です
100%健康な皮膚の状態に戻すことを目指すのではなく、70点〜80点でいいので、色んな意味で無理がなく、長く続けらる治療を目指します
長期的に無理なく続けられる方法を見つけるということが非常に重要です
治療について詳しく説明します
治療の主役は“薬”と“スキンケア”です
まずは飲み薬について
主にこの2つの薬を使います
・プレドニゾロン(ステロイド)
・アポキル
プレドニゾロン
効き目が速く、効き目が強く、安価であるというメリットがあります
副作用(肝臓への負担、免疫力の低下、筋力の低下、皮膚が薄くなる、脱毛など)が強いというデメリットがあります
アポキル
効き目が速く、効き目が中程度、副作用が少ないというメリットがあります
高額であること、作用時間が短いというデメリットがあります
これらの薬のメリットとデメリット、飼い主様の要望、ワンちゃんの性格などなどを考えて、一番合っている薬、合っている投薬プランを探します
もちろん、飼い主様と相談して
次にスキンケアについて
皮膚表面のバリア機能を守るために、スキンケアは欠かせまん
低刺激で保湿作用のあるシャンプーが有効です
保湿スプレー、保湿フォームも使います
他にはぬり薬を使ってもらう場合もあります
主にはステロイド系の薬ですが、飲み薬と違って全身への副作用は少なく、安全性は高いです
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の併発であれば、アレルギー用の療法食も必要となります
“飼い主様の要望とペットのコンディションや性格に合った、無理なく長く続けられる 最良の方法 を一緒に探す”
例えば、
・副作用を避けたい
・通院回数を少なくしたい
・シャンプーは自宅ではできない
・投薬回数を減らしたい
・なるべくお金をかけたくない
などなど
例①「副作用は最低限にしたい」ということを最優先にされる飼い主様には、まず食物アレルギーの可能性を考えて、除去食試験(*1)を行います それでダメだった場合は、アポキルをお勧めします 多くの場合は外用薬を併用し、内服薬による全身への負担を軽減させます それとシャンプーを頑張ってもらいます
*除去食試験とは約1ヶ月間、食物アレルギー用のフードのみという食事制限を行い、薬を使わないでも食事療法だけで皮膚炎が改善するかどうかを判断する試験のことです アレルギー性皮膚炎のうち、10%くらいのわんちゃんが除去食試験で皮膚炎が改善します その場合、薬を使わずに(または少量の薬で)皮膚のいい状態に保つことができます
例②「費用をできるだけ抑えたい」ということを最優先にされる飼い主様には、プレドニゾロンをお勧めします 皮膚炎が改善してきたら、薬の分量を減らしていきます 皮膚病変が狭い範囲なら外用薬を最初に選択します それとシャンプーを頑張ってもらいます
自宅でシャンプーをすることが難しい場合は、薬用シャンプーを持参してトリミングショップにお願いすることも可能だと思います
次に「膿皮症」という皮膚病について
膿皮症はもともと皮膚にいる黄色ブドウ球菌という細菌が原因で起こる皮膚炎です
健康な皮膚にもいる常在菌であり、他の細菌やウイルスなどから身を守ってくれるいい菌でもあります
それが異常に増えすぎることで皮膚炎が起こるのが膿皮症です
なぜ、常在菌が異常に増えるのか?ということがポイントです
例えば、
免疫力の低い子犬や老犬
病気で免疫力が低下している(特にホルモン異常など)
高温多湿な環境
体質(アトピー体質、脂漏や乾燥などの皮膚性質)
体の特徴(皮膚にヒダがあるなど)
などの原因が考えられます
常在菌が増える理由を突き止めて、そこを改善しなければ膿皮症は繰り返し起こります
子犬の膿皮症であれば、成長とともに体が強くなり、膿皮症は起こらなくなっていきます
ホルモンのバランス異常であれば、そのホルモン疾患に対する治療によって防ぐことができます
でも、アトピーや脂漏など、ずっと続く体質的な問題であれば、上手に付き合っていかなければなりません
シャンプーや保湿などのスキンケアを行ったり、お薬の力を借りるなどして、かゆみを抑え、皮膚のコンディションをより良い状態に保つことを目指します
高齢であったり、体質的な問題であったり、完全に消えない問題がつきまとい、膿皮症を繰り返す場合は殺菌力のあるシャンプーによる薬浴を定期的に行ったり、消毒薬を患部に塗るという方法が有効です
抗生物質の長期投与や、飲んだり飲まなかったりを繰り返すことはオススメできません
抗生物質に対して抵抗力を持つ耐性菌が増えてしまうからです
耐性菌が引き起こす膿皮症はとても厄介です
それを避けるために、殺菌シャンプーを使って薬浴をします
ミモザ動物病院 の方針
ミモザ動物病院では、100点満点の皮膚の状態は目指しません
上に書いたこと以外にも重要な要素があり、バランスよく、長く続けられる方法がベストだと考えています
“飼い主様の要望とペットのコンディションや性格に合った、無理なく長く続けられる 最良の方法 を一緒に探す”
この考え方を大切にしています
診断が間違っていていると、処方薬が効かないどころか、皮膚病が悪化することもあります
薬の使い方を間違えれば、副作用で苦しむことがあります
アトピー性皮膚炎、膿皮症の治療でお悩みの方は、ぜひ一度、僕に診させてください
その他、皮膚のトラブルについて、どんなことでも相談してください
お力になれると思います
今回は以上です
獣医師 水越健之
自己紹介の記事です
少年時代から獣医師になるまでの生い立ちを綴りました
いわゆる、自己紹介の記事です