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ここから

また、この景色を見られるとは…
全くもって思っていませんでした。

21年前の秋、私は突然、精神病になりました。

1ヶ月後、今は亡き母が、公園に私を連れ出してくれました。
少しでも良くなればと。

けれど、願いとは裏腹、当初3ヶ月と言われた症状は治らず、
1年経ち、2年と経ち、3年経っても治らず、

5年。 そして、10年

15年。 20年と過ぎ…。

もう治らないと思っていました。

学生の頃に抱いた夢も…
諦めないけれど、
小さな形でしか叶わない。

一生付き合っていくには重い。

屍となった身体を、
空っぽの心が引きずっていく。
前のような方向へ。
生き延びるような方向へ。

立ちこめる雲が厚過ぎて、
目の前も見えず…。

希望というには程遠い微量の未来を、
胸の奥で血が滲むくらい握り締め、
今を越し、
また重い明日を迎えていく。

空が青ければ青いほど、
カレンダーがめくられれていくほど、
闘病の日々は
悲しみの色を濃くするだけでした。


けれど、21年目の夏。

闘病は、いきなり、大ドンデン返しで好転しました。

そして、
私は実家に帰ると決めました。
今の自分なら帰れる。
最後のチャンスだと。

父と暮らそう。
父と生きよう。と。


私、ここから笑います。

ここで、笑います。


お母さんへ 〜

また、この景色 見れたよ。

空が青いよ。 秋だね。
戻ってきたよ。
やっと 帰ってこれた。

長かった。

また、この景色 見れてるよ。
公園に来てるよ。


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