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できる限り使う

子供の頃、特に8〜11歳くらいに川や小高い森丘で1人で遊んでいることが多かった記憶があります。

川ではフナやナマズ、ザリガニ、蟹、カメ、レアなものだと鰻、タイコウチやタガメなどをタモ(網)で獲りまくるなんてことをしていました。あくまで当時の体感ですが。

山では森丘というか神社のあった小さな山の裏手に、大きな曲がった木が生えていて、その大きさも興味をそそったのですが、根がどこまで続いているのか気になって掘り続けていました。

今思うとすごく贅沢な経験をしてきたのだなとしみじみ。


そんな中、僕の記憶の中でトップレベルに衝撃的な光景を目の当たりにしました。

9歳くらいの頃だったと思います。

いつもの川でフナなどを取ろうと鼻息をフンフンさせながら川縁に行くと、川にプカプカ浮いている物体がたくさん見受けられました。

確認すると、50㎝以上もある鯉や主なのかと思うほどの鯰。大量のフナなどの魚たちの死骸でした。

初めてあんなにたくさんの死に直面し、9歳の僕の頭は反応できませんでした。

しばらく呆然として、そのまま帰り、誰に話すこともなく時間が経ちました。


自然に優しい恒久的な何かをしたいと意識するようになったのは大人になってからですが、この時の衝撃が頭のどこかにあったことは間違い無いでしょう。

革を扱うということを決めた時の理由は、人間が食べたもののいらない部分を加工してできたものだからです。長い年月をかけて生み出した人間の叡智を感じたからです。

自然のサイクルに寄り添ったものづくりをしたいと考え、同じような考えの作家さんたちとも仲良くなり、仕事場を拝見させていただくことも増え、みんななるべく材料を使い切る為の努力を惜しまないんだなと確信を持ち、それでも出てくるゴミをなんとか有効活用できないか考える日々でした。


Ring-ne(輪廻)という活動をしています。それは1人の仏師さんとの出会いから生まれました。

仏師が使う木はヒノキやクスノキ、白檀という香木です。
仏像を製作するので、もちろん素晴らしい材料を使います。
それは何年も向きなどにも気を使いながら乾燥させ、完成後にお寺にお納めした後に割れてこないように厳選された素材です。

その素晴らしい素材を凄まじい技術で仏像として完成させるのですが、彫刻なのでどうしても破片がたくさん出るので、それを燃えるゴミや産業ゴミに出さざるをえない状況だそうです。


その話を聞いて何かに使うことができないだろうかとずっと考えていました。

仏像になる部分は材料の一部。それ以外は今まで処分されていた。
でも処分されていたものも元々大切に乾燥させて仕上げられた材料であり、あの芳醇な香りを放っている。是非とも使わせていただきたいと思いました。

ヒノキもクスノキも非常に安心する芳醇な香りで化学製品の香りが苦手な方にもオススメのものです。香り袋としても、消臭剤としても乾燥剤としても防虫剤としても優秀で数ヶ月以上香りが持続します。

香りが無くなった後も花壇の土に混ぜたり、ペット用のおトイレに混ぜたりして最後まで活用できます。


仏師さん以外にも畳屋さんや花屋さんに賛同していただき、畳の端切れや門松の廃棄物から竹を頂き活用するという活動になってきています。


いずれはもう少し大きなコミュニティーになるようにして、地域の産業で出てくる活用できる素材を検索ができる地図などを作りたいと思っています。


全ての素材を大切にする活動だと思い、生涯かけて進めていきたいと思います。

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