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コンビーフユッケ・ユニバースのつくりかた ~ScaniverseとSunoAIで「バーチャルおもしろ体験」を作ろう~

こんにちは、菊花です。

 今回は、私が気まぐれで制作したフォトグラメトリワールド、
「コンビーフユッケ・ユニバース」の反響(おもに一部界隈)が予想以上に大きかったことを受け、どういう思惑で作ったのか、またどんなツールを使って素材を作成したかなどを記録として残しておきたいと感じたため、備忘録的にまとめたものとなります。

なにがあったのか雑要約

就活で憂鬱になってたので、気分転換にフォトグラメトリワールドをつくってみる

ただモデルを置くのも味気ないので、アクセントとしてsunoAIで生成した歌をBGMにしてみる

Twitterでの反応がやけに多く、しばらく動向を観察する

大所帯Publicインスタンスが開かれているのが気になり、フィードバック調査も兼ねて行ってみる

聞き込みの結果、AI生成のBGMに中毒になる人が一定数存在することが発覚、曲のYouTube投稿をせがまれる

なんか面白いムーブメント起きてるから記録しておくか、と思いnoteを書く


きっかけ:原動力の再解釈

 当時(2024年3月中旬)の私はちょうど就活のために自己分析に集中して取り組んでいて、コンテンツ制作をしばらくお休みしていました。一応、「コンテンツ作れる余裕が出てきた時のために素材集めとくか」とは考えていて、愛用している3Dスキャンアプリ「Scaniverse」を使って良さそうな被写体を見つけてはスキャンし、3Dモデル素材を収集していました。
 結果的には3Dスキャン界隈で定番の料理スキャン(いわゆる飯グラメトリ)の風潮に乗っかった形で、「飯グラメトリワールド作るか~」という雑な計画を立てます。

 普段の私は「バーチャル空間で体験できる面白いコンテンツを作りたい」を原動力に、そして面白さのベクトルを技術的な部分(感覚提示・インタラクション)に向けてコンテンツを制作しています。しかし、そのような部分にこだわるにはギミックの考案や実装作業などが必要不可欠です。これらの作業にはある程度腰を据えた状態で取り組みたいという個人的な事情もあり、最近は制作活動にあまり精力的に取り組めていませんでした。
 そこで、いったん原動力の部分に立ち返り、「体験の面白さ」を異なるベクトルを使って再解釈した結果、比較的少ない労力でも達成可能な「突拍子のないコミカルな面白さ」を表現してみようと思い立ったわけです。
 
 いわゆる箸休めというやつですね。

なんでコンビーフユッケ?

 コンビーフユッケを題材にした理由は、コンビーフが

  • 長期間保存できる

  • ほぼ調理せずそのまま食べられる

  • 肉を摂取できる

からです。体力的にもメンタル的にも忙しい就活生にぴったりでした。
そして、あえてユッケにしたのは

  • 卵黄を摂取できる

からです。栄養効率厨

 話は脱線しますが、Amazonで取り寄せたコンビーフの賞味期限が1年半くらいしか無くて、「あれ?3年くらいもつんじゃなかったっけ」と感じたのが印象に残っています。結論としては、私が長期保存可能なアルミ缶ではなく、プラスチック缶のものを取り寄せていたことが原因でした。まあそれでも1年半もつので、災害用備蓄とかでもなければ不便はないですね。

ScaniverseでFBX形式モデルを生成

 Scaniverseとは、iPhone, iPadにて利用可能な3Dスキャンアプリです。

 使い方については詳しい解説をされているiwamaさんのnoteがありますので、これを紹介する形でここでは割愛します。

 スキャン結果を3Dモデルで出力する際は、Unityで扱うのであればFBXがおすすめです。使用するゲームエンジンやプラットフォームとの相性もあると思いますので、それらが対応しているモデル形式などを確認するとよいでしょう。

UnityでFBXのテクスチャがバグった場合

 私が遭遇したトラブルとして、FBXをUnityにインポートした際、テクスチャがうまく適用できないケースが発生しました。おそらく複数のモデルを同時にインポートすると発生してしまうようです。(最初にインポートしたモデルのテクスチャを流用してしまっているのかも?)
 マテリアル設定を2番目の写真のようにすることで回避できましたので、似たようなトラブルに遭遇した際は参考にしてみてください。

SunoAIでテーマソングを生成

 SunoAIとは、歌詞やキーワードから曲・歌詞・歌声を生成できるAIサービスです。

 使い方はかなり簡単で、discordかGoogleのアカウント連携を行うとすぐに機能を使うことができます。
 無料版は一日当たりに生成できる楽曲数に限界があるようですが、1, 2曲作ってコンテンツに組み込むレベルであれば十分でしょう。
 注意点として、商用利用は有料版の購入が義務づけられている等、結構規約が細かいので本格的に利用する際には一度確認することをお勧めします。

①Createを押すと楽曲生成機能のページが開きます。 
②キーワード入力欄に生成したい曲のタイトルや内容・曲調を入力してみましょう。

 生成した曲をダウンロードする際は、「…」の部分をクリックすると表示されるメニューから「Download」「Audio」の順にクリックします。
 mp3形式の音声ファイルがダウンロードできるはずです。

ワールドの解説

 ワールドの構成自体は非常にシンプルです。

デフォルトの床オブジェクト配下にモデルを置くことで、
巨大なコンビーフユッケを床に見立てています。
今見ると命名が雑すぎる。改善します
VRChatでは欠かせない持ち運べるオブジェクトとして、
コンビーフユッケを多めに設置しています。
少し離れた位置にBGM起動用のスイッチを配置しています。
BGMと同時にScaniverseで作成した3DGS動画をメッシュ反転球に投影した、
疑似Skyboxが出現します。
最初からBGMを流していない理由は、体験に緩急をつけて面白さを感じやすくするためです。
(最初から流すと、作品としてのインパクトが薄れるのではないかという懸念もあります)

気づき:コンテンツ体験における「楽曲」の重要性

 このコンテンツが妙にTwitterで取り上げられた理由はいくつか考えられるのですが、大きな要因は次の2つでしょう。

  • 見た目のインパクトの強さ

  • 印象に残りやすい曲のメロディー・歌詞

 このうち、前者は「意図した面白さ」ですが、後者は「全く想定していなかった面白さ」でした。
 「結構面白い曲生成できたし使ってみるか!」程度の意図はありましたが、まさか中毒患者まで生み出すレベルだったとは…

 このことをきっかけに、私はコンテンツ体験における「楽曲」の可能性についても目を向けてみようかな、と考えを改めることができました。

 制限時間が少なくなってきた時に曲のテンポを上げたり、その場の雰囲気やキャラクターの感情に合わせた楽曲を使うなど、割とメジャーな手法ですが、自分で設計する際には見落としがちな気もします。
 これからのコンテンツ制作に少しでもこの経験を活かしていけたらと思います。

 コンテンツ体験における「楽曲」の重要さは、ゲーム音楽の総選挙企画が長く続いていることにも関係がありそうだな~と、なんとなく考えているところです。
 多くの人の印象に残っているコンテンツは、往々にして印象に残りやすい楽曲を採用しているのかもしれませんね。
 ちなみに私の個人的1位は「狂花水月」です。

実践:3Dスキャンしたものをメタバース空間に持ち込んでみよう

 最後に語りたいのが、「3Dスキャンしたものを軽率にメタバース空間に持ち込んでみよう」というすゝめです。

 良いところとしては、

  • メタバース空間単体では表現しにくい文化や事象を簡単に表現できる

ことが挙げられます。

 現実で表現したり創作しているものはあるけど、メタバース空間で共有するのが難しい、といったこともあるのではないでしょうか。
 そのようなときに3Dスキャンを使うことで、現実で作った作品や共有したい思い出の品などを3Dモデル化し、メタバース空間での交流の際に見せることで交流のきっかけや居場所・拠り所をつくることができるのではないかな、という提案を私からさせていただきます。

 ぜひ、皆さんなりの「バーチャルおもしろ空間」を作ってみてほしい、という私からお願いでこのnoteを締めくくらせていただきます。

 最後まで見てくださりありがとうございました。

 


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