ことづて
地元の駅には
今時珍しく
伝言板が残っていて
謎な文章や
待ち合わせの会話の類いが
毎日残されている
ふと目に止まった
あまりきれいではない
走り書き
俺は明らかに
この文字の主を知ってる
「ごめんなさい
でんわ ください」
画面なんか見なくても
手が勝手に動いて 押す
1コールしないうちに
食い気味の「もしもし」
数年ぶりのあいつの 声
ーよく俺だってわかったね
ーわからないわけない
全部終わらせるつもりで逃げた
必死だった
あのときはそうするしかなかった
でもいったい
何から逃げようとしていたのか
何と戦ってたのか
今はもうわからなくなってしまった
ちっぽけな 恐れの正体
とりあえずの約束で
待ち合わせる
絶対そこにいてくれ おまえが言った
このままここにいたら
あと1時間もしないうちに
また 会える
そしたら
今度はもう 離してやれなくなる
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