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オペラ「シャルリー~茶色の朝」


オペラ「シャルリー~茶色の朝」を観てきた。


ある日とつぜん「茶色のペット以外、飼ってはいけない」といわれたら…?


1990年代後半、フランスで極右政党が台頭した際、危機感を抱いたフランク・パヴロフ『茶色の朝』を出版した。

「シャルリー~茶色の朝」は、この物語をブルーノ・ジネール氏が1時間以内のポケットオペラに仕上げたもの。



フランス語で囁くように始まる台詞が、不穏な空気へ一気に取り込む。

日本語のテロップで意味はわかるが、発せられる言葉のリズムが「本」の世界を立体的に立ち上げる。


5人の器楽奏者と1人のソプラノ歌手に絞ったポケットオペラは、小さな会場でも上演できるようにという意図がある。

しかし、必要なものだけに絞る事で、わかりやすい言葉で沢山の人に伝えたいフランク・パヴロフの思いがより伝わる。

無駄を省く事で深層に切り込み、観る人(あるいは読者)に考える余地を与える。



第1部は、アンサンブルK(ソプラノ、ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノ、パーカッション)による室内楽コンサート。

「禁じられた音楽」

第一次大戦と第二次大戦の間に書かれた小品が集められていたが、
パウル・デッサウ作曲「ゲルニカ〜ピカソに捧げる」から、
初演のブルーノ・ジネール作曲「パウル・デッサウの"ゲルニカ"のためのパラフレーズ」と続く演奏が興味深かった。




第3部は、トークセッション

「茶色の朝」の日本語版にメッセージを寄せている高橋哲也氏が、オンライン出演のブルーノ・ジネール氏に質問する形でトークが始まった。

気づいた時には取り返しが付かなくなっているソフト極右の危険性が印象的だった。



『茶色の朝』を出版した意味を伝えるためには、政治的な歴史や背景を説明する事も必要だと思うが、『茶色の朝』のメッセージは、ストーリーを知るだけで充分に伝わると思う。
むしろ、説明が余韻の邪魔をして、個々の中にあるストーリーの幅を狭めているように感じた。



公演の日は、奇しくも衆議院選挙当日。
電車の中で選挙速報を見ていると、京王線の事件の速報が飛び込んできた。


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