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SGPに向き合うべき理由ーレゴ®︎シリアスプレイ®︎の戦略論

すでにわれわれはSGPを身につけている?

 以前の記事でSGP(Simple Guide Principle: 戦略実現のための行動指針)を理解するメタファーとして「鳥の群れ」を紹介した。「鳥の群れ」はさまざまな状況の変化に対応できるにも関わらず、非常に単純な3つのメカニズムで生まれていることから、SGPがその名の通りシンプルであることに目を向けさせる

 しかし、その影に、もう一つ大事なメッセージがあると私は感じている。それは鳥がレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップを体験せずにそのようなメカニズムを身につけているように「誰もがすでに何らかのSGPに相当する何らかの判断・行動基準を身につけている」というメッセージである。

 この仮説について、さらに、人は生得的に何らかのSGPに相当する何らかの判断・行動基準を身につけていることが予想される。心理学でいう防衛機制の概念などがこれにあたる。

 同時に、後天的に経験からの学習によりSGPに相当する何らかの判断・行動選択基準を身につけていることも予想される。認知心理学のヒューリスティクスなどはがこれにあたるだろう。われわれが複雑な世界に埋め込まれていて、日常的に思いもかけないことに遭遇して、その中でサバイブしているならば、何らかの形でSGPに相当するものを獲得していると考えるほうが自然だろう。

 そうであれば、SGPは誰かが望んだときに追加で身につけさせられるものというよりも、定期的にメンテナンスが欠かせないもの、より積極的に洗練させ、より良いものを共有していくべきものということになる。逆に、メンテナンスしなければ、個々人で変化に対応するSGPが作られ、それが組織が目指したいものとは食い違っていれば、結果として失敗のリスクを高めてしまうだろう。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、リアルタイム・ストラテジーというプログラムを通じて、未来に起こりうるさまざまな変化をプレイさせ、前もって備えておくべきSGPを導出するという方法をとる。

 上記の方法を通じて作られたSGPは大きな価値があるのだが、そのときに過去の経験からその人に染み付いたSGPも掘り起こしておき、場合によってはアンラーニングさせておかないと、SGPが効果を発揮しない場合があることをファシリテーターは考え、意識しておかねばならないだろう。また、SGPに関するワークにおいて、よりよいファシリテーションを実現させるためには、認知心理学や行動経済学の成果もある程度おさえておく必要がありそうだ。

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